鯉みこし

2018年5月5日
こどもの日のこの日、八郎潟町の一日市願人踊りに続いて2件目の行事を鑑賞した。
それが今回の記事、三種町浜鯉川の「鯉みこし」
どんな行事かは名前からだいたい想像がつくだろう。
そうです、鯉がみこしを担ぐのです、いや違った。鯉をかたどったみこしを担ぐんです。

このブログは基本的に古くから続く伝統行事を対象にしているが、この行事が始まったのは昭和62(1987)年
全く古くない。というか新しい行事であり、伝統行事と呼ぶにはかなり無理がある。
が、この行事は管理人がバイブルだと思っている「秋田の祭り・行事」に立派に掲載されており、その一点だけを以てこのブログで取り上げることにした。
当日5月5日
一日市願人踊り鑑賞を11時前に切り上げて、国道7号線を北上し三種町に入る。
道路沿いに鯉みこし(鯉まつり)の旗が見えてきた。
この旗を目印に国道7号線を外れて、行事の行われる浜鯉川地区へ向かう。

少し進むと浜鯉川地区の中心地


おー、賑わっています。
八郎潟駅前で行われた一日市願人踊りほどの賑わいはないが、地元の人たちが和気あいあいと祭りを楽しんでいる様子が伝わり、なんとも微笑ましい。
この祭りのいちばんの見所は、八郎湖から鯉川川(こいかわがわ)へと漕ぎ出された鯉みこしが、ポンプの放水を浴びせられながら欄干にかけられたスロープを引き上げられる所謂「鯉の滝のぼり」のシーンだが、それはもう終わってしまった。
ちょっと残念だったが、10時開始のこの行事に11時すぎに着いたのだから致し方ない。
今は地元のちびっこたちを鯉みこしに乗せて、楽しませているところなのだそうだ。
また、本来であれば小学校6年生の児童が乗船するらしいが、今年は地区内に小6の子がいないため大人だけの舟航となった。
来年になれば、3人の子が小6になるらしいのでその子たちが乗船するはずだ。

この二艘のボートに鯉が乗せられた。

子供たち楽しそう!


子供たちが屈託ない笑顔で鯉にまたがり、親御さんが「こっち向いて~」と写真撮影
青く澄み切った5月の空に子供たちの笑顔がよく似合う。
なお、地元の方に「子供を鯉に乗せるのは、やっぱ『健やかな成長を願う』っていう意味ですよねー?」と伺ったが、「特にそういうのはないな」とのことだった。
あ、なるほど。そういうかんじなんですね。
成長祈願、健康祈願といったそれらしい意義は含まれておらず、あくまで子供たちを楽しませたいというエンターテインメント的なものだったのだ。

あらためて鯉を観察


つやつやとした光沢がほどよい年季を感じさせる。
「鯉」と聞くとどうしても色鮮やかな錦鯉を想像してしまうが、これは八郎湖で主に捕られたマゴイ、クロゴイがモデルだと思う。
みこしは秋田杉で作られており、全長1.8m、重さ100kgなのだそうだ。
くりくりとした意外と可愛らしい眼、特徴となる口ヒゲや鱗の質感などが上手に作られている。
祭りが始まった当初は張りぼてのみこしだったのを、わざわざ現在のものに作り変えたらしい。

5月の青空がひたすら気持ちいい。

みこしに随行する屋台には子供たちが乗っている。男の子は青い法被、女の子は赤い法被を着用

さて、準備も整ってこれからみこし、屋台が地区を巡行する。
鯉がみこし用の台車に載せられる。


一行は地区の南端まで移動、南端をスタート地点として北端まで巡行するとのこと
今いる辺りは巡行ルートのちょうど中間地点ぐらいなので、ここで待っていれば一行が通過するわけなので、動かず待っていることにした。

一行を待つ間、通りの様子をあらためて観察

この行事は地元の磯前(いそまえ)神社の祭典に合わせて行われる。
神社の祭典として行われるのではなく、「合わせて」行われるという点がこの新しいお祭りのミソだと思う(秋田魁新報では正確に書かれていた)。
また、地元の方から「けっこう立派な神社だから是非見に行って!」と場所を教えてもらい、巡行のあとに探してみたが、結局見つけられなかった(後日調べたところ、場所的には浜鯉川地区よりもっと南に下ったあたりだったが、旧鯉川小学校(現橋本五郎文庫)あたりをうろうろ探してしまったので)。


因みに旧鯉川小学校近くの内鯉川地区でも同じ日に子供みこし祭りが行われた。
こちらは昨年(2017年)に11年ぶりに復活したとのことで、地区内の家々の玄関先には「祭」の小旗が飾られており、賑わっている様子が伝わってきた。

少し待っているとみこし、屋台が近づいてくるのが見えてきた。


「ワッショイ、ワッショイ!コイコイコイコイ!」の掛け声が楽しい。
伝統的な祭りでは見られない自由さというか奔放さが結構魅力的だったりする。
この祭りを立ち上げた方々が今日も元気に参加していたらしいが、当時の地区の人たちがアイデアを持ち寄って祭りを作り上げた様が伺えるようで、何だか素敵だ。


このように伝統行事に寄せて新しく創作された祭りがかつて県内にさまざまあったようだが、中止・終了となったものも多い。
例えば、旧八森町で行われていた「ブリコの里はたはた祭り」でお目見えしていたハタハタ灯籠、旧鷹巣町の「どんどこ阿波踊り」などは個人的に興味をそそられるし、今も続いていたら結構楽しめるものもあったと思う(時代的にバブルの影響を受けたトゥマッチな行事もあったようだが)。
ただ、惜しいかな伝統が希薄なばかりに予算や行事を支える人たちの高齢化、地区の少子化などいろんな原因で人知れずひっそりと役割を終えた祭りが多いのが実際のところだ。
そんな中、地区の人たちの地元愛と行事への愛着に支えられ、32回目の開催を迎えられたことは管理人が思っている以上に素晴らしいことだと思う。

一行は地区の北端に向かって行進


鯉みこしが思った以上に勇壮だ。
八郎湖畔のこのあたりでは伝統的に鯉食が行われていて、秋~冬にかけて脂ののった鯉を食べるのが定番らしい。
鯉料理といえば甘煮とかコイコクとか火を通さなければならないものだと思っていたが、地元の方に「鮒に近い味なんですかね?」と尋ねたところ、「鮒なんか比べ物にならないぐらい美味しいよ。特に刺身は最高だよ!」と教えてもらった。
鯉の刺身(あらい)かあ。一回食べてみたい。
以前にTVで見たのだが、栃木県小山市高椅地区では鯉を神様として祀っていて、鯉食は禁忌とされているそうだ。
ここ浜鯉川では鯉をみこしに飾りつつも、ご馳走として美味しくいただきもする。
鯉が身近な魚であることがうかがい知ることができる。

地区の北端にたどり着くには国道7号線を横断しなければならない。
車メッチャ多いですよ、気をつけてくださいね!

これでみこし一行の巡行も終わりとなる。
管理人も浜鯉川地区をあとにした。
男鹿方面の景色。最高の眺めです。

1時間ちょっとの滞在ではあったが、澄み切った青空の下の元気なお祭りを見れてとても満足だ。
クライマックスである鯉の滝のぼりを見たかったとは思うものの、威勢のいいお囃子、子供たちの笑顔、ユニークなみこしの巡行を鑑賞できただけでも来た甲斐があったというものだ。
こどもの日ということで子供たちが主役のお祭りであるとともに、地域の伝統的な風習をベースにした、老若男女誰もが楽しめるお祭りでもあり、これからも末永く浜鯉川の名物行事として続いてほしいと思う。

地図は鯉川簡易郵便局


“鯉みこし” への2件の返信

  1. 県南出身の私にとって鯉みこしとはみたことも聞いたこともなく、その存在を初めて知った祭りでしたが、活気があって楽しそうなお祭りですね。
    それにしても、脂ののった鯉の刺身、一度食べてみたいです(笑)

    1. uxorialさん
      コメントありがとうございます!!
      そうですよね。県南出身の我らからすると鯉はそれほど身近な魚ではないですよね~
      ましてや鯉まつり、鯉みこしと言われてもなかなかピンときませんよね。
      同じ秋田県内と言えども、独特の食文化を有する八郎湖周辺であるこの地域ならではの祭りだと思います。
      子供たちの楽しそうな様子がとても印象的でした。
      機会があれば是非、お祭り鑑賞と鯉の刺身の実食(笑)ご検討くださいませ!

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