角館祭りのやま行事/花輪祭りの屋台行事/土崎神明社祭の曳山行事/三吉神社梵天祭/綴子大太鼓/秋田の竿燈

2017年5月27日
今回紹介するのは、ブログタイトルに反して「秋田の大きなイベント」ということになる。
「これが秋田だ 食と芸能大祭典2017」
秋田市中心地のエリアなかいち周辺で、秋田の食と伝統行事を楽しむとのコンセプトで昨年より始まったイベントである。
今年は5月26~28日の3日間に渡って開催され(プレオープン含め)、のべ145,000人の集客だったらしい。

このイベントは「大祭典」のネーミングどおりに秋田市中心部各所でグルメブースが設置されたり、催し物が行われたり、伝統芸能が披露されたり、と複数のイベントが同時進行するのが特徴だ。
その中でも5月27日夕方~、5月28日~の広小路での伝統芸能パレードが一番の見どころとなっている。
伝統芸能ということで言うと、駅前アゴラ広場やエリアなかいち特設ステージで、「西馬音内盆踊り」や「石川駒踊り」、「願人踊り」、「冬師番楽」が披露されるのだが、今年は「角館祭りのやま行事」、「花輪祭りの屋台行事」、「土崎神明社祭の曳山行事」が、山・鉾・屋台行事として昨年ユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり(全国で33件が登録された)、その3つのお祭りのお披露目的な意味合いの濃い開催となった。
管理人も5月27日の伝統芸能パレードに照準を絞って観覧することにした。

管理人は初開催となった昨年も観覧済みなので、どういう雰囲気なのかは大体知っている。
ただ一つ気がかりなのは天候だ。
イベントの数日前から秋田市は不安定な天候が続いており、晴れたり、曇ったり、雨が降ったりとめまぐるしく天気が変わっていた。
やはり雨の中の観覧というのはテンションが3割減ぐらいになるし、晴れてくれとは言わないが、雨だけは降らないでもらいたい。
因みに当日の秋田市の天気予報は「曇りときどき雨」であり、たしかに少し降っては止むを繰り返すどんよりとした曇り空の日だった。

当日を迎える。
伝統芸能パレードは夕方6時開始なので、それに合わせるように家を出た。
秋田中央交通のバスで付近まで行き、そこから広小路を目指す。
本日伝統芸能パレードが行われる広小路は秋田駅西口から広小路西交差点までをつなぐ秋田市内の主要幹線道路の一つである。
距離は1kmに満たない長さながら、昭和30~40年頃にかけては大変な賑わいを見せていて、歩いていると肩と肩がぶつかり合うぐらいの人のひしめきようだったらしい。
現在は秋田県の人口減少に呼応するように、かつての賑わいは消え失せたが、今でもホテル、大型商業施設などが立ち並ぶ秋田市を代表するスポットであることには変わりない。

広小路西交差点に着く。
パレードをひかえた各団体が待機中。おおー、やっぱり迫力があるなあ
山車や屋台が居並ぶ様に、いやがうえにも期待感が高まる。

出発順に各団体をウォッチング
綴子大太鼓

三吉神社梵天

土崎神明社祭の曳山行事

花輪祭りの屋台行事

角館祭りのやま行事


さて心配だった天気だが、パレード開始直前に2~3分ほどごくごく弱い雨がパラパラ降ったものの、それっきり降る様子はなく、どうにかもってくれそうだ。
まずは一安心

屋台ブースが立ち並び、伝統芸能ステージが繰り広げられたエリアなかいちの様子
パレード開始前に伝統芸能ステージは終了したが、屋台ブースにはまだまだたくさんの人だかりが出来ていた。

パレードの先頭を歩く秋田観光レディの皆さん
皆さん美しい。眼福です。

以前はこのような形で行われる、たくさんのお祭りが集まるイベントを少し敬遠していた。
「お祭りが一斉に集まるとか何かお手軽だし、本場に行って観覧してこそ本物でしょ」などと考えていて、このようなお祭りイベントとは距離を置いていたというわけだ。
その考えが変わったのは東北六魂祭を見てからである。
東日本大震災の発生した2011年から宮城県を皮切りに東北6県で持ち回りで開催され、秋田で開催されたのが2015年だった。
震災復興という大テーマもあったが、普段見ることのできない秋田県外のお祭りがいきいきと行進する様はとても素晴らしく、パレードの先頭を飾る岩手・盛岡さんさ踊りの登場から、終始ワクワクしっぱなしだった。
そうなのだ、お祭りの共演というのはとても胸躍るものであり、決してお手軽なだけではない高揚感を感じることができるのだ。

時刻は6時を迎える。
最初の登場は「秋田の竿燈」
あれ?竿燈の人たちはどこで待機してたんですか?パレードの順番待ちをしていたのを見落としたのかな。

写真には鉄骨のフレームが写りこんでいるが、これは万が一雨が降った場合に備えて主催者がテントをかけるための骨組みだ(と思う)。

先に、竿燈がパレードの順番待ち云々と書いたが、竿燈は別にパレードを行うわけではない。
基本的には一箇所に留まって、竿燈を手や肩、額や腰に重さ50kgにもおよぶ竿燈を乗せてその妙技を披露する一種のバランス芸なのである。
秋田市民ならば「そんなこと言わなくたって分かるわ!」と言うと思うが、県外の観光客がそのことを知らないまま8月の竿燈祭りを鑑賞して、「提灯行列だと思っていたら違った」といった感想を載せているブログを見ることが結構多いのだ。
ということで、竿燈の開始です。

先述したように、雨が降ることはなかったが、この日は風が強かった。
竿燈にとっては雨以上に厄介な敵が風なのだ。
風に煽られると、竿燈をきちんと差す(竿燈は「立てる」ではなく「差す」といいます)のが難しく、ましてや竿を何本も継ぎ足したり、片手に傘や扇子を持ったまま竿燈を差す、いわゆる「大技」は出しにくくなる。
そんな中、渾身の演技を披露!

が、やはり強風、しかも四方から不規則に吹き付ける風(いわゆる「ビル風」)のせいで、バランスを崩してしまう竿燈が続出
差し手は本当に苦労したと思う。

竿燈が倒れ込んでくるのはそれほど珍しいシーンではない。
8月3日~6日に市内竿燈大通りで行われる竿燈祭りではけっこうお馴染みの場面だ。
竿燈祭りの折には高さ6~7mのところに安全用のロープが張られているので、倒れてきた竿燈が観客を直撃することはほとんどないが、それでも運の悪い人は竿燈がもろに直撃することもある。
ボーッとスマホなどいじらずに、ちゃんと鑑賞することが己の身を守ることでもあるわけだ。

15分ほど演技を披露して竿燈は終了

昨年、第一回目の開催となる食と芸能大祭典の初日を観覧した際には、パレード開始当初から雲行きが怪しく、時間の経過とともに雨が落ちてきて大トリの竿燈登場の頃には土砂降りになった。
今年は「雨の降らないうちにやっちまおうぜ!」ということなのか、最初の登場となった。

さて、これからがパレードの開始となる。
どうにもテントの鉄骨が邪魔となって、かなり気になる。
ということで、反対側の歩道へ移動
歩道の後方には千秋公園のお堀が広がっていて、素敵な景観を見せてくれる。

そしてパレードが入ってきました。
先頭は秋田観光レディの皆さん

それに続くのが「綴子大太鼓」
トラクターに牽引されて大太鼓が運行

北秋田市の道の駅たかのす敷地内にある「大太鼓の館」に常設展示されているが、実物は初めて見た。
これはでかい!
高さは3.71mのものと3.8mのものとがあるらしいが、これはどちらのサイズの太鼓なのかは分からなかった。
3.71mの太鼓は「牛の一枚皮を使った和太鼓」としてギネスブック世界一に認定されている。

7月14日・15日には地元八幡宮綴子神社の宵宮・例祭で大太鼓が披露される。
大太鼓以外にも奴舞や獅子踊りなども登場するなかなか個性のあるお祭りのようだ。
県北のお祭りにはなかなか接する機会がないだけに、とても興味深い。

これほどの長いバチを、しかも逆手に持って演奏するのは結構珍しいと思う。
腕力というか、腕の外側のほうの筋肉が鍛えられそうだ。
「二の腕のたるみが気になって‥」という方にはお勧めしたいところだが、高所恐怖症の人では奏者にはなれないだろう。

綴子大太鼓に続いての登場は「三吉神社梵天」
昨年に続いての登場だ。

1月17日に秋田市広面の太平山三吉神社に奉納される梵天が登場
この梵天は「喧嘩梵天」として、秋田県内では名高い。
管理人は何年か前に一度鑑賞したが、男たちが神社への奉納先陣争いを繰り広げる実に荒々しい祭りだ。
もみくちゃになった男たちのあいだで掴み合いや取っ組み合い、殴り合いなどが起こり、一瞬真冬の寒さを忘れてしまうぐらいの熱気だった。

今日は「パレード」ということなので神社奉納前の各地区巡回の様子を再現したと思うが、高らかに唄われる三吉節や法螺貝の音色など梵天祭の臨場感をよく出せていたと思う。
「ジョヤサ!ジョヤサ!」の掛け声とともにパレードの大通りを一気呵成に走り抜けてしまったら、ものの1分と経たず行進が終わってしまうことだろう。
市街地コースを猛スピードで駆け抜けるF1マシン状態だ。

秋田で梵天行事といえば冬のイメージが強いが、実際には7,8月ぐらいに行われるところもあり、決して冬だけのものではない。
それにしても真夏の梵天奉納の押し合いは暑そうだ。

無事梵天のパレードが終ったと思っていたら、コースのゴール付近で押し合いが始まった。
そして押し合いが行われる = 喧嘩が発生ということで、部分的にいがみ合いが起こる。
今日のような観光色の強いイベントでも決して手を抜くことなく、三吉神社梵天を特徴づける喧嘩の様子の一端が見られてよかった。
「喧嘩を見れてよかった」とは物騒な言い方になってしまうが、偽らざる本心である。

さて、これからユネスコ無形文化遺産に登録された3つのお祭りが登場する。

まずは土崎神明社祭の曳山行事
曳き子と呼ばれる若者たちが勢いよくやまを曳く。

7月20日・21日の2日間にかけて、土崎神明社祭は行われる。
秋田市民のあいだでは「みなと祭り」と言ったほうが通りが良いと思う。
また「カスベ祭り」(※カスベとは魚のガンギエイのこと。この祭りのあいだに甘辛く煮付けたカスベが各家庭の食卓を賑わす)との別名もある、土崎在住の秋田市民にとってはまさしく血湧き肉踊る祭りなのである。

木製の車輪の軋む音、ほとんどDJのような口上をBGMに、曳き子がはじけたポップコーンのようにやまを曳く。
土崎の港衆がこの祭りにかける思いは過剰とも言えるぐらいで、俺たちにはこれがある!という情熱と地域への愛情が隙間なく伝わってくる。
その熱狂の度合いは同じ秋田市内の竿燈よりも、青森ねぶた祭りのほうに近い気がする。

やまは男岩、女岩をベースとして、武者人形や外題札や人形札を配置する独特の特徴がある。
港ばやしは、昨年ユネスコの無形文化遺産登録を受けたのに続いて、今年は「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」のストーリーが日本遺産が登録されたが、そのなかの文化財の一つとして盛り込まれており、まさにいま旬を迎えている。
今年の7月20日・21日はさぞかし盛り上がるだろう。

続いては大黒舞の披露
披露するのは土崎将軍野二区の皆さんらしい

港まつりにおいてはやまを曳く合間に披露される各種演芸も見ものとなっている。
秋田音頭が最もポピュラーだが、管理人的には戻り曳山の際に披露される土崎盆踊り(「どんどこどっけ」と呼ばれることもある)が気に入っている。

続いては「花輪祭りの屋台行事」
まずは屋台に先行して花輪の町踊りが入ってくる。

そして屋台の登場
「花輪祭りの屋台行事」は8月19日・20日(正確には21日未明にかけて)に鹿角市花輪で開催される。
全部で10ほどの屋台がそれこそ夜通しでパレードを行う、花輪の人たちが何よりも楽しみにしているお祭りだ。
管理人は2年ほど前に現地で鑑賞したことがある。
すべての屋台が駅前に集結して、お囃子を奏でる様はまさしく熱狂と呼ぶにふさわしい光景だった。

時折屋台と屋台が鉢合わせする形になり、そのときには双方のお囃子のテンポが異常に早くなりまさしく熱狂のるつぼと化す。
基本的には屋台どうしをぶつけることはないが、ただ朝詰と呼ばれるパレードにおいて、谷地田町と六日町の屋台だけはガチでぶつけ合いを行うのが通例となっている。
因みにこの谷地田町と六日町の屋台のぶつけ合いが行われるのは午前2時ぐらいとなる。

それにしても、この祭りを見るたびに思うのだが、秋田の行事というかんじが全くしない。
お隣大館市にも似たような山車行事があり(大館囃子)、お囃子が奏でられるのだが、そちらが秋田の香りが感じられるのに対して、花輪ばやしのほうには秋田らしさはほぼ皆無
大館は旧秋田藩領だったのに対して、鹿角市は旧南部藩領であるという歴史的背景が影響しているのはたしかだ。
しかしそのことを差し引いても、花輪ばやしには秋田の祭りからは感じられない、スコーンと突き抜けた賑やかさ、明るさがあると思う。

お囃子の演奏がヒートアップ
花輪の人たちのテンションが上がりまくるシーンだろう。

パレードに続いて花輪の町踊りが披露される。
今日は花輪ばやしを先導する形で踊られているが、この踊りは8月下旬から9月上旬にかけて花輪の各町内で日を変えて踊られる。
夏の終わりを名残惜しむかのような時期に行われるこの踊りを1度は見てみたいと思う。

さてトリを飾る「角館祭りのやま行事」だが、パレードを行う様子が見られない。
どうしたものか‥などと思っていると、パレードは行わずにクライマックスである「やまぶっつけ」が秋田キャッスルホテル前丁字路付近で行われるのだという。
急いでその地点に駆けつける。

管理人はこのお祭りを見たことはないが、なかなかに迫力あるぶつけ合いが行われることは知っている。
9月7日から9日まで行われるやま行事であり、8日に行われる観光やまぶっつけはたくさんの観客を集めている。
因みに観光ではないぶつけ合いは行われるのかというと、やま双方が下りやまで、交渉が決裂した際にのみ本当のやまぶっつけが行われるらしい。

日も沈みかけており、あたりが薄暗くなってきた。
その雰囲気のなかで勇壮、豪快なやまぶっつけがいよいよ始まろうとしている。

そしてやまぶっつけの開始!

「ゴン!」という鈍い音ではなく、「バンッ!」という少々軽めの音がするのは意外だった。
それでもなかなかの迫力があり、一昨年はやまぶっつけの際に挟まれた参加者の男性が亡くなるという痛ましい事故も起きている。
観覧者も含めて、この種の行事には豪快、勇壮さと表裏一体の危険さがあることを知っておかなければなるまい。

やまぶっつけは計3セット(1セットにつき3回)行われた。
1セット終わるごとにやまに乗る2人の踊り子が扇子踊りを披露する。
やまぶっつけの興奮と、踊りの優雅さのギャップがある意味スゴい。
2セット目に続いて最終となる3セット目のやまぶっつけ

9月初めに、過ぎ行く夏を締めくくるかの如く熱い興奮を呼び起こす角館祭りのやま行事
ぶっつけあいが見られなくても、やまの行進だけで十分に楽しめる行事だと思う。
一度、現地角館で観覧したいものだ。

これで全行事が登場し、イベントも終了
と思っていたら、最初にお目見えした竿燈が再登場


やはり提灯に明かりが灯される夜竿燈は素敵だ。
イベント終了時刻が迫っていて、ごく短時間の再登場となった竿燈だが、夜の街並みに竿燈が居並ぶ様を見れただけでラッキーな気分だ。
また、この行事の本領が見れるのは8月3日~6日の竿燈祭りであり、今日はそのデモンストレーションだと思えば充分に満足できる内容だった。

この後、各行事の戻りやまが披露されてイベントは7時50分頃に終了
それぞれに特色のある行事が見れて充分に満足することができた。
その迫力やスケールのみならず、やま・屋台を曳く人たち、お囃子を奏でる人たちの放つ熱気にも本当に感動させられた。
また、秋田の祭り・行事のバリエーションの豊富さを伺い知ることができる構成となっていたし、祭りや行事に特別な思い入れ、興味のない人でも気軽に鑑賞できる意義のあるイベントだと思う。
是非来年以降も5月の秋田市中心地の風物詩として続けていってほしい。
また、個人的には秋田市随一のメインストリートである、ここ広小路で、能代市の「天空の不夜城」で披露される城郭灯籠「愛季」か「嘉六」のパレードを見てみたいと思う。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA