アメッコ市

2018年2月11日
小正月行事たけなわの時期となった。
前日は刈和野の大綱引きを観覧したし、本日2月11日も湯沢市の犬っこまつり、「川を渡る梵天」として知られる伊豆山神社梵天、厳密に言えば小正月行事ではないものの、男鹿なまはげ柴灯まつりなど祭り・行事が目白押しだ。
一度に全ての行事を見るなどということはそもそも不可能ではあるが、県内各地で多種多様な行事が行われ、たくさんの人たちが寒い冬のひとときを楽しんでいる様子が脳裏に浮かび、思わずほっこりしてしまう。
そして、それら小正月行事のなかから今回選んだのが「アメッコ市」

この時期行われる小正月行事の大半は県南地方のものだが、アメッコ市は県北地方 大館市の行事だ(今年のパンフレットはこちら←行事の由来も書かれています。ご一読あれ)。
管理人は初の訪問となる。
秋田の祭り・行事」には、「餅花・繭玉をかたどった飴を売る露天が出て、人々が風邪をひかぬようにと買い求めます。(中略)白髭大神を先頭にした行列もあり、家族で楽しめるにぎやかなお祭りです」と書かれている。
どんな行事か大体の想像はつくものの、県北を代表する小正月行事を一度観覧してみよう、と大館まで足を運ぶことに決めた。

当日10時半に自宅を出発し、12時半には現地大館市に到着
スーパー「イトク大館ショッピングセンター」駐車場に車を止めれば会場まで歩いて10分とかからない。
で、会場に向かう前にトイレを済ませておこうとイトクに入ると、中のお菓子売り場ですでに飴が売られていた。

売り場近くのフードコートでは小学生ぐらいの子たちが買ったばかりの飴を早くも食べている。
「ふーん、飴をホントに食べるんだなあ‥」と感心
アホな感想で申し訳ないが、実は「風邪をひかないよう飴を食べる」というのは方便で、実態は観光色100%の今風のお祭りなんじゃないか?と訝しがっていたところもあった。
それは管理人の邪推であり、大館の人たちがいにしえからの言い伝えを忠実に守って、飴を食べる姿を見ることができた訳だ。

会場に向かう。途中に流れるこちらは「長木川」

中央に見える山は鳳凰山
山腹に木のない三角形のスペースが見えるが、8月の大館大文字まつりの折にはこの場所で大文字焼きが披露される。
ところで、いつもカメラとムービーを携えて行事巡りをしているが、この日はカメラのバッテリー装着を失念したまま大館に来ちゃったため写真を撮れない。
色鮮やかな枝飴や飴飾りなど、もっともインスタ的可愛さを意識しなければならないこの行事でカメラが使えないとは!と悔やんでみたが、ズボラな管理人がいかにもやらかしそうなミスなので納得するところもある。
まあ、ムービーでも写真撮れるし良しとしよう(管理人はガラケー持ちなのでスマホで撮影とはならんのです)。

会場はすぐそこです。

会場までの道中、アメッコ市帰りの人たちと多数すれ違う。
その人たちほとんど全員が手提げのビニール袋を持っている。
確認したわけではないが、おそらく中はアメッコ市で購入した飴であることは明らかだ。
大館ってこんなに飴に情熱を注いでいた街なのか?と一瞬思ったが、先ほどイトクのフードコートで見た子供たちを思い出し、あらためていにしえからの風習が連綿と続いていることを認識したのだった。

会場へ到着。人いっぱいいます!


これは賑わってます。
実行委員会の方に教えていただいたところによると、祭りの開催される2日間(2月の第二土・日)で20万人の集客があったものの、出足は午前中に集中したため、午後の集客はそれほどでもないらしい。
えっ、こんなに人がいっぱいいるのに!?いやあ‥スゴイ!

会場となるおおまちハチ公通り沿いにはたくさんの屋台が立っている。

多くの屋台で飴が売られている。
これはいちご飴とりんご飴。いちごとりんご(「姫りんご」という品種らしい)を砂糖と水を煮詰めた熱いシロップに入れて作る。
色鮮やかなうえ、可愛いです。
屋台の方に教えていただいたところによると、10年ほど前から徐々に人気が出始めて今は屋台で売られる飴の主流となっているそうだ。

大鍋でシロップがぐつぐつと煮詰められる。
因みに、煮詰められている最中のシロップは絶対かき混ぜてはいけないらしい。(←BY COOKPAD)

こちらの屋台はフルーツ飴。とてもカラフル

さすが比内地鶏のふるさと。こんな屋台も出ていました。

こちらはドライフルーツ専門屋台

甘酒も

飴を販売する屋台が目立ったものの、他にもラーメンやら、たこ焼きやら、貝焼き鍋やら何でもござれ状態
たしかに「秋田の祭り・行事」に書いているように、家族で楽しめる行事だ。
県立図書館で読んだ「飴と飴売りの文化史」によると、主に東日本を中心に飴市・初市(その年の初めに開かれる市で、縁起物として飴が売られることが多い)の風習が現在も続いているらしい(特に岩手県・長野県が多い。秋田県内ではアメッコ市のみ)。
アメッコ市は昭和40年代に従来の市を再興する形でリニューアルされ、現在では大館市の一大観光コンテンツとなったが、おそらくそれ以前は全国の他の地域で見られるぐらいの規模だったと推測する。

市の開催に合わせて行われる各種イベントの英語版プログラムが張り出されていた。


昨日鑑賞した、大仙市の刈和野の大綱引きもそうだったが、県内の伝統行事において外国人観光客の姿を見ることが近年多くなった。
日本政府の推し進めるインバウンド政策が着々と実を結んでいるのだろうか。

会場中央付近の特設ステージでよさこいが始まった。


大館よさこいチーム「鳳翔華」の皆さんによるパフォーマンス
メタリックブルーを基調にした衣装が鮮やかです。
若さ溢れるパフォーマンスを展開してくれました!!

通りをぶらぶらと歩く。


この行事はミズキの枝にアメをつけて稲穂の代わりに神前に供える農家の風習が起源であり、それが徐々に市での商売という形態に変化して現在の形になったとされている。
鮮やかな色合いの枝飴は、いにしえからその姿を変えていないように思えるぐらい素朴で、美しい。
また、江戸時代の秋田城下の庶民の生活を克明に記録した「秋田風俗問状答」には「餅花の事」として「年の餅をつくときに小さく丸めて、藁へびっしりと刺し、これを稲の穂をたばねたようにして恵方などにかけておく」との記述がある。
枝飴のルーツである、いにしえの餅花飾りの様子が伺えて興味深い。

さらに通りを下る。


このキャラクターは‥ちょっと分かりません!
大館市は今や空前(?)の秋田犬ブームにより、秋田の一大観光スポットとなった。
もちろん、平昌オリンピックフィギュアスケート金メダルのザギトワ選手のおかげというのもあるが、それ以前より世界各国の犬好きの人たちから秋田犬は注目されていたし、日本国内においてもザギトワ選手効果で一躍名が知られるようになった。
5月に行われる秋田犬品評会では、初の試みとしてわざわざ観覧席が設けられるらしい。
決して一過性のブームでなく、大館の継続的な観光資源となるよう関係者の皆さん(そしてワンちゃんも!)には頑張って欲しいと思う。
因みにこの日の午前中に秋田犬パレードが行われたが、管理人は見れなかった(着いたの午後だし)。
で、会場で秋田犬を見ることがあるかなあ‥と思っていたが、結局見れずじまいだった。

真っ赤な鳥居に枝飴。この行事の象徴的な光景として知られる絵面です。
ピンクがかった赤色の枝飴と真っ赤な鳥居の組み合わせというのが、真冬のこの時期にもかかわらず春の気配を感じさせてくれる。
この行事が終われば春はすぐそこまで来ている、と実際に云われているらしい。

おっと、神殿の前に行列ができております。

これは無病息災、健康祈願をお参りする人たちの行列だ。
この神殿は、大館神明社に収めているものをアメッコ市のときだけここに設置しているのだそうだ。

県北を代表する酒造メーカー「北鹿」の一斗樽

アメッコ市の案内板

天正年間から始まっているとされるこの行事だが、文献では「小野儀助日記」(明治25年2月11日…旧1月13日の条)に「中町市十七日市を繰上げたり。あめ町也」と記述されているのが確認できる。
管理人の地元横手市増田町では2・5・9のつく日に朝市が出るが、地元ではその日を「まぢのひ(町の日)」と呼んでいるので、「あめ町」とはおそらく飴市ということでよかろうと思う。


大館市史(4)を読むと、旧暦1月12日に周辺の村々の人々が大館の町に飴を買いに出かける風習があるとし、「買ってきた飴は塩とともに神様へ供え、食べる時も塩をつけて食べる。(中略)飴と共に食べる塩は、市内では子供たちが少量を髪に包んで町の一軒一軒をおとずれ、それを置いてなにがしかのお金をもらって歩いた。そのときには『祝いの塩コ、なめれば砂糖コ』とか『アメコに塩コ、なめれば福の神』と歌い町を歩いていた」と書かれている。
飴と塩とは一見無関係なようだが「飴と飴売りの文化史」によると、全国各地の飴市は「塩市」が発展して形成されたと考えられる旨の記述がある。
飴と塩は意外と深い関係がありそうだ。

伝統的な切り飴も人気がある。

かと思えばキャラクター飴も

見ても楽しく、食べても美味しい。
これらのキャラクター飴の色付けは全て手作業によるものだそうで、実に細かい。
なんだか、食べるのが勿体無いぐらいだ。


さきに飴市と塩市について書いたが、では「飴といえば砂糖」かといえばそうでもないらしい。
「飴と飴売りの文化史」では「砂糖がサトウキビや砂糖大根を絞った汁から作るのに対し、飴は穀物を麦芽発酵させる。両者の製造工程は全くの別物だ」とし、「砂糖が普及すると、これを原材料に取り入れた新しいタイプの飴を作る地域もあった」と解説している。
単純に砂糖を水に溶かして固めたものが飴ぐらいに考えていたが、飴の製法にも深い歴史がありそうで面白い。

先ほどよさこいチーム鳳翔華が踊っていたステージに、大館のアイドルグループ「まちあわせハチ公ガールズ」が登場


大館を代表するガールズグループの登場に多数の観客が集まる。これは大人気!
ちゃんとステージを見たのは初めてだが、みんなキラキラとしてて思わず「可愛い!」と声援を送りたくなってしまう。
管理人がTwitterでフォローしているキャサリン嬢も好きなアイドルとして、まちあわせハチ公ガールズを挙げているし、思わぬ得をした気分になれました。

ここらでいちご飴・りんご飴を購入


家に帰ったのち、じっくりと味あわせてもらいました。
これで今年は風邪なんかひかんぞ!と思ったのも束の間、この2日後にひいてしまったのだが、この時点ではそんなことになろうとは知る由もなかった。

まちあわせハチ公ガールズによる餅まき(もしかして飴まきでした?)


観客の声でとても賑やかな雰囲気
こういったイベントが折々で行われるので、決して飽きることがない。

神殿のあった方向に人の流れが向かい始めたので後を付いていく。
ここで白髭大神が登場(本日2回目)


白髭大神は市内の田代山山頂に鎮座する田代山神社から飴を買い求めるため、この日大館の町に来ると云われている。
管理人は昨年の夏、田代山神社の岳参り作占い行事を訪問した。白髭大神様、半年ぶりでございます!
白髭大神が飴を買いに来た足跡を消すために行事の日は必ず吹雪になるそうだが、今日は時折小雪がちらつくぐらいで真冬にしては過ごしやすい日だったように思う。

行列の後ろについているのは地元大館の「粕田獅子踊り」


お~、かっこいいです。
県北に特に多く見られる獅子踊りに分類される踊りで、三頭獅子が特徴となっている。
昼頃にステージで舞を披露したらしいので、本当はそちらも見ておきたかったところだ。

時間は15時に近づいており、そろそろ市が終わろうとしている。
ある屋台の方からお聞きしたところによると朝からお客さんが大挙して飴を買い求めたため、昼にはほぼ売れ切れてしまったそうだ。
大館市民のアメッコ市に対する思いの大きさをあらためて知ることができた。

「枝飴の即売会を行うのでお集まりください!」と場内アナウンスが流れる。なんのことかと思い、枝飴の木付近に行ってみると‥


ナタで枝を荒っぽくバッツンバッツンと切り落とし、枝飴の付き具合で「はい!300円」とか「これは1000円!」というふうに競りにかけるスタイルの即売会だった。
こちらにもたくさんの人が群がり、我先にとばかり枝を買い求めるため、飴でキレイに飾られていた木があっという間に裸になる。
おー、こんなことまで行われていたんですね~

こちらの女性は木一本をまるまるお買い上げしたかのようだ。

枝を切り落とす前から皆が枝を欲しがり手を伸ばすので、枝切りの方が「危ないから手を出さないで!!」とたびたび注意しなければならなぐらいだった。
皆さんすでに十分なほどの飴を買っている様子だが、それでもまだ飴を欲するのか!

買ったばかりの枝を見せてもらう。
これで値段はこれぐらいで2~400円ぐらいだったと思う。たしかにお得かも!

最後の最後に大館の人たちの飴、アメッコ市への思いの強さをまたまた見せてもらった。
15時の市の終わりともに観客の多くは会場をあとにするが、ほとんどの人たちが枝を手にしながら帰るのだった。
管理人も人波に合わせるように会場をあとにした。

思っていた以上に楽しい行事だった。
最初の方で書いたように、古風ゆかしき行事過ぎるゆえ、ひょっとすると飴を買い求める、飴を食べるということが形骸化していて、実は今風のイベントと化していないかという危惧があったのだが、そんなことは全くの杞憂だった。
「風邪をひかないように飴を食する」という、大館の地にいにしえより受け継がれる無病息災・健康祈願の行事をベースとして、随所によさこいやまちあわせハチ公ガールズのライブといった現代的なイベントが差し挟まれるバランスのとれたお祭りだったように思う。
老若男女、誰もが楽しめて誰もが笑顔になれる素敵な行事だし、管理人も1時間半にわたって会場をぶらぶらしたが、飽きることが全くなかった。
この真冬のさなかに、これほどに素敵な行事を訪れることができた満足感とともに秋田市へ帰ったのだった。


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