男鹿三山お山かけ

2020年6月21日
4月以降、猛威をふるい続けた新型コロナウィルス。
本県でも新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が発令され、当面の間外出自粛要請や、飲食店に対する休業要請が出された。
5月14日に緊急事態宣言は解除されたものの、県をまたいだ移動の自粛や、イベント参加人数の制限は継続され、決してコロナ禍から解放された訳ではない。
そんな社会状況は当ブログにも例外なく影響を与えることになり、4・5・6月は一つの伝統行事も見ることが叶わなかった。
こればかりは伝統行事が開催されるか否かに左右される訳で、自力では如何ともし難いところだが、この状況が長く続くのを指をくわえて看過するわけにもいかない。ということで、今回は行事・お祭りとは違うものの、男鹿に伝わる伝統の風習を実体験してみよう!という記事です😀

「男鹿三山のお山かけ」
男鹿中在住・出身の方であればよくご存じかもしれないが、男鹿市公認観光情報サイト「男鹿ナビ」様のご紹介が分かりやすいので、まずはこちらで概要を押さえといてほしい。
要は男鹿市北浦真山~門前にかけての真山・本山・毛無山三山の縦走登山ということで、体力には全く自信のない管理人ではあるが、趣味で里山歩きをすることがあり、まあこれぐらいの山であれば歩けなく(登れなく)ないことはない。
ただ、ネックとなるのが全長10.6kmにも及ぶ距離!里山専門のクライマーもどきでしかない管理人にとって、この距離は未体験ゾーン。途中でバテずにゴールできるのかその点だけが心配だった。
そして6月21日が都合的にも天気的にも申し分なさそうという事でいざ決行❗という流れになりました、ハイ

当日を迎える。8時過ぎに自宅を出発し、まずはゴールとなる門前を目指して車をとばす。
なんでゴール地点へ向かってんの?ということだが、お山かけは真山~門前への縦走となるため、門前へ車を置いてバス・タクシーを乗り継ぎ、スタート地点となる真山へ移動するプランを立てたためであり、これが仲間を伴ってのチャレンジであれば、車2台で門前へ向かう → 1台を門前へ置いて、もう1台で真山へ → 真山からお山かけスタート → 門前でゴール → 門前に置いていた車で真山へ移動 → 真山に置いた車を回収というプランが立てられるが、あいにく今回はソロ登山。ということで、門前バス停からほど近い長楽寺駐車場に車を止めて、歩を進めます。

駐車場から海側へ向かい、5分ほど歩く。途中にある山門(仁王門)

バス停に到着。門前名物、ナマハゲの立像

9時20分発のバスが到着しました。男鹿駅に向けてLet’s Go!!

管理人の他に年配の方が一人乗りこんできた。途中のバス停で同い年ほどの年配の方々が続々と乗車し、人数が増えていく。
皆、顔なじみのようで世間話に花が咲いてます。

鵜ノ崎海岸のあたり。天気は良好。「ここから運賃が変わります」と度々車内放送が流れるが、別に運賃変わりませんでした(一律200円)。

10時前に男鹿駅へ到着。リニューアル後、初の男鹿駅なので中に入って少しぶらぶら

男鹿駅~真山への移動は、前日に男鹿市観光協会が運営するなまはげシャトルを予約。10時5分男鹿駅発のなまはげ5便を待つ。

定刻にシャトルが到着。料金は男鹿駅~真山神社まで¥1,100です。

乗客は管理人1人。運転手さんと雑談を交わす。やはり話題の中心はコロナのこと。4・5月に比べて6月になるとやや客足は戻ってきたとは言うものの、例年に比べるとまだまだとのこと。特に6月はなまはげ館や男鹿真山伝承館への団体客が多い時期だが、今年は暇な日も多いそうだ。この後どうにか持ち直してくれたらいいんですが‥

10時30分前に真山神社前駐車場へ到着。ここが出発点となる。なまはげシャトルありがとうm(_ _)m

真山神社駐車場。登山客もいれば、神社への参拝客もいます。

10時45分。登山支度を整えて、さあ登りましょう!


ここから約11kmにわたるロングトレイルが始まる。
天気も良好で、野山の景色を愛でながらのんびり歩くつもりだが、さすがに気持ちが引き締まる。
男鹿市史(下巻)に「修験道の道”お山かけ”」のタイトルでお山かけについての紹介が記されている。
「真山・本山は『お山』と呼ばれて古くから畏敬の念をもって眺められてきた。このお山を真山神社から本山を経て門前までの約11kmに祭られた神々を詣でながら縦走するのが、”お山かけ”である。かつてはお山かけをしてはじめて一人前とも言われた。昔、行者達が難儀して開いた山かけ道は、今遊歩道も通り整備された。だから、各自の体力に合わせたコースに挑戦できる楽しみがある。最もきつい金取坂コースは転げ落ちそうな急坂であるだけに、登り切った爽快感は格別であり最大の人気コースである」

階段を上る。


階段の途中にある社務所を通り過ぎるとき、巫女さんが「いってらっしゃいませ」と声をかけてくださった。
声をかけてもらったついでに、先日テレビでちょっと心配になるニュースを見たので尋ねてみた。
「男鹿にクマが出たらしいですけど、大丈夫ですかね?」男鹿市は県内では貴重なクマ生息外地域とされているが、3年前に市内脇本で目撃され、今年も目撃情報が寄せられたとのこと。
巫女さんは、それは若美町のほうなんで大丈夫ですよ(ニコニコ)と教えてくださったが、近年はクマの生息域拡大が顕著だし、男鹿で出会うことはないと100%断言もできない状況がある。ということで、念には念を入れてクマよけ鈴を携帯しております。

こちらが真山神社(拝殿)です。

説明板には真山神社の由緒沿革について「社伝によれば景行天皇の御代 武内宿禰が北陸地方諸国視察のため男鹿半島へ下向の折、湧出山(わきいでやま、現在の真山・本山)に登り使命達成と国土安泰・武運長久を祈願して瓊瓊杵命(ににぎのみこと)武甕槌命(たけみかつちのみこと)を祀ったのが始源とされる」と記されている。
現在の名称は真山神社だが、明治時代の神仏分離令の折にかつての名称「赤神神社」から真山神社に変わり、現在に至っているそうだ。
また、真山地区で営業されている「里山のカフェ ににぎ」さんのネーミングは、祭神であるににぎのみことが由来らしいです。


6月30日に行われる夏越の大祓いは、真山神社においては6月16日に行われるそうだ。丁寧なことに、茅の輪の作法が掲示されていたのでそれにならってくぐってみる。
どちらの足からくぐって、右に何回廻って、左に何回廻って‥といったように細かい作法が定められていて、一応それを守りながらくぐる。
また、本来は「はらへたまへ きよめたまへ まもりたまへ さきはえたまえ」と神拝詞を唱えながらくぐるのが本当の作法らしいが、詞を覚えられなかったので無言のまま行うしかありませんでした😅😅

拝殿横を通過するとお堂が見えてくる。さらにその脇を通過すると本格的な登山道の始まりだ。


鄙びた石段と、両脇に天然杉がそびえたつ雰囲気溢れる登山道だが、かなりの急登だ。
出だしからこれはきつい(><)まずは真山頂上を目指すことになる。
山と渓谷社から発刊されている「秋田県の山」では、男鹿三山について「日本海に突き出た国定公園男鹿半島の荒々しい西海岸寄りに、ドーム型の主峰・本山を中心として、北に真山、南に毛無山を連ねる山並みは、愛称として『男鹿三山』と呼ばれ、親しまれている。古来より赤神権現を祀る信仰の山で、平安末期からの熊野詣にちなんだ大峰道と称す修験者の道場として栄え、『詣で道』『お山かけ』として多くの登拝者でにぎわってきた山でもある」と記している。
たしかに登山道に入ると同時に、はるかいにしえより幾百幾千の人たちがこの道を歩んできた、古道然とした雰囲気が伝わってきた。

木の根っこが自然の階段を作っています。


急登続きの坂を上ると、ちょっと平な場所へと出る。そしてそこに鎮座するのは「五社殿」
真山神社HPには、五社殿について「お山かけの入り口でもある、社殿と薬師堂の間に続く石段を踏みのぼり、鬱蒼とした老杉並木を通り抜けると五社殿が見えてきます。古くは、その名の通り五つのお社がありましたが、江戸時代後期に焼失してしまいました。そのため、残った1社に合祀し、現在の場所に遷されました」と紹介されている。
たいへん趣のある社殿で、ここで一休みしたいなどとも思ったが、まだまだ先は長い。さすがに休憩するには早すぎるということで、そそくさと先を急ぐ。


五社殿を過ぎるとさらに勾配がきつくなった。
ちょっと歩いては立ち止まって水分補給の繰り返しとなるし、もちろんすでに大汗をかいている。
「秋田県の山」には「五社殿先の分岐から、真山神社への道は自然観察路でもある」と記されている。なお、自然観察路とは別に「真山遊歩道」と呼ばれることもあるようだが、「観察路」「遊歩道」といった優しいネーミングに騙されてはいけない。これは結構な坂です!

急坂を上っていくと‥

11時20分。僅かに開けた場所に出た。

6~8畳ほどのスペースがぽっかりと空いている。ここはおそらく「八王子跡」と呼ばれる地点だろう。
標高は415m。漢字が「八王寺」であればお寺の跡だと思うが、ここは「八王子」と呼ばれている。いろいろ調べても八王子とは何であるかよく分からなかったが、かつて何かしらの建物があったことは容易に想像できる。

とにかく一休みしましょう。

横たわる大木に腰を下ろして、息を整える。
三山に登るとはいえ、基本的には山⇒海へと下って進むわけなので、なだらかな上り坂が続くイメージを勝手に持っていたが、全然違っていた。
この先もこんな急登が続くのであればちょっとキツい。初っ端から思わぬ展開に面食らってしまう。

10分ほど休んだのち、再び出発


坂がなだらかになった。これは助かった😀
このあたりになると反対方向から進んでくる登山者たちとすれ違うことが多くなってきた。
管理人とは逆ルートでの縦走中ということではなく、真山神社から出発して本山まで到達後に折り返して下りてきた人たちのようだ。
その中のお一人に伺ったところによると、真山神社⇒真山⇒本山折り返しコースがもっともポピュラーらしい。

そこかしこにお地蔵さんの姿が

ブナの木がだんだんと増えてきた。

途中階段もあります。結構急な階段だったが、初めの急登に比べればそれほどきつくはない。


男鹿市史では「貞観2年(860)に建立されたと伝えられる赤神山日積寺永禅院は、開山が天台宗の慈覚大師(円仁)といわれ、また、これと並ぶ古寺、赤神山遍照院光飯寺(天台宗)とともに修験者の道場となった。登り口は、南磯の本山口と北浦の真山口があり、北浦から南磯に抜ける道を『大峯道』と呼び、真山の頂上を『大峰』と呼んだのは、熊野修験道の影響と考えられる」と紹介されている。今、まさに大峰が目の前に迫っている。

屋根が見えてきた。

12時10分。一座目、真山神社に無事到着😄


吹きさらしになっている一階にはベンチとテーブルが仕付けられていて、一見休憩所っぽく見えるが、これが真山神社本殿(奥宮)となる。
男鹿市史では「杉の老木が茂る山上に真山神社の本殿が鎮座する。かつて新山とも書かれた。中腹の拝殿脇には薬師堂もあり、往古は薬師岳とか湧出山とか呼ばれた」「本殿は真山頂上(571m)に鎮座し、国土安泰、武運長久、海上安全、五穀豊穣をはじめ、すべての恵みを垂れ給う霊験あらたかな神社として、人々の厚い信仰をあつめている(管理人注:現在では頂上まで567mとされています)」と紹介されている。

本殿二階(展望台)からの眺め。かつては鬱蒼とした杉林だったらしいが、今では抜群の眺望の開ける心地よい場所だ。

もちろん休憩を取る。

時刻は12時を回っていたので、ここで昼食を摂ることもできたが、もうちょっと距離を稼いでおきたかったので、ご飯を後回しにして出発することにした。

少し歩くと真山山頂の標識が立っている。

山頂を通過すると、道がこれまでと異なりかなりなだらかになってきた。

途中には木道も

紫色の花が咲いていた。

花のことは全く知らない管理人。ネットで調べたところ「ツリガネズイセン(釣鐘水仙)」に近いと思うんだが、合ってますかね?

12時45分。ちょっと開けた場所に出た。ここは「フタツアイ」

眺望は全くないものの、いいかんじの木陰が広がっていて爽快そのもの。鳥のさえずりが四方から聞こえてくる。ここで昼食にします。

フタツアイからは通称「キントリ坂」が分岐している。


「秋田県の山」には「真山山頂からは杉林の中の下りとなり、まもなく本山との鞍部であるベンチのある休憩地・フタツアイに出る。右への道は加茂青砂へ、直進はキントリ坂を登って直接本山へ向かう道であるが、ともに廃道」と書かれている。
だが、キントリ坂をちょっと見た限りでは藪化が進んでるようには見えなかったし、本山への最短ルートとして未だに活用されているのかもしれない。
なお、道はかなりの急登が続くらしく、先行者のキン〇マを掴めそうなぐらいの斜度があることから「キントリ」と付けられたそうな。

待ちに待ったランチタイム。お茶とケーキも付いてます。


おかずは前日に自分で作った、鶏肉と野菜のオリーブオイル炒め。何気に「映え」を狙おうとカラフルな色合いにしてみたが、どうみても残飯にしか見えない。
おまけに福井名物「越前かにめし」を器に使ったのだが、くすんだ小豆色が毒々しさをさらに強調してしまって全く食欲をそそらない。秋田弁で言えばこえだばシャッコでねねが!こえだばゴドだねが!ってかんじだ。自分で用意したんだし、黙って食べよう(味はまあまあでした)🥶

13時20分。お腹いっぱいになったし、十分に休息も取ったし出発します😀

平坦な道が続く。


「秋田県の山」には「本山の天然杉の茂る北斜面と造林地の東斜面を巻いて歯切水にいたり、すぐ自衛隊の車道・本山分岐に飛び出す。途中に残されている、天を突く天然杉がみごとだ」と記されている。
まさしくその文章の通り、背の高い杉が立ち並ぶ登山道は午後の柔らかな木漏れ日に包まれて、最高に気持ちよく、全行程のなかで特に印象に残る山歩きとなった。

やがて木々が鬱蒼と茂る、細い道に変わる。

途中「歯切水」なるスポットがあるが、水場になっている訳ではない。

視界が開けた。

本山山頂への分岐に出ました。↓手前左側へ進むと本山をかすめて毛無山へ進むことになります。

13時50分。いきなりだだっ広い自衛隊道路に出た。

広い道に出て少し楽になるかと思いきや、そうでもない。砂利道で歩きづらいうえ、想像以上の上りになっている。しかも木陰とかないし。。。

眼下に見下ろす日本海。雲一つない晴天🌞数羽のトンビがすぐ手が届きそうなところを飛んでいる。

男鹿市史に「本山山頂辺りからの眺めは圧巻である。遠くには鳥海、岩木、奥羽の山々が、近くには大潟村と八郎湖、寒風山が、すぐ西側眼下には、断崖となって落ち込む西海岸線とかぎりなく広がる青い日本海が‥。まさに筆舌に尽くし得ぬパノラマとなって展開している」と記されているとおり、空の青と海の青が合わさってこのうえなく気持ちいい景色が広がっている。
真上から容赦なく照り付ける陽射しのことを忘れ、絶景を愛でながら歩を進める。

道ばたに立つ米軍大型爆撃機B-29遭難事故慰霊碑

こちらは慰霊標。慰霊碑のすぐ脇に立てられている。

太平洋戦争終戦直後の昭和20年8月28日、大館市花岡の捕虜収容所に救援物資の補充をすべく、秋田県上空を航行中だったB-29が男鹿半島を通過中に本山に激突する事故が発生、乗組員12人中11人が死亡する悲惨な事故となったが、戦争のわだかまりを捨て人命救助に当たった地元加茂青砂の人たちの尽力によって少年兵1名が奇跡的に助けられた。
その事故で亡くなった米兵の慰霊のために建てられた碑。名前は分からないものの、周りに赤い花が咲いていたのが印象的だった。

14時15分。山頂(715m)となる航空自衛隊加茂分屯基地前に到着。朝鮮半島情勢が緊迫している現在、国防最前線の拠点としてその役割は重要だ(と思う)。男鹿市史では「男鹿半島最高峰。山頂には赤神神社の本殿や薬師堂があり、薬師如来の石像が安置されていた。戦後、山頂がレーダー基地となるに及んで、山頂から下に下げられた」と紹介されている。

基地に張り巡らされたフェンス

「突き当りの正門から左へ柵沿いに踏跡を進むと本山山頂・赤神神社奥宮にいたり、右方に一等三角点があるが、レーダー基地内である。ここから車道へ直接下る踏跡もあるが、初級者向きではない」と「秋田県の山」に書かれている通り、写真の藪道を進めば社殿が見えてくるはずだが、道がはっきりしていないし、ほぼ頂上まで着いたわけだし、ということで社殿までいかずに引き返すことにした。

これはなんという花でしょうか?

下りの景色も素敵です。

本山分岐へと戻り、次は毛無山を目指す。

こちらはおそらく宮沢海岸方面

本山を過ぎると、基本下り坂オンリーとなる。


途中で海側(門前)から登ってこられたという男性・女性ペアの方とすれ違った。
これから本山・真山を越えて、真山神社拝殿(管理人がスタートした地点)まで向かうそうなので、管理人とは逆コースでお山かけに挑んでおられる訳だ。
このあたりがちょうどスタート~ゴールまでの中間地点なので、管理人とペアのお二人が逆方向に、この先同じぐらいの距離を歩くことになる。「お互い頑張りましょう!」とエールを交換😀

再び自衛隊道路と交わります。ここは植物盗掘の監視小屋


「秋田県の山」に「自衛隊道路から本山へは、男鹿中地区から本山と毛無山との中間地の分岐まで車の乗り入れが可能(自衛隊加茂分屯基地に許可申請が必要)」と書かれている。おそらく↑の通行止めエリアの手前までは車で行くことができるのだろう。

自衛隊道路を横断して再び遊歩道へと入る。


ネットで知ったのだが、「公務員ランナー」として知られる川内優輝さんが日本海メロンマラソン参加のために男鹿を訪れた折、お山かけにも挑戦されたそうで、そのときの往復タイムがなんと2時間54分!
「秋田県の山」では片道コースタイム4時間35分となっているし(徒歩とマラソンの違いはあるんでしょうが)、真山神社の宮司さんも「往復で3時間を切るなんて想像を超えている」(←秋田魁新報記事より)とコメントを残されている通り、こりゃとんでもないことです。と思っていたら、この記事を書いている最中に、埼玉県在住のプロ山岳ランナー上田瑠偉さんが往復2時間1分19秒で踏破!とのニュースが飛び込んできた。
片道4時間35分のところを往復で2時間?ちょっと時間の感覚おかしくなってない?ってぐらいの驚異的なタイムです。

毛無山レーダー基地が近づいてきた。

途中にはこんなところも

案内板がありました。

長楽寺~毛無山~本山~真山、さらには北浦バス停へと至るルートは、秋田県内に49個所ある「新・奥の細道」のひとつだ。
途中には、13,000体もの小さな地蔵菩薩が室内の天井、壁一面に隙間なく納められた「真山の万体仏」のお堂もある。
男鹿市史には「真言宗の回行僧 普明は、愛弟子の不幸な死に会い、その菩提をとむらうと共に、世の早逝した子どもたちの供養のために仏像を彫り続け、その結実が13,000体となったものと伝承されている」と、その発端について記されており、幽玄かつ鮮烈なイメージを掻き立ててくれる。管理人はまだ訪問したことはないが、そのうち訪れてみたいと思っている。

木陰の遊歩道が心地よい。


男鹿市史では、自然景観をテーマとした観光資源として海岸美(奇岩怪岩の連続する西海岸、南磯海岸。白砂青松の五里合や船越海岸)、山と高原からの展望(真山・本山・寒風山・八望台・入道崎・男鹿山牧場等からの眺め)、美しい湖沼や滝(3つの目潟群・滝ノ頭・大滝・三ノ滝・白糸滝)などを挙げている。
今では名前を聞かないスポットも混じっているが、スケール感あふれる自然景観だけではなく、管理人が歩いているような山の小径然とした風景もたいへんに味わい深い。

これが毛無山山頂のレーダー基地。ゴルフボールみたい


毛無山の標高は677m。なお、男鹿三山について毛無山ではなく寒風山を一つとして加えることもあるそうで、男鹿市史には「男鹿は以上のように真山・本山・寒風山がそびえたち、その北部・西部・南部は日本海に面して、東部は八郎潟に接する風光明媚の地である。この山々は原始的自然信仰による御神体として古くから『おやま』と呼ばれて畏敬されてきた」と記されている。
麓から見上げる寒風山含む三山は、いにしえより男鹿の人たちの心に刻まれ、崇拝され続けてきたということなのだろう。

遊歩道を少し外れると三たび自衛隊道路が。立派な公衆トイレがあります。

また遊歩道へと戻る。

先ほど通過した本山の自衛隊基地が遠くに見えます

15時20分。このあたりがちょうど毛無山山頂直下のあたりだ。


真山山頂のように、遊歩道を歩いていれば毛無山山頂に到達するようにはなっておらず、一度遊歩道を外れて自衛隊道路に出る必要がある。
ただし、山頂には本山同様に自衛隊レーダー基地があるため、山頂踏破できるわけではないようだ。
今回は山を巻くかたちで遊歩道をひたすら突き進んでしまったが、またいつか山頂付近を歩いてみたいと思う。
なお、山頂近くには赤神神社中宮が建てられているが、どうやら藪の中になってしまっているようだ。

僅かだが、日が傾いてきたことが分かる。


登り坂になっている個所はほとんどなく、下りメインの遊歩道はまさに天国そのもの。これであればいつまでも歩いていられる、と言いたいところだが、前日に買って今日初めて履いたウォーキングシューズがちょっと合っていないようで、爪先辺りが少し痛くなってきた。
登りのときは全然気づかなかったが、下りになるとはっきりと合っていないのが分かってきて、次第にズキズキとしてきた。
シューズのせい云々ではなく、前日に買って履き慣らしもしないまま、いきなり10kmにもおよぶ山歩きでデビューさせるという管理人のいい加減さが良くないのだ。
こんなずぼらな事を平気でやらかす癖があり、自分自身なんとかしなきゃとは思ってるんですが、、、


男鹿市史には「なだらかな毛無山をすぎて下りにかかるころ、心地よい潮風が頬をなでる。お山かけの終着であり、鬼の築いた石段で知られる門前の五社堂ももう近い」と書かれている。
今日はほぼ無風状態で、頬をなでる潮風の心地よさは味わえなかったが、暑さの中にわずかに感じられる涼しさがとても気持ちいい。
同書には、およそ年間2万人が三山を訪れるとしたうえで「昭和49年以降、真山遊歩道の建設が進められ、その後駐車場や道路の改良整備もほぼ終了した。男鹿観光における歴史文化の中心地として、さらに施設・設備の充実がなされるものと期待されている(※管理人注:同書はなまはげ館・男鹿真山伝承館建設前)」と記されている。老若男女問わず、山行を気軽に楽しめる格好のスポットなのだ。

五社堂が近づいてきている。


ブナ林が終わると、杉が立ち並ぶ鬱蒼とした景色に変わる。と同時に歩きやすい遊歩道から、ときおり石がゴロゴロする道へと切り替わった。
そのことが麓に着実に近づいていることを教えてくれると同時に、この長かった山歩きがそろそろ終わろうとしていることを告げているかのようだ。
今日の逆コース、すなわち門前~真山に抜けるコースも違った味わいがありそうだし、新緑や紅葉など四季折々の美しい風景も楽しむこともできる。いつかまた登ってみよう。

開けた場所に出るようです。

16時30分。五社堂へ到着


男鹿の観光スポットとしても良く知られている五社堂。すでに夕方の気配が色濃くなっているが、観光客が2~3人ぐらいいた。
「男鹿市史」には「五社堂は『本山赤神社縁起』によると建保4年(1216)鎌倉将軍源実朝が比叡山に寺院の形容を模して造営したとき、山王七社に倣って祀ったと伝えられている。五社は向かって右側より三ノ宮堂、客人権現堂、赤神権現堂、八王子堂、十禅師堂となっており、中央に位置する赤神権現堂の内厨子は室町時代後期の作として貴重なものであり、昭和42年6月15日、国の重要文化財指定を受けている」と紹介されている。
歴史を感じさせる五棟の社殿と、その前にそびえ立つ杉の大木が独特の雰囲気を醸し出す、心落ち着く場所だ。

しばし休憩


長い下り坂を下りてきたせいだろうか、爪先に続いて今度は左ひざに痛みが走っている(秋田弁で言うところの膝カブやめるというヤツですか)。結構長い時間、ベンチに腰を下ろし休憩を取った。
これまでたびたび訪れた場所だが、管理人的には2016年に行われた「赤神神社五社堂八百年祭」が印象に残っている。
男鹿総合観光案内所で授かった願い木に願い事を書いて、千年杉の塔モニュメントに納めたり、神事のあとに唐突に地元門前のナマハゲが登場してビックリしてみたり、とちょっと観光的な要素も混じった、こじんまりとしながらも賑やかだった祭りの景色が思い出される。

姿見の井戸

菅江真澄の記した「遊覧記 男鹿の秋風」によると「坂をはるばるとのぼると姿見の井戸がある。この水鏡が曇って姿がぼんやりとうつった人は命が長くない、という水占いがある」そうだ。

ここまで来たら、あと一息!

鳥居をくぐると石段が眼前に広がる。


赤神神社への参道としてこちらも人気スポットとなっている「999段の石段」
漢の武帝が連れてきた5体の鬼が作ったと云われており、ゴツゴツとした石が粗く敷き並べられるさまは実に独特だ。
この5体の鬼がナマハゲの起源という説もある門前地区の観光には欠かせないスポットであり、できればフィニッシュを飾るべく堂々と石段を下りたいと思っていたが、左ひざが本格的に痛くなってきてしまった。
どうにか一段一段慎重に歩を進め、ゴールとなる出発地点の長楽寺駐車場を目指す。

石段が終わる。これは長楽寺 宝物殿

そして赤神神社大鳥居をくぐりました。ゴールです😀😀

時刻はちょうど17時。1年でいちばん日中の時間が長いこの時期だが、さすがに日が傾いてきたのが分かる。


駐車場脇のあずまやでしばし休憩
爪先と左ひざの痛みは相変わらずだが、それ以上に山歩きを終えた達成感・満足感のほうが上回り、心地よい疲労感に包まれる。
長楽寺駐車場には、管理人の車の他に1台が止まっているだけだ。30分ほど体を休めたのち、帰路に着いた。

祭り・行事が全く行われない状況は寂しい限りだが、何もできないということではないと考えて今回の記事を書いてみた。
とはいえ、単なる埋め合わせ目的に留まらない、お釣りがくるほどの楽しくて貴重な経験ができたと思う。
伝統の薫り漂う登山道、木漏れ日が降り注ぐなだらかな遊歩道、時折見える風光明媚な景色‥。代表的な観光地も勿論楽しいが、それとは一味も二味も違った男鹿の魅力をたくさんの人に体験してほしい。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA