アメッコ市2019

2019年2月9日
今回のお祭りは冬の県北地方を代表する小正月行事、大館市のアメッコ市。毎年2月の第二土・日に全国から10万人を超える観客を集めるとともに、真冬の寒風吹きすさぶ大館市街に、露天で販売される飴の鮮やかな色がよく映えるフォトジェニック、インスタジェニックな、ちょっとモダンな風情のお祭りでもある。
管理人は昨年に続いて2度目の鑑賞となる。
昨年はカメラの電池装着を忘れてしまい、どうしようかあたふたした結果、ムービーのカメラ機能を使えばよいことにどうにか気づいた己の愚かさ加減を再確認したお祭りでもある。

今年の訪問は初日となる2月9日
お祭りは10~17時半の長丁場(二日目は9~15時半)となるため、特に時間を決めるでもなく10時頃にふらっと出発。途中寄り道をしながら13時前に会場近くのスーパーへ到着、会場となるおおまちハチ公通りへと歩いて向かう。
長木川の向こうに見える鳳凰山。とても良い眺めで印象的

会場まで1kmほど。徒歩でこの距離はちょっと‥という向きには大館駅から会場へと向かうシャトルバスを利用するのもよいだろう。

会場へ到着

昨年と同じく、真冬感のない青空が広がる好天。今年もたくさんの観客がすでに集結している模様

近くの田代岳から降りてきて飴を買う、白髭大直日大神(しらひげおおなおびおおのかみ)の足跡を隠すためにアメッコ市の日は吹雪になる、と言われているが、そのような言い伝えとは無縁といっていいほどの天気。とは言え、道路に雪が積もっているわけでもないのでこれはこれで足跡を残すことはない。

お祭りに合わせて会場内に設置された特設ステージ
この日も「大館曲げわっぱ太鼓」やヴォーカル&ダンスデュオ「~迷子~」のライブなどが行われた。

メインの通りを少し外れたところに‥


可愛い!大人気。ここ数年、大館の観光事業のトップランナーとして君臨(?)する秋田犬ふれあいどころ
近頃では秋田市内でも気軽に秋田犬に触れ合えるぐらいの人気ぶりだが、大館のものは何となく本場感が感じられる。

通りを進んでいく。


アメッコ市と言えば、飾りアメや御札をくくりつけた枝アメ(「ミズキ」という木らしい)が象徴だろう。
この日もたくさんの枝アメが通りを飾り、何となくウキウキした気分になってくる。
気のせいか通りを歩く人たちもアメをなめたり、おしゃべりしながら楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

たくさんの露天が軒を並べる。


カラフルなアメがびっしりと売られていて、こちらも思わず心弾んでしまう。
この行事は元々は健康、無病息災を祈願する目的で飴を食べていたものが、豊作祈願のため神前に奉納するようになったことで民衆の間に広まり、やがて市が出されるようになったのがその起源とされている。
現在のように観光行事として形作られたのは昭和40年代になってからだが、もともとは天正年間に遡るかなり古い行事でもある。

比内地鶏の丸焼き。旨そう。。。食いてえ

そうしているうちに秋田犬パレードが。


シロ、アカ、虎毛など10頭以上のワンちゃんたちが堂々と行進する。
穏やかでありながら、どっしりとした性格の秋田犬らしく、たくさんの人が集まっていることなど全く意に介さずにテクテク歩くところがまた良い。
4月には大館駅前に「秋田犬の里」がオープン、実際に秋田犬と触れ合える専用の施設ができることもあり、さらに人気に拍車がかかることも予想されるが、ワンちゃんたちのコンディションの問題もあると思うので、是非適切に管理・運営してほしいところだ。

こちらは枝アメ作り体験コーナー


大館市観光協会様のHPで知ったのだが、今日飾られているような枝アメは大館菓子協会の皆さんが中心となって市民の皆さんで製作されているそうで、こちらのコーナーで製作過程を体験できるというわけだ。
個人的な感想で恐縮だが、体験型のコーナーといえばその面倒さから閑古鳥が鳴いているようなイメージを持っていたのだが、こちらの体験コーナーはかなりの活況を呈している。
昨年初めてこのお祭りを訪れたときには大館市民のアメ信仰というか、「この日にアメを食べると風邪をひかない」という古い言い伝えが現在もしっかりと息づいているかのごとくたくさんの人たちがアメを買い求める姿にちょっと驚いたのだが、この体験コーナーの盛況ぶりにもその言い伝えが反映されているかのようだ。

会場の南端にあたる場所に設置された鳥居

鳥居をくぐると神殿が。
たくさんの人の行列が出来ていて、皆ここで健康祈願を捧げている。
因みに神殿、鳥居ともにこの日のために特別に設置されたものであり、普段は大館神明社にて保管されているそうだ。

通りを一通り歩いてUターン。真冬とは思えないほどの青空が本当に清々しい。


空の青と枝アメの赤のコントラストが実に綺麗。
ここ数年、秋田の伝統的な小正月行事で外国人の方をお見かけする機会が急増したように思う。
この日も例に漏れず、たくさんの外国人観光客とすれ違った(と思っている)が、願わくばこの素敵な風景を秋田、日本の忘れがたい思い出としてまぶたに焼き付けてほしいと思う。
因みに昨年、大館市観光協会の方に教えていただいたところによると海外(欧米、ということだろう)でもアメッコ市と同じようなお祭り”candy festival”が行われている国もあり、やはりそのカラフルさがたくさんの観光客を集めているらしい。

先ほど通りを通過していった秋田犬パレードが戻ってまいりました。
人々の間を縫うように秋田犬が行進。可愛らしいその姿が注目を浴びてはいるが、中には足元にワンちゃんがいるのに気づかず、気づいた途端に「ウワッ!」とびっくりする人もいた。
そんな人たちなどどこ吹く風、とばかりにマイペースでのんびりと歩く姿はホントに可愛らしい。

本当はもっとじっくりと会場内を見て回りたいが、あいにく都合があり、1時間弱ほどで会場をあとにする。
会場に着いたばかりの頃は雲が見えていたが、帰るぐらいには一面の青空とも呼べるぐらいの晴天となった。
小正月行事感には欠けるものの、これはこれで実に印象的で美しい姿を見せてくれて、満足した気分で大館市をあとにした。

カラフルとかインスタジェニックとか、このブログに似つかわしくないぐらい横文字を並べて紹介してしまったが、このお祭りは決して華やかな色彩に飾られた豪華なお祭りではないと思う。
ベースにあるのは北国の冬特有の鉛色の空、全てを闇に葬り去るかのごとく空虚な調べを奏でる風の音、そしてこのまま永遠に止まないような錯覚を覚える降り続く雪‥
それでも、枝アメのきらびやかな桃色がポツンポツンと映える様は、おそらく古の人々の心に待望の春を告げる使者のごとく映ったに違いない。
それらの光景と「この日にアメを食べると風邪をひかない」「この日にアメを食べないと蛆になってしまう」といった素朴な民間信仰が結びついたある種の邂逅がこの行事の素晴らしさではないだろうか。
これからも大館市、県北を代表する小正月行事として多くの人に幸せな思いを届けて欲しいと思う。


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