星辻神社のだるま祭り

2018年4月12日
今回は秋田市中心地の風物詩的なお祭り「星辻神社のだるま祭り」を紹介したい。
お祭りとは言うものの、中身は「だるまを売り出すお祭り」ということで、雰囲気はだるま市そのもののはずだ。
とは言うものの、管理人はこのお祭りにもだるま市にも行ったことがないので、どんな様子なのかイマイチピンとこない。
これは実際に行って見てみないと分からない。

祭りは4月12・13日の2日間にわたって行われる。
仕事帰りに気軽に立ち寄れる祭りではあるが、12日の宵宮のほうが21時と遅くまで行われるので、そちらのほうに行ってみることにした。

当日19時半に現地に到着、というかほぼ管理人の帰宅途中の場所なので出かけた気はしない。
付近に車を止めて、会場となる大町一丁目へ向かう。
現在の町名は大町ではあるが、秋田市内では旧町名である川反(かわばた)のほうが通りがよいだろう。
そして会場となる通りへ。ん?何やら人だかりができているではないか。


うわー、人いっぱいいるじゃないですか!
賑わいとは無縁のはずの平日の夜にもかかわらず、大行列ができていた。
このあたりは、かつては東北一の賑わいを誇ったと言われる川反繁華街のすぐ近くなものの、竿燈大通りを挟んで繁華街の反対側に位置しているがゆえ、夜はとても閑散としている。
なので、これほどの人の集まりはビックリ以外の何物でもない。
この様子はテレビで県内ニュースのみならず、全国放送でも中継されたそうだ。

そしてこの行列は言わずもがな、星辻神社でだるまを購入しようという人たち、というワケです。
お祭りにつきものの露天も幾つか出ていたが、露天に集まる人はそれほど多くなく、だるまが目的の人たちがほとんど


このお祭りを主催する星辻神社奉賛会の方曰く、仕事終わりのこの時間帯(18~20時頃)の行列が特に長いらしい。
ただ、この日の祭りの様子を伝えるテレビ局や新聞社のサイトを見ると、日中でも結構長蛇の列ができていたようだ。
要はこの2日間はとにかく人がいっぱい集まるということだな、と理解

これが星辻神社。正式名称は「福一満星辻神社」という。


「秋田市史」によると「この神社は町のいわゆる氏神とする鎮守社ではないが、講によって維持されてきた神社で、いわば講社とされよう」とある。
したがって祭礼においても、いわゆる神事などは一切行われない。
また、講は「星辻講」と呼ばれる丑年寅年生まれの人たちによる講だったらしいが、昭和50年頃に消滅し、今は町内会(川反一丁目)の人たちで組織された星辻神社奉賛会が維持にあたっている。

境内に入る。


当然ながら参拝客で混み合っている。
現在は主に学業成就、家内安全、事業の成功などを祈願しているが、元来は火伏せを祈るためのお祭りだったらしい。
この祭りが始まったのは江戸時代とも、明治時代とも云われており、おそらくは火難除けが切実な願いだったことに由来するのだろう。
なので祭り両日に少しでも構わないので雨が降りさえすれば、火難を避けられると考えられている。
今年は、今日(4月12日)夜中に少しだけど降ったので大丈夫です、と奉賛会の方が仰っていた。

参道脇に納めだるま用のスペースが設けられている。

新しいだるまを買い求めるのと同時に、1年間飾られていただるまを神社に納める。
かつては、納められただるまは近くを流れる旭川に全て流していたそうだが、今は6月第三日曜日に僅かばかりを流し、他は焼却しているそうだ。
ただ、だるまを焼却して厄を払うことを今でも「だるま流し」と呼んでいて、これなどは旭川に流していた頃の名残ではないかと思う。

納められただるま

頭のてっぺんに星辻神社の「星」の字と、胴体に川反一丁目「川と一」の字か「福一満」と書いてあるのが星辻神社のだるまの特徴
また、顔にも特徴があり、見る人が見ればすぐに星辻神社のだるまだと判別できるそうだ。
だるまの顔。全く意識したことがなかった。。。
なお、商売を営む人たちの間でだるまが縁起物とされている由縁は、「(悪いことには)手を出さない、足を出さない(赤字を生まない)」からということらしい。

参拝客 = だるまを買い求める人たちが社殿に並ぶ。


お客さんの列は途切れることがなく、売り手たちは手を休ませることなくお金を受け取り、だるまを手渡し続ける。
参拝客は鈴を鳴らし、柏手を打った後に「500円のちょうだい!」とか「一番小さいのくださーい」などと売り手に伝え、購入するシステムだ。
だるまは価格100円~50,000円まで10種類以上が揃っているが、500円、1,000円ぐらいの手頃なだるまが、よく売れていたようだ。
一番高価な50,000円のだるまは高さが85cmあるらしい。
また、合格だるまとして黄色のだるまも売られていた。
なんでも黄色は「運気を高めて、夢を実現する」ラッキーカラーなのだそうだ。

この祭りのために全部で10,000個ほどのだるまが用意された。


だるまの目玉については、すでに両目が入っているもの、片目(左目)だけ入れられたもの、両目とも入っていないものの3種類があった。
昔はすでに両目とも入れられていただるまが一般的だったそうだ。
両目とも入っていないものについては、買ってきたときに願い事を祈願しながら右目を黒く塗り(眼入れ)、願いが叶ったらもう一方の左目を塗る(満眼)というやり方になるし、片目だけ入っているものについては、願い事祈願は済んでいてあとは願いを成就させるだけという人が買い求めるという違いがある。
また、短期的な祈願ごとは両目とも入れるタイプ、長期的な祈願ごとは片目のみ入れるタイプと使い分けをすることもあるそうだ。

本日売られているだるまは福島県白河市で作られたものだ。
なんでも白河市は「白河だるま」として有名なだるま生産地であり、当地の結婚披露宴では「寿だるま」なる白いだるまが色紙代わりに参列者に回され、そこに新郎新婦に宛てたメッセージを手書きするのが習わしなのだとか
また、以前はここ川反一丁目でも自前でだるま造りを行っていたそうで、社殿右奥にその頃のだるまが飾られていた(写真左側が川反のだるま、右側がその木型)。

参道脇の社務所ではお札が授けられている。

境内を出る。まだまだ行列は続いていた。
ただし、管理人が到着した頃に比べるとだいぶ行列の長さが短くなっているようだ。


だるま市ということで言えば、全国的に有名なのは群馬県高崎市の少林山・達磨寺のだるま市らしい。
ただ、そちらのほうは寺が露天商に課した出店料に露天商側が反発、出店取り止めとしたことが火種となり、高崎市が新たに興した高崎だるま市なる催しに多数の露天、達磨販売組合が吸収された結果、規模がかなり小さくなってしまったそうだ。

時刻は8時20分ほど
行列の長さはさらに短かくなり、露天も続々と片付けをはじめる。

管理人も十分に祭りの雰囲気を楽しんだということで会場をあとにした。

すぐそばを流れる旭川をのぞむ。このブログに相応しくない都会的な光景です。

ということで、思いがけず秋田市民のだるま信仰熱の高さを知ることができた。
参拝客がだるまの入ったビニール袋を手に下げて、ニコニコと帰路に着く様子がとても印象的だった。
願い事は人それぞれだが、今日ここに来てだるまを買い求めた人たち皆が暖かい気持ちになれたのではないだろうか。
これからも春の風物詩として秋田市民に親しまれ続ける祭りであってほしい。


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