二井山湯殿山神社裸参り お柴灯

2017年1月7日
正月も終わり、世間は完全に通常モードに戻っている。
管理人も平日は働いているのでその点は同じなのだが、これから当地秋田では小正月行事を始めとした祭り・行事が目白押しとなり、いやが上にも心が沸き立つ。
そして今回足を運んだのは横手市雄物川町の「二井山湯殿山神社裸参り」
タイトルの後ろに「お柴灯」とつけたのは「秋田の祭り・行事」にそう書いてあったから、というだけで管理人自身よく意味を分かっていない。

「お柴灯」と書いてどうやら「おさいとう」と読むらしい。
「無病息災、家内安全などを祈願して御札やしめ飾りなどを焚く」という意味のようだ。
ただ、どのように裸参りとお柴灯が結びつくのかやっぱり理解できない。
あまり、ゴチャゴチャと考えずにとりあえず足を運んでみようと決めたのだった。

会場は雄物川町二井山にある湯殿山神社
湯殿山神社といえば東北人にはよく知られているであろう出羽三山(他2つは羽黒山・月山)のひとつにあたる湯殿山に建立された神社であり、二井山の湯殿山神社はそちらから分祇されたということになると思う。
出羽三山神社のHPを拝見すると、この地が山岳信仰の総本山として長い歴史を積み重ねてきたことが伝わってくる。
開催日は1月7日
今年の1月7日は土曜日で仕事休みに当たったため、鑑賞することができた。
「1月の第一土曜日」とかではなく日にちが固定されているあたりにこの行事の伝統を感じる。
なんでも400年以上前から続けられているとのこと

それにしても今年も昨年同様雪が少ない。
何日か前に降ったことは降ったが、すでに秋田市内では解けてしまっている。
豪雪地帯横手といえども少雪の影響は避けられないようで、出前かまくら用の雪を岩手県北上市のスキー場から調達したなどの話も聞く。
やはり冬は冬らしく雪が積もったほうがいい。
生活上の不便はあるものの、雪が少ないとその年の農作物の生育に影響があるし、何よりも冬の行事にふさわしい雰囲気が醸し出されない。

行事当日を迎える。
秋田市を3時半過ぎに出発
国道13号を使って湯殿山神社に行こうとすると2時間はかかってしまうだろう。
秋田道を使ってもそれなりの時間を要するはずだが、二井山は出羽グリーンロード沿いにある集落でありグリーンロードを使うと1時間20分で到着する。
ということで、5時前には二井山集落に着いた。

このあたりにはかつて横荘線(おうしょうせん)という鉄道路線が走っていた。
昭和46年に廃線になったが、そのときまで使われていた二井山駅の記念碑が集落の外れに建てられている。
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集落脇を走る出羽グリーンロード
この時期の横手市内の道路が雪に覆われていない、というのはやっぱり違和感がある。
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二井山集落の様子
全部で50戸ほどあるそうだ。
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「秋田の祭り・行事」には、開催時間4時半~9時までと記してあったがどう考えても長すぎる。
会場となる湯殿山神社に足を運んだが、人の気配はほぼない。
それはそうと湯殿山神社は風情溢れる境内のある神社だった。
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いわゆるパワースポットのような圧倒的なオーラはないが、こじんまりとした静謐さを漂わせている。
ここの近くにある木戸五郎兵衛村はかまくらの時期になると県内外から多くの観光客が集まるが、湯殿山神社も負けず劣らず素敵な場所である。
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参道沿いのミニかまくらもいい味出しています。
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思わず動画を撮影する。

雪が積もっているように見える境内も、あちこちで地面が露出している。
また、この日は天気がすぐれず時折小雪ならぬ小雨がぱらつく。
しんしんと雪が降っていればさらに良い雰囲気を醸し出しただろう。

人の気配がないとは言え、見ているとちらほらとご家族連れと思しき方々が神社を訪れてお参りをしている。
神社の関係者の方に話を聞くと、もともと今日1月7日は湯殿山神社柴灯祭(さいとうさい)の日であり、百匁蝋燭(ひゃくめろうそく)とお初穂を奉納しお参りする日だとのこと
お参りする人の中で下帯(要するにふんどし)姿の方もいて、その方々のお参りを裸参りと称するのだという。
あぁなるほど!と合点がいった管理人だったが、あとで横手市HPを見るときちんとその説明が書かれていたのだった。

6時頃になるとカメラを携えた人たちも徐々に集まり出す。
岩手県から来られたご夫婦もいた。
マスコミ関係のカメラマンもいた(秋田魁新報の記者さんともう1名。後日、朝日新聞に記事が掲載されていたのでその関係だろう)。
そのなかの、地元在住と思しき方と言葉を交わす。
なんでもこの行事は年々参加者が少なくなっており、昨年は3人しか裸参りをする人がいなかったらしい。
今年は何人ぐらい?と思い、神社の方に伺うと2人だそうだ。
「えっ?たった2人ですか?」と思わず聞き返してしまった。
例年は4~5人ぐらいとのこと
「去年は3人で今年は2人なら、来年は1人かな?」と皆で話したが、現実的にそうなる可能性がある。

この集落には、二井山神楽という伝統芸能があったのだが、5年ほど前に後継者不在を理由に活動を休止してしまっている。
お柴灯については参拝者が途絶えない限り続けられるはずなので消えてしまう心配はそれほどないものの、裸参りについてはその限りではない。
何だか寂しい気持ちになってしまう。
因みに山形県鶴岡市にある湯殿山神社本宮は写真撮影禁止、参拝は土足厳禁、御神体については「問うな語るな」という厳格な決まりがあることで知られているが、二井山湯殿山神社においては特段そのようなことはなかった。

境内で焚かれている篝火
裸参り参拝者はお参りが終わった後、腰に巻いたしめ縄をこの篝火で焚いていた。
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裸参りの人たちが水垢離をするための桶
大きなほうの桶で井戸から水を汲み、小さいほうの2つの桶に水を移す。
そして、2つの桶ともにかけるのがならわしらしい。
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水を汲む井戸
年季が入っているのが分かる。
神社の方いわく「汲んだばかりの水だと冷たすぎるんで、早目に汲んでおいてしばらく置いておく」のだそうだ。
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そして6時半を過ぎたあたりで、参拝の人に紛れて裸参りの若い男性が奥様とお子さんを連れて現れた。
カメラマンが一斉に撮影スタンバイにかかる。
そして男性が水垢離をする。

いくら雪が少ないとは言え、寒中の水垢離が冷たくないわけはない。
それでも男性は平然と水垢離を行い、お参りをしたのだった。
裸参りというと、何十人という男性が「ジョヤサ!」か「エッサホイサ!」かは知らないが、掛け声を合わせて行進をするイメージがあったので、この静けさは意外だった。
先日の一日市裸参りにおける水垢離が賑やかで楽しげな雰囲気だったのとも対照的で、こちらのほうは神聖で儀式的側面が強いことを窺い知ることができる。

裸参りは残りあと1名
なにせ普通の参拝客と同じように自らの時間の都合で裸参りを行うので、いつ来るのか分からない。
神社の鳥居付近に人影が見えると管理人含めたギャラリーは「裸参りが来たか?」と一斉に注目するが、普通の参拝客だとわかると「違ったねー」と笑い合うのが何回か続く。
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そして7時20分頃
2人目の裸参り参拝者の登場となる。
今度は少し年配の男性だ。

先の若い男性同様、粛々と水垢離をして神社の本堂に入っていく。
これで今年の裸参りは終了
それにしても裸参りをされた男性お2人ともに姿勢がよく、水垢離をする姿、お参りする姿の立ち居振る舞いが素晴らしかった。
裸参りというと、つい「勇壮」という形容詞を付けたくなってしまうが、こちらについて言えばその凛々しさが印象に残った。

参拝もあらかた終わったということだろう、柴灯祭も終了となる。
祭りの終わりに際して餅まきが行われるというので待機していたら、いきなり本堂の中で餅まきが始まった。
急いで中に上がる。
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本堂横には座敷の間もあり、こちらにもそれなりの数の人たちがいた。
「秋田の祭り・行事」には、祭りの世話をするお柴灯行人がいる、と書かれてあったが、この方々がお柴灯行人ということか。
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「餅まき」と呼ばれているが、餅だけでなくみかんやお菓子などもまかれる。

神社のなかの様子
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8時前に餅まきも終わり、参拝客、カメラマンが帰路につく。
皆、餅やお菓子を手に笑顔になっている。
管理人も出羽グリーンロードを北上し、秋田市へ戻った。

管理人が思い描いていたような、小さいながらも暖かみのある行事だった。
そして、裸参り参拝のお二人からは凛とした清々しさが伝わってきた。
願わくば来年は裸参りをする人がもう少し増えて欲しい。
今は集落外の人でも受け入れるようになったらしいので、たくさんの人にこの行事の良さと湯殿山神社の素晴らしさを知ってもらい、ささやかながら地元の人たちのかけがえのない行事として続いてもらいたい。


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