新山神社祭典・石脇神楽

2017年5月3日
3月まではコンスタントに祭り・行事に足を運んでいたものの、4月は訪問数ゼロとなってしまった。
湯沢市岩崎地区の「岩崎鹿島祭り」
鹿島様を作る過程を記録した、湯沢市制作のDVDを秋田県立図書館で3巻全部鑑賞しておきながら、結局4/9・16日の本番に行くことはなかった。
祭りといっても、鹿島様を3時間半に渡って作るという作業風景を記事にまとめきる自信が湧いてこなかった。

由利本荘市西目町の「西目潟保八幡神社神楽」
4/16に行われた(はずだ)が、当日はあいにく風、雨ともに強く「だめだこりゃ」とあっさり断念
これだけはハズしたくない!と何が何でも鑑賞するつもりだった八峰町の「目名潟通り音頭」
八峰町観光協会に開催日時について問い合わせたところ、十分な参加人数が確保できず今年は中止だそうな。
ああ‥
「記事にまとめる自信がない」とか「天気が悪かった」などとヘタレなことを言っていると、行事自体が行われないという酷な報いが待っているのか。
とにかく4月の訪問数はゼロ!
過ぎたことをとやかく言っても仕方ない、空白の4月を埋めるべく積極的に祭り・行事に出かけねば、と肝に銘じたのだった。

そして再開(管理人の中では再開の気分です)後、第一回目となるのは由利本荘市石脇地区の「新山神社祭典(石脇神楽)」
この神楽のことを初めて知ったのは、3月上旬に読んだ秋田魁新報の県央地域面にてである。
記事には、由利本荘市が何年か前より行っているイベント「由利本荘ひな街道」の企画で、3月12日に石脇地区内にある公徳館において石脇神楽の笛・太鼓演奏が披露される、と書かれている。
その日は運よく切通稲荷神社梵天祭り鑑賞のため由利本荘市行きを決めており、なおかつ時間的にも梵天祭りのあとドンピシャだったため、迷わず鑑賞を決めたのだった。
そして何の予備知識もないまま3月12日を迎え、石脇公徳館で神楽の演奏を目の当たりにした。
そのときの様子

ひな飾り展示のガイドの男性から聞いたところによると、新山神社祭典が5月2日に宵宮、3日に本祭、4日に神楽渡し(要するに当番の引き継ぎ式)のスケジュールで行われ、2~4日の各家々の巡回に加えて3日は奉納神楽として新山神社にて神楽が舞われるとのこと
また、4日の神楽渡しのあとには提灯行列まで披露されるらしい。
盛りだくさんでなんか良さそうではないか、ということで5月の鑑賞を決めた。
県立図書館で「秋田民俗芸能アーカイブス」のDVDも借りて自宅で予習に励んだ。

本祭が開かれる5月3日
新山神社での神楽奉納は3時30分~とのことだったが、おそらく早めに現地に行けば何かしら行われているはず、と思い、ちょっと早めの1時には自宅を出発
天気は快晴で、祭り鑑賞にはもってこいのコンディションだったが、何より素晴らしかったのは、まだ雪をかぶっている鳥海山がはっきりと青空を背景に浮き上がっていたところだ。
秋田市からもかなりクリアに見えたので、より距離の近い由利本荘市まで行けば素晴らしい山容が期待できるなあ‥と思っていたが、その眺望は想像以上だった。
頂上から裾野の辺りまでこれほどクリアに見えるのは珍しいのではないだろうか。
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快調に国道7号線を南下して由利本荘市内へ入り、2時には石脇地区へ到着
今日の行事は石脇地区東側にある町内(三軒町、新町、中町、緑町、上町)が中心となり行われる。
そして、町内に入るとあちこちからお囃子の音が聞こえてくるではないか。
見ると、屋台が巡り歩いている。
これは見ておかないと、と車を近所に止めてすぐに屋台に近づく。
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5町内それぞれの屋台が地区の目抜き通りを巡行しているようだ。
そして、どうやら巡行の始点がここ子吉川にかかる由利橋のたもとらしい。
由利橋を超えると、羽後本荘駅を中心とする由利本荘市中心地となるが、同じ由利本荘市内でも中心地と石脇地区は別々の地域だったのが、明治22年の町村制施行とともに本荘町として合併することになった経緯がある。
そういった歴史的背景があってかどうかは分からないが、石脇地区の屋台が由利橋を超えて由利本荘中心地に入るようなことは基本的にないらしい。

屋台が行進をはじめる。
今日はゴールデンウィーク最中の5月3日ということもあり、管理人が見たところ、石脇に里帰りされている地元出身の方も行列に参加されているようだ。

こちらは三軒町の屋台の「お猿のかごや」
こんなにも小さい子たちが一生懸命何かを頑張っている姿を見ると、年々涙腺が緩くなってきているのが分かる。

聞けば各町内がそれぞれ2曲ほどのレパートリーを持っており、道すがら屋台を止めてその2曲を交互に披露するらしい。
三軒町の屋台の50mほど先には緑町の屋台がおり、こちらも踊りを披露していた。
曲は「ちゃっきり節」
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途中移動式の小神楽がすぐ脇を通過していった。
このあとの神楽披露に備えるのだろう。
地元の方に伺ったところ、今年の当番町は新町とのこと
秋田県教育委員会発行の「秋田県の民俗芸能」によると、当番町は緑町⇒三軒町⇒新町⇒中町⇒上町の順での輪番制となっているらしい。
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こちらは中町の屋台
中の子はおそらく小学生ぐらいかと思うが、ぐっと色っぽくカッコよく踊って見せていた。
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それぞれに趣向を凝らした屋台が一回りしたのを見届けて、地区をぶらぶらと歩く。
今日は各家々に垂れ幕が飾られている。
垂れ幕を飾ってあるお宅のとあるご婦人は「ここに嫁いで50年になるけど、それ以来ずーっと同じ垂れ幕を使っているよ」と教えてくれた。
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これまで石脇新町の交差点から新山公園に向かう道路を新山神社入口だと思っていたが、正確に言えばここが参道の入口ということになろうかと思う。
階段を上りきったすぐ左手側には三軒町公民館がある(「秋田民俗芸能アーカイブス」のDVDでは、ここ三軒町公民館での神楽披露が収められています)。
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三軒町が当番町の折には、小神楽を公民館まで上げるときに中央のレールを使用する。
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こちらが石脇公徳館
3月に初めて石脇神楽を鑑賞した場所だ。
また、公徳館向かって左側には中町の公民館があり、町内の方々が宴会準備で忙しそうにされていた。
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石脇地区はなかなか風情のある街並みだ。
銘酒「由利正宗」の醸造元があることで知られているが、他にもマルイチしょうゆ・みそ醸造元や、ヤマキチ味噌醤油醸造元などの古い建物が目抜き通りに並んでおり、その雰囲気を楽しみながらの街歩きもよいだろう。
8月下旬には「浴衣で歩く石脇夕涼み」なるイベントも開かれており、ちょっとした観光地の趣きがある。

石脇の街並みを楽しんでいるうちに神楽奉納の時刻、3時半が近づいてきた。
じゃそろそろ‥とばかりに神社に向かうが、その途中で先に書いた5町内ではない町内の屋台を発見
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聞けばこちらは東新山町の屋台とのこと
三軒町、新町、中町、緑町、上町の5町内が古い街並みであるのに対し、東新山町が通りや家々の様子から新山公園の麓を切り開いた新興住宅地であることはすぐに分かる。
てっきり屋台の巡行をするのは5町内だけと思っていただけに、別の町内でも屋台が練り歩くとは想像していなかった。
石脇地区のお祭りなので、各町内が思い思いに集まって楽しんでいるということだろうか。

そうこうしているうちに神楽開始の3時半を迎えてしまった。
まだ新山神社に到着していないばかりか、神社のある新山公園内に入れてもいない。
ちょっと急がねば‥と思い、公園内へ入る階段を上ったのだが‥
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あれ?結構疲れるなあ、というかこの階段こんなにキツかったっけ!?
由利本荘市の冬の風物詩、新山神社裸参りで2度ほどこの神社を訪れたことがあるが、そのときにこの階段がキツイなどとは全く思わなかったのだが、今日はなんか違う。
汗が止まらないし(5月のこの時期にしては暑い日だったということもあるけど)、階段の途中で腰を曲げて膝に手を置いて「ハア‥ハア‥」とかやっている。
もともと体力ないし、運動不足だししょうがないだろうと自分をなだめたが、これまで苦でもなかった階段がこれほどまでにキツく感じるというのは年齢のせいだろうなあ‥と認めざるを得ない自分が情けなかった。
因みに新山神社の位置はこんなかんじです。
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結局神社に到着したのは3時50分ほど
もう汗まみれで、息も絶え絶えだ。
そんな状態で社殿を撮影、見事に斜めに写してしまった。
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神楽の舞は行われておらず、何やら神社周辺に人が集まっている。
「ヤバイ‥もしかして神楽終わっちゃった?」と思い、のんびりくつろいでいたお囃子方の男性にきいたところ「いえ、これからですよ」とのこと
ほっと一安心
見ると、新町の若衆や神輿を担いだ人たちが神社の周囲を回っているところだった。
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そしてその後に神楽が披露される神社下の開けた場所に移動
結果、良いタイミングで神社に到着したとも言えよう。
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本日の鑑賞に備えて石脇神楽について学習をしたのだが、この神楽は「大神楽」と呼ばれる系統に属するらしい。
「伊勢大神楽」がルーツになっているそうだが、先日鑑賞した本海獅子舞番楽の獅子舞とも、神道系に属する獅子神楽とも系統が異なるそうだ。
1人が獅子頭を持ち、もう1人が獅子頭から垂れる胴幕の中に入るのが特徴らしいが、はっきり言って系統ごとの差異は素人には分からない。

舞の披露される神社下のスペースには祭壇が設けられている。
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そして神楽が始まる。

この神楽は「通り神楽」、「鈴慕」、「四方固め」、「剣の舞」、「早獅子」、「お先は」の6番で構成される。
2人舞で始まったが、やはり特徴的なのは「ササラ振り」
道化役として神楽に帯同し、獅子の鼻先で自由に振舞う役割を担う。
通常は小学生ぐらいの子がササラ振りを演じる。

こちらは御幣と鈴を持って舞われる所作から「四方固め」であろう。
御幣で悪霊を祓い清め、鈴を鳴らすことで神託を得る意味があるそうだ。

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ギャラリーはササラ振りのお母さん方(ササラ振りは2人なので)と、ササラ振りのきょうだいと思しき女の子と、カメラマン氏1名と管理人だけ
他は全て神社、神楽の関係者ばかり
街中での舞であればもっとたくさんの見物者が集まるとは思うのだが、先に屋台が巡ったあたりで話した方々は神楽が披露されることは知っていても新山神社で行われることはご存知ない方が大半だった。
どちらかといえば、屋台の運行を含めた中心部での祭りがメインであり、神楽は祭りに華を添える芸能といった感覚だろうか。

こちらは「剣の舞」
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木々の向こう側に見える鳥海山をバックに、5月の晴天のもと伝統芸能を鑑賞する。
とても気分が良い。
たいへん厳かな舞ではあるが、同時に素朴な雰囲気も湛えており、ここ石脇に長く引き継がれている芸能であることが伝わってくる。

お囃子方
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「幕つかみ」と呼ばれる人たちが胴幕を持ちながらの舞に移る。
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獅子舞とササラ振りが問答しているようにも見えるので、この舞は「お先は」になるのだろうか。
幕つかみは4名にて行う。
同じ由利本荘市内の伊勢大神楽系の舞でも、伏見神楽獅子や貝沢神楽獅子などは胴幕に3~4人ほどの人が入る「百足(むかで)獅子」として知られている。

時間にして30分ぐらいで一通り舞が終わる。
その後はお囃子方を残し、獅子だけが神社の中に入る。
続いて獅子(舞)と言えばやはりこれ、参列者の頭を一人ずつ噛んでいく儀式
この儀式には悪魔祓いや疫病退治の意味があるとのこと
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他の祭りを見ると、獅子が頭を噛むときはやけに神妙な雰囲気が漂っている印象だが、ここ石脇ではご覧のとおり「ここの家の父っちゃんも、父っちゃんも、百まで生きるよに~、まめでかしぐよに~」と獅子方がはやし立てながら、賑やかにそれが行われる。
秋田民俗芸能アーカイブスのDVDには、各家々での獅子の頭噛みの模様が収録されているが、そちらを見ると結構ガブッと参列者の頭を噛むばかりか、噛まれている最中の参列者の背中に獅子方の男性が乗っかったりとかなり自由に振舞っている様子が記録されている。

舞が終わるといったん獅子頭は神前に奉納される。
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大神楽においては、獅子頭はたいへんに神聖視されており、当番町は自町内に安置される獅子頭に供えた水を1年間毎日取り替えなければならない。
もし、当番の人が水を替えるのを忘れたり、怠ったりした際にはその人に罰金が課せられるらしい。
また地元の方に教えていただいたのだが、以前は罰金の代わりに酒を馳走するシステムだったことから、神楽のことを「酒取り祭り」とも呼んでいたそうだ。

続いては「石脇さんぶつ」
石脇さんぶつはこの地が北前船の寄港地だった頃に、能登方面の船乗りにより伝承された一種の祝い唄である。
内容は石脇の風土、名勝、気質を盛り込んだもので、この地区のおめでたい席で必ず唄われるらしい。
管理人は石脇公徳館で神楽を鑑賞した際に初めて知ったのだが、秋田のみならず全国でも珍しい芸能だそうだ。
なお、「さんぶつ」は「産物」または「賛打」の漢字が当てられることもあるようだ。

「ノーモエン(野も良)、ハーモエン(浜も良)、ヨウソロ(宜候)」の音頭から始まり、全員が唱和する。
船が宝を積んで故郷に帰れるように、との思いと祝いの気持ちを重ねて歌い上げる唄であり、その重厚さが素晴らしい。

北前船と言えばつい先ごろ、秋田市を含む全国11の市町が連携して作った「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」のストーリーが日本遺産に認定された。
そのストーリーにおける秋田市の文化構成財として、(伝統行事ということで言うと)九州から伝播したハイヤ節の影響を受けている「大正寺おけさ」が含まれているが、石脇さんぶつも特別枠か何かで(由利本荘市は認定対象地としてエントリーしていない)加えて欲しかったと個人的に思っている。
先に紹介した石脇公徳館の広間には石脇さんぶつの歌詞を書いた立派な額が飾られており、この唄が石脇の人たちの心の唄となっていることが分かる。
そのように郷土に根ざした素晴らしい唄をもっと広く知ってもらう良いチャンスだった、とついつい考えてしまう。

獅子が再び広場に向かう。
そして舞うのは「早獅子」

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一聴して分かると思うが、これまでのお囃子に比べてテンポが格段に早くなる。
この伝統芸能の歴史、石脇地区の誇りを背負って、お囃子方・獅子方が渾身の演奏と舞を披露する。
やや傾いた日に照らされた神楽は何だか神々しい。

そして5時に神楽は終了となる。
当番町の新町の人たちはこれから公民館で直会の開始となる。
そして管理人も念願だった石脇神楽を鑑賞できた満足感とともに新山神社をあとにした。
神社から少し下った開けた場所より、再度鳥海山を望む。
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相変わらず美しい眺めの鳥海山も素晴らしいし、視界を右側に移すと日本海をバックにした風力発電の風車が穏やかな春の夕べを感じさせてくれる。
いやあ、由利本荘サイコー!!石脇サイコー!!
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2か月前から鑑賞しようと決めていた石脇神楽をじっくりと楽しむことができた。
由利本荘市には本海獅子舞番楽以外にも多種多様な芸能が数多く残っており、本当に尽きることがない。
今日はその一端に触れることができた、とても有意義な日となった。
そして石脇地区の伝統的な街並みや、石脇の男たちの矜持である石脇さんぶつなど、神楽以外の見どころも十分に堪能させてもらった。
新山神社の裸参りはすでに秋田全県に知られているが、先述のイベント「浴衣で歩く石脇夕涼み」や、5月4日の神楽渡し後の提灯行列、さらには8月23日に行われるという石脇地区の盆踊り大会などまだまだ知られていない行事がたくさんあるし、この地区にはさらにたくさんの魅力が秘められていると思う。
秋田県内随一の要注目エリアとして今後もフォローしていきたい。

※地図は新山神社


2 Replies to “新山神社祭典・石脇神楽”

  1. 裃、紋付袴、威厳有りますね〜。
    祭=祭祀=神への畏=日本人の根幹=伝統(子供の教育)=地区のイベント=誇(これも子孫繁栄)、と言ったところでしょうか?
    いつも楽しく拝見しています。

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます!
      5月は神社の例祭が数多く行われるので、あちこちで神社の幟を見かけます。
      どんな小さな神社でも幟が掲げられると、つい「おお‥」と気圧されてしまいます。
      日本人の根幹、原風景ということなんでしょうね。

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