山内番楽/坂之下番楽

2017年3月11日
たくさんの祭り・行事が行われた2月が終わった。
振り返ってみると大晦日の「男鹿のナマハゲ」から、2月26日の「木戸五郎兵衛稲荷神社の初午祭」までのおよそ2ヶ月間で、実に16件もの祭り・行事を鑑賞した。
例年のこの時期は雪で気分が盛り上がらず、出かけるのも何をするにも億劫なのだが、今年はあっという間に冬のいちばん寒さの厳しい時期が過ぎ去った印象だ。
これもひとえに、祭りや行事鑑賞であちこち飛び回っていたおかげだと思う。

週末は○○で○○行事が行われる、と思うとそれだけで気持ちが明るくなったし、冬の行事につきものの雪も雰囲気を盛り上げる要素として受け入れることができた。
同じ冬景色でも気持ち次第で良くも見えるし、悪くも見えるという訳だ。
ということで、やるせない思いで冬の退屈感と格闘している人には、是非祭り・行事にいっぱい出かけてアクティブな冬を過ごそう!と提案したい(これから春だというのに今頃そんな提案かよ!と聞こえてきそうですが‥)。
次に祭り・行事がまとまって行われるのは8月のお盆前後となる。
が、その間にも興味を惹かれる祭り・行事がたくさんある訳で、引き続きこのブログでフォローしていきたいと思っている。
そして今回は久々の登場、番楽だ。

ある日の秋田魁新報の県央地域面で番楽の開催情報を見つけた。
3月11日の1時20分~2時40分に、秋田駅前にあるフォンテAKITA内あきた文化交流発信センターにおいて、「山内番楽」と「坂之下番楽」の2つが披露されるとのこと
入場は無料
「番楽を語らずして秋田の芸能を語るなかれ」である。迷わず鑑賞することに決めた。
管理人がこれまで番楽を鑑賞したのは根子番楽、たった一つだけだ。
そのときに、番楽関係の書籍を読むなどして一通りの知識は付けたつもりだったが、根子番楽鑑賞から5ヶ月ほどが経った現在、身につけたはずの知識が薄らいでしまっている。
そういうときには、秋田民俗芸能アーカイブスでもう一回勉強しろ!ということで山内番楽坂之下番楽ともに動画を見て予習をしたのだった。

当日
1時前ぐらいに家を出て秋田駅周辺の駐車場に車を止め、開始時間3分前にフォンテAKITA6階にある、あきた文化交流発信センターに着いた。
あきた文化交流発信センター、と名前がついているが、要はイベントスペースである。
普段は秋田県内のダンス・舞踊などの団体のパフォーマンスや美術工芸品などの展示に使用されており、今日はあきた文化交流発信センターの自主企画イベントという位置づけになる。
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細かいことを書けば、今日の番楽は「『番楽へのいざない』~伝統芸能に親しむ~」と銘打たれた鑑賞イベントであり、祭り・行事が行われるのとはちょっと意味合いが異なるが、伝統行事に関連するイベントならばどのような形の開催であれ積極的にフォローしていくつもりだ。
観覧者向けに、2つの番楽の簡単な説明と演目の紹介チラシが配られた。
こういうものがあると分かり易いし、たいへん参考になる。
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観客席はほぼ満席
およそ100人ぐらいはいただろうか、予想していた通り年配の方が中心だが、中には若そうな方もちらほら見受けられる。
他にはテレビクルー(NHKだったかな?)もいたし、新聞の取材らしき記者もいた。
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開演前に、秋田県教育庁生涯学習課文化財保護室の職員の方から、開演の挨拶と番楽に関する簡単な説明があった。
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そして挨拶が終わり、番楽の開始となる。

まずは山内番楽が登場
いたいけな子供たち5人が舞うのは「露払」
以前鑑賞した根子番楽においてはこの演目から舞が開始することに決まっていたが、その点は山内番楽も同じだろう。
また、舞うのは主に小学校低学年の子供たちとなっており、人数も特に決められてはいない。

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速いテンポのお囃子にのって舞い続けるのは結構キツい。
が、子供たちは大変さなど微塵も感じさせない軽やかさで舞っている。
露払をしっかり舞うことが全ての演目の基本らしいが、これからこの子供たちがどのように進化していくのか楽しみだ。

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チラシに書かれているように、この番楽は江戸時代後期の紀行家 菅江真澄が記録に残していることでも知られており、番楽面12面のスケッチと「橋掛」、「桜子」、「天女」、「蕨折」の4つの演目に関する記録が「番楽舞辞」という題名で残されている。
そのなかで菅江真澄は番楽のことを「舞曲」と書いて「アソビ」と読ませる語も併せて用いているが、こういった呼び方もあったのだろう。

続いては「露払二人舞」
前の子供たちより大きい(小学校高学年ぐらいか?)子2人によって舞われる。
最初に登場したのはなんと女の子だ。
可愛らしい顔立ちの女の子が、鎧をまとって勇壮な舞を踊る姿に思わず見入ってしまった。
ギャップ萌えというヤツか?

最初に露払を披露した子たちはお囃子方にまわり、拍子木を打ち始める。
根子番楽においても拍子木が用いられていたが、山内番楽のほうは笛の旋律がない分拍子木のパーカッシブさが際立っている。
そのせいか、舞も非常にワイルドで荒々しく見える。

続いては男の子が登場し、2人での舞が始まる。

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おそらく相当の練習を積まないと2人の呼吸を合わせるのは難しい。
この2人の小学生、そして前に登場した子たちもかなりの練習量をこなしているはずだ。
そういった日頃の成果を披露するのだから、晴れやかな気持ちで今日のステージを迎えられたと思う。
なお、チラシにも書かれているように毎年5月第3日曜日の五城目神社例祭の宵宮(前日)に行われる番楽競演会の中で、山内番楽が披露されることになっている。

五城目町には山内番楽以外に中村番楽、恋路番楽、西野番楽の3つの番楽がある(あった)とされている。
それらの番楽保存会が一同に集まり、舞を披露するのが番楽競演会ということになると思うが、西野番楽については秋田民俗芸能アーカイブスにも記録がなく、恋路番楽については現在休止中らしい。
となると、競演会で披露されるのは山内番楽と中村番楽だけ、ということになりそうだ。
そのうち競演会に足を運んで、五城目町の番楽の今の姿を確かめてみたいと思う。

次の演目は「鞍馬」
こちらも根子番楽の折に一度鑑賞した。
まずは、最初に「露払」で舞を披露した子が牛若丸に扮して再登場

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続いては弁慶の登場
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そして牛若丸と弁慶が相まみえる。
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やはり弁慶が牛若丸を薙刀に乗せて持ち上げるところが見どころで、会場から拍手が起こる。
牛若丸がはけた後も弁慶が舞を続ける。
後半のお囃子のテンポの変化に合わせた薙刀さばきが見事だ。
牛若丸役の子は小学校四年生、弁慶役の男性は60歳代とのこと
おじいさんとお孫さんぐらいの年の差の2人が、息を合わせて舞う姿は何だかジーンとする。

これにて山内番楽の演目は終了
その距離的近さゆえか、根子番楽と共通する動作、所作が多いようだ。
終演後にお囃子方の男性にちょっと話を聞いたところ、やはり根子番楽との共通性について仰っていた。
この長い歴史を持つ番楽が、今日出演した子供たち、さらにその下の世代によって長く受け継がれていくことを願いたい。

続いては坂之下番楽が登場
坂之下番楽は由利本荘市矢島町に伝承される芸能で「鳥海山北麓の獅子舞番楽」の一つとされている。
かの本海獅子舞番楽の13の講中には含まれない(本海獅子舞番楽の講中は全て鳥海町を伝承地域にしている)ものの、ルーツは同じかあるいは本海獅子舞番楽の影響を受けて成立した芸能であることから「本海系」、「本海流」と呼ばれることもあるようだ。
今日披露される演目は「空臼からみ」

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地元矢島高校の高校生4人によって舞われる。
内2人は女の子だったのはちょっとびっくりした。
番楽は(小さい子を除いては)男性が舞うもの、と根拠のない先入観をもっていた自分に気付かされた。

番楽は演目により「武士舞」、「神舞」、「女舞」などの分類が可能だが、空臼からみはそのいずれにも分類できず「その他」とされることが多い、異色の演目だ。
鳥海山北麓の獅子舞番楽においてはよく見られる演目で、多くは番楽披露の最後に演じられるらしい。
また、鳥海町上貝沢地区では、この空臼からみだけが単独で演じられる「貝沢からうすからみ」が継承されている。

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4人が臼の周りをぐるぐると舞い踊るのが特徴だが、ちゃんと見ると振りやお囃子がテンポよく変わっており、決して見るものを飽きさせない。
それにしても、跳躍して杵を合わせるこの振りは結構疲れるはず(見ている側は楽しい)。
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手平鉦 、唄、そして臼の側面を杵で「カッカッ」と突く音だけで構成される、このお囃子も見事だ。

一つの演目の中にきちんと強弱や緩急が盛り込まれており、先人たちの意匠を凝らした様が伝わってくる。

演じている高校生たちは体力的には大変そうだが、それでも楽しそうだ。
管理人が高校生の頃に、周囲から「番楽を踊れ!」とか言われても絶対に拒否しただろうし、ましてやコミカルでおどけた風貌の「空臼からみを踊れ!」など言われようものなら家出してまでも拒んだに違いない。
それに比べ、今日のこの4人は地元の伝統芸能に誇りを持ちながら、生き生きと舞っている様子が伝わってくる。
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そして舞は終了
続いては臼の中から餅やお菓子を取り出して、エンディングの餅まき大会

さすがに若さ溢れる高校生といえども休みなく舞っていただけに、ぜえぜえ息をする感じが伝わってくる。
楽しませてもらいました、本当にお疲れ様!と言ってあげたい気分だ。

坂之下番楽は、毎年1月の幕開きから始まり、4月14日の熊野神社春祭り、8月14日の熊野神社祭典奉納を経て、11月中旬に幕納めとなる。
鑑賞できる機会はそれほど多くないが、今日はその一端を高校生の皆さんに見せてもらった。
そして今年4月1日には由利本荘市鳥海地区に民俗芸能伝承館「まいーれ」がオープンする。
これまで以上に本海獅子舞番楽、鳥海山北麓の獅子舞番楽に接する機会が増えることを期待したい。

演者全員で挨拶し、鑑賞会は終了となる。
山内番楽の皆さんはもう私服に着替えたのね‥
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予定より少し早く、2時半に終わる。
管理人も会場をあとにした。

ということで山内番楽と坂之下番楽の2つを鑑賞した。
それぞれの舞、お囃子の違い、細かい所作のひとつひとつの特徴などが分かり、とても興味深かった。
民俗芸能伝承館「まいーれ」では由利本荘市内に限らず秋田県内外の伝統芸能が披露されるようだし、たくさんの人たちに番楽の素晴らしさが伝われば良いと思う。
そして今日のように気軽に鑑賞できる機会がこれから数多く設けられることにも期待したい。

※地図はフォンテAKITA


2 Replies to “山内番楽/坂之下番楽”

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます!
      「鞍馬」は番楽のなかでも人気のある演目みたいですね。
      牛若丸役は必ず小学生で、その身軽さが人気を博すのですが、弁慶の一人舞もなかなかの迫力です。
      由利本荘市鳥海地区に民俗芸能伝承館「まいーれ」もオープンしましたし、隣人1号さんも是非番楽の素晴らしさを体験なさってください!

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