友倉神社裸参り

2018年2月17日
小正月行事真っ只中のこの時期に風邪をひいてしまった。
当初訪問予定だった角館の火振りかまくらを諦めたのみならず、久々に出かけてみようかなと検討中だった横手のかまくらも諦めることになり、2018年の小正月行事巡りはあえなく終了
ということで、今回は小正月行事かといえば違うものの、なぜか2月のこの時期に集中的に行われる裸参り行事から、上小阿仁村の「友倉神社裸参り」です。

この行事のことは、毎度ではあるが「秋田の祭り・行事」で知った。
先に書いたように2月のこの時期は裸参り行事がちょっとしたラッシュを迎え、友倉神社裸参り以外にも横手市十文字町の梨木水かぶりや鹿角市の土深井裸参り(隔年開催で、今年は開催年でした)や、仙北市西木町の金比羅裸参りなどが行われる。
で、友倉神社裸参りだが、何よりその開催時間が興味を引いた。
午前0時頃~1時!!真冬の秋田の小さな村で真夜中に行われる裸参り!なんと珍妙な!これは見に行かねばなるまい。
ということで行事の1週間ほど前、大館市のアメッコ市を見た帰りに行事の世話役をされている上小阿仁村 高橋旅館のご主人に直接コンタクト。訪問を決めた。

当日
風邪が長引くようであればキャンセルかしら?とも考えていたが、幸運にも当日昼にはほとんど回復
しかしながら、真冬の夜中に屋外をうろつくようなことになればぶり返す可能性が高く、油断はできない。
21時半に自宅を出発、五城目町を経由して上小阿仁村を目指す。
それにしても、この日はとにかく風が強かった。
内陸地である五城目町に入ってもビュービューと風が吹くし、上小阿仁村に入っても止む気配がない。
おまけに当たり前ではあるがやっぱり寒い!風邪、ヤバイな‥

23時。高橋旅館に到着

旅館入口に用意された水垢離用の水槽
ここ上小阿仁村もやはり風が強い。これは冷たいぞ~

高橋旅館前の国道285号線。静まり返っています。

参加者は旅館一階のお食事処「憩」に集結し、もう準備をしているはずだ。
因みに3000円支払うと20時開始の飲み会(もちろん飲み放題!)に参加でき、しかも行事後に旅館の風呂にも入れるという特典付き
一週間前に高橋旅館のご主人から今年の参加者は今のところ10人ぐらいとお聞きしていたが、最終的な参加人数を知らなかったので「人、集まってんのかな~?」とおそるおそる憩の扉を開けてみると‥

なんだー、メッチャ集まってるじゃないですか~。良かった良かった。
昨年の参加者は総勢28名だったのに対して、今年は23名とやや減
それでも一週間前には10人ほどの応募しかなかったことを考えると上出来の参加者数であろう。
この23名が2つの班に分かれて、ここから1kmほど先の友倉神社を目指すことになる。

みんな、ぐいぐい飲ってますなあ


この日2月17日は平昌冬季オリンピック男子フィギュアスケートで羽生結弦選手が見事金メダルを獲得した日であり、この飲み会の最中も備え付けの大型テレビでオリンピック中継を放映していたのだが、皆さん飲みと語りに夢中でテレビを見ている人はほぼいなかった。

外国人の方も

聞けば森林管理局上小阿仁支署の関係者の方が多いようだが、秋田市から来たグループなど村外の方も多数いらっしゃった。
このように真夜中に行われる裸参りは全国的に見ても珍しいらしく、したがって例年は県外の方も参加されるらしい。
多分今年もいらっしゃったとは思うのだが、そこまでの確認はできなかった。
また、女性の参加者も2名!お一人はすでに何回か参加されたものの、その方に誘われたというもう一人の女性は今年が初参加とのこと
無理ならここでギブアップしてもいいんですよ!と思わず言いたくなってしまう。

時刻は23時半になるところ
まだまだ楽しい酒盛りは続いているものの、まるでシメのデザートをサーブするかのようにふんどし・長襦袢(女性用)が参加者に配られる。


そろそろ裸参りの準備に取り掛かろう、ということで先ずは水垢離用のふんどしと長襦袢が参加者に手渡された訳だ。

管理人含む見物組は水垢離場となる旅館入口に回ってスタンバイ
深夜近くの行事ながら、その珍しさが結構注目されているようで、地元の方の他に上小阿仁村職員の方や秋田魁新報、北鹿新聞の記者の方などでギャラリーは思いのほかたくさんいます。

ご主人がフライパンを持ってきて、中の火をミニかまくら内のロウソクに灯す。
フライパンの中身をよく見るとこれは上小阿仁村、北秋田市合川の彼岸行事「万灯火」で使われる「ダンポ」じゃないですか!
ダンポが燃えているところなど、このあたりの地域以外で見ることは皆無なので、おおー!と一人興奮してしまった。

そして身支度を整えた参加者が登場。ミニかまくらの祭壇に拝礼。うわーー、見てるだけで寒いッス


参加者は口々に「寒い!」と言っているが、その寒さを吹き飛ばすぐらいの元気さが感じられて頼もしい。頑張ってくださーい!!

そして水垢離


以前の記事 八郎潟町の「一日市裸参り」で書いたが、このような裸参り行事を行うにあたって最初に水垢離を行うのは寒さ対策に極めて有効だ。
冷水を何回か浴びることによって、毛細血管が拡張し、体が火照りかなり寒さが和らぐらしい。
参加者の皆さんにとっては辛い水垢離ではあるが、このあとの裸参りを乗り切るための重要な所作なのだ。
そして、風邪がぶり返すとヤだなあ‥とか情けないことを言っている管理人も、皆さんのたいへんさに比べればなんのこれしき!とあらためて気合を入れることができた。

水垢離を終えた参加者は着替えのために一旦旅館内へ戻る。
そして旅館の玄関には参加者用に準備された、一風変わった履物が‥


藁沓(わらぐつ)でも藁草履でもない、藁スリッパとしかいいようのないこの履物は「クジ」または「クンジ」と呼ばれる。
高橋旅館ご主人から伺ったところによると、今や地元では作り手がいなくなってしまったため、新たに揃える場合にはたいへん手間がかかってしまうらしい。
また、雪にはある程度強いが、水に濡れてしまうと一発でダメになるため、どうしても雨だけは避けたいそうだ。

そして参加者の準備が整って、いざ出陣!!
御幣、お金(御初穂)、米三合を半紙で包んだサンヤを持って準備は万端

出発前の記念撮影

一日市の裸参りのように出発に際してカウントダウン的なことをするかと思いきや、いきなり参加者が走り出した。
うわー、撮影準備してません!とりあえず併走して撮影(ぶれぶれになってしまいました)

あっという間に裸参り一行の姿が遠ざかってしまった。
管理人も追尾すべく、高橋旅館駐車場へ戻り車に乗った。

ところで、友倉神社までのルートを貼っておきたい。
地図で分かるように1kmほどの距離ながら、上小阿仁駐在所を曲がって友倉神社を目指すあたりは上り坂続きで容易ではない。
加えて、繰り返すがこの寒さ!
しかも出発地点の高橋旅館と、到着地点となる友倉神社付近を除いて明かりはほとんどない。
暗く寒い道をひたすら走り続ける労苦は経験した人じゃないと分からないと思う。

第一陣の出発後、間をおかず車を出したつもりの管理人だったが、思った以上に行列のスピードが早い!
行列が友倉神社に着く前に追いつくだろうと甘く考えていたら追いつけず、結局第一陣の勇姿を拝むことができなかった。
あちゃ~、時間を見誤っちまった‥
ということで気を取り直して神社下で第二陣を待つ。

それにしても神社下の道路を折れて、友倉神社へと続く参道はえも言われぬ美しさに溢れている。

こちらが本殿(暗くて分かりづらいので、アメッコ市の帰りに撮影したときの写真もアップしておきます)


村内の高台に鎮座するこの神社は正確な建築年は不明とされている。
昭和53年に改築されたとのことだが、高橋旅館のご主人から以前はもっと高いところにあって裸参りの距離も長かった、と教えていただいたので、移築された可能性もあると思う。

ところでご主人から今年の裸参りの手作りチラシをいただいたのだが、それに神社の鳥居前で撮影された↓の写真が載っている。

かっこよすぎてヤバくないですか?東京都内の私鉄の地下通路とかにこんな観光用ポスターが貼られていたら、参加者殺到しまっせ!というぐらいにかっこいい!

待つこと20分近く。おっ第二陣が見えてまいりました!


景気づけの掛け声、ましてや秋田の行事では定番の「ジョヤサ!」の掛け声も聞こえない。
この裸参りは、お参りの途中で声を上げたり、転んだりすると最初からやり直しという決まりがあったそうな
ご主人から「今はやり直すなんてことはしないよ~」とお聞きしていたが、それでも声を出す、転ぶということが禁忌に近い形で受け継がれているのは間違いないと思う。
また、以前は出発に際しての所作が結構厳格だったらしく、8年前の様子を取材したこちらのサイトと比較すると、現在は簡素な形に変わったことが見てとれる。

そして、一行は神社へと続く階段を登り始める。
ここが一番の撮影ポイントなのだそうだ。
ということで秋田魁、北鹿新聞の記者さんが写真を撮りまくる。管理人も動画を撮影

無事に第二陣全員が神社に到着

神社の中には結構たくさんの関係者が待ち受けており、さすがに暖かい。寒さの中頑張って走った参加者はさぞかしほっとしたことだろう。

全員でお払いを受ける。

五穀豊穣、無病息災を祈願


この裸参りは起源は定かでないものの、300年の歴史があるとされている。
以前に発行された「広報かみこあに」によると、元禄8年に諸祈願のために奉納された祈願額があること、元禄12年に記された「友倉山千手院記」に疫病、凶作等が続いたため、観音像を求めて奉斎した記録があることなどから裸参りも同時期に始まったものと考えられているそうだ。

御神酒をいただく。

まあ、出発前に十分すぎるぐらい飲ってきたっちゃあ飲ってきた訳だが、それとこれとは違いますよね。

そして第二陣も友倉神社をあとにする。
帰りの道中においても声を発することはよくないとされているらしく、参加者は静かに出発地である高橋旅館に戻っていった。

管理人も高橋旅館へと引き上げる。
にしても、友倉神社参道のこの雰囲気ホント素敵です。またいつか訪れてみたいと思う。

高橋旅館へ戻ると早くも風呂に入って十分に温まった皆さんが、打ち上げとばかりに直会(二次会?)を開始
宿泊する人もいれば、ひとっ風呂浴びて帰る人もいればと様々だが、とにかく無事に全員完走できてよかったです。
本当にお疲れ様でした!!

ありがたいことに高橋旅館のご主人が管理人にも、とり貝焼きをご馳走してくれた。

うめー。死ぬほど暖まりますー(‐^▽^‐)

時刻は午前1時
これから第二陣の皆さんも合流してまだまだ宴席は続くようだが、管理人はこのへんで高橋旅館をあとにした。
参加者の皆さん、高橋旅館の皆さんと交流し、元気を頂いたおかげで風邪はどこかに飛んでいってしまったようだ(マジで!)。

2月の深夜に上小阿仁村で行われる裸参り、と聞いて皆さんはどんな印象を持つのだろうか。
率直に言えば「えーーー、寒いわあ」だと思う。
いや、それはそれで真っ当な反応なのだが、だからといってこの行事が細々と行われる寂しげな行事ではないことは記事を通してご理解いただけたかと思う。
そればかりか参加者の大半が若く、しかも女性まで参加すること、県外からの参加者がいることからも分かるように、とてもエネルギッシュで活気にあふれた行事なのだ。
そのエネルギーは、冬の屋外というだけで億劫なのに、更に深夜に裸参りを行うという徹底した困難さが生み出したカタルシスなのかもしれない。
しかしながら、参加者の皆さんはそんな大変さなど微塵も感じさせないぐらいに陽気で、パワフルだった。
おそらく上小阿仁村の伝統行事として、この先も受け継がれていくはずだが、そのエネルギーを授かるという目的だけでも一見の価値がある行事だと思う。
来年、そして再来年と楽しく、元気さに溢れた裸参りが続いていくことを心から願う。


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