川尻総社神社例祭(宵宮)

2017年5月18日
5月は神田祭、浅草三社祭(ともに東京都)や博多どんたく(福岡)など、大きな祭りが全国各地で行われる。
ここ秋田においては大きな規模の祭りはないものの、神社の春季例祭とそれに伴う行事が数々開かれており、爽やかな春(というか初夏)を彩っている。
事実、5月に入って取り上げたのは新山神社祭典と地口絵灯籠祭り(勝平神社例祭)ということで、2つとも神社のお祭りだった。
そして今回取り上げるのも同様に神社のお祭りである。

川尻総社神社のお祭りは有名なんですか?と疑問を持つ方もいるだろうから、最初に答えておくと別に有名ではない。
このブログでは基本的に「伝統と特色のある」秋田のお祭りを扱うことにしている。
であれば巫女の舞、玉串奉奠、雅楽などはどの神社でも見られる神事だし、歌謡ショー、カラオケ大会などは伝統に欠けるし、プラスアルファで伝統と特色のある行事が行われないかぎりは記事にすることはない。
で、川尻総社神社例祭について言えば、まさにそのプラスアルファが見当たらない。
それが、なにゆえ今回そのような神社の祭りを取り上げることにしたのかといえば、家から近いという理由ともう一つ、あの「西馬音内盆踊り」が登場するからだ!
神事の一つとしてではなく、どちらかといえば客演に近い形の参加とはなるが、家の近所で鑑賞できるのであれば行かないなどという選択肢はない。
踊りは5月18日の宵宮で披露されるという。
あの優雅でミステリアスな踊りを、緑豊かな神社境内で鑑賞しながら会社帰りのひとときを過ごす。楽しみだなあ。

当日
宵宮は6時から始まるが、西馬音内盆踊りは7時15分に登場予定
会社から家に戻って車を置いて神社まで徒歩で移動、6時45分には到着した。
神社のすぐ近くを通る川尻総社通り

こちらが神社の正面

鳥居をくぐり、境内に入る。
参道には祭り屋台が並んでいる。


子供たち、大人たち皆がキラキラと目を輝かせて屋台に夢中になっている。
日本人の原風景とでも言える光景
もう大人になった人たちも、このなかに身を投じるとお祭りに高揚した小さかった頃の記憶が蘇るのだと思う。

参道脇のテントでは「まつりのいけばな展」としていけばな小原流秋田支部の作品が飾られている。
小原流は、池坊、草月流と並んで生け花三大流派とのこと(生け花のことは全く知りませんが、ネットでそのように書いていました。)
口の広い皿のような器に生花を飾る技法が特徴の、比較的新しい流派らしい。
言われてみると古典的な生け花ではなく、何だかモダンなイメージだ。

こちらが川尻総社神社本殿


川尻総社神社は神亀元年(724年)聖武天皇の時代に創建されたらしい。
724年。平城京とかの時代である。
あまりに古過ぎて後世の人が威厳を高めるために盛ってるんじゃないか?とも思ってしまう。
それはいいとして、かなり古い歴史のある神社であることは相違ないだろう。

そして、いましたいました。踊り手さんたち
西馬音内盆踊りサークル「東南北会」の皆さんだ。
端縫い衣装、彦三頭巾の踊り手たちで総勢20人ほど
「東南北会」のネーミングは、「西がない」=「にしもない」という洒落から来ている。

このとおり篝火も用意されているが、これは盆踊り用のものではない。

盆踊りで使用された篝火はこんなかんじです。
電球の回りを赤いビニールでくるんだ簡易型の篝火。工夫の跡が感じられて、これはこれでよい。

神社に到着した頃はまだ明るかったが、いいかんじで薄暗くなってきた。

本殿の中で執り行われていた神事(お祓いかな?)が終わり、神職の方々が退出する。

そして神職の方々が本殿を退出するのと同時に盆踊りの開始
「待ってました!」というかんじだ。
西馬音内盆踊りは必ずこの「音頭」から始まる。
それも最初の地口は「♪時勢はどうでも世間はなんでも踊りこ踊たんせ 日本開闢天の岩戸も踊りで夜が明けた」と決まっている。


後ろで鳴っているお囃子は本物ではなく、音源を用いたものだ。
同じく秋田市内の、八橋本町にある日吉八幡神社のお祭りでも西馬音内盆踊りが披露されることがあるが、そちらのほうには本場羽後町の踊り手とお囃子方が参加するため、生のお囃子が奏でられるらしい。

続いては「がんけ」


8月16日~18日に羽後町西馬音内本町で行われる本番においては、がんけの際にスムーズに回転できるように地面に砂が撒かれるが、今日は撒かれなかった。
とはいえ、踊り手たちは上手にくるっと回っており、何一つ違和感を感じさせない優雅な踊りを披露していた。

音頭とがんけを踊ったのち、見物客からの熱烈なアンコールに応える形で再度音頭とがんけを披露
こうして約20分ほどの盆踊りは終了した。
今日踊りを披露した東南北会は秋田市、能代市の西馬音内盆踊りを愛する人たちが立ち上げたサークルであり、伝統に則った正統的な踊りを披露してくれた。
盆踊り本番にももちろん登場するし、これからも秋田市内外のいろんな場所で踊りを拝見する機会があると思うので楽しみにしたいと思う。

お目当ての西馬音内盆踊りも終わったし、境内を少しぶらついてから帰ろう‥と考えていたところ、同じく盆踊り鑑賞をしていた近所のご婦人としばらく話し込んだ。
そのご婦人は、朝5時に総社神社に足を運んで早朝の澄んだ空気を楽しんでいる、という。
そしてご趣味である神社巡りのこと、実家のある青森県のお祭りのこと、東北の観光地のことなどたくさん話をさせていただいた。
30~40分ほど話し込んだが、思いがけず楽しい時間を過ごさせてもらった。

その後境内をそぞろ歩き。社務所に掲げられている絵馬

あらためて本殿を撮影

時刻は8時半
かなり人が減ってきた。

そして本殿脇の開けた場所を通り、家路に着いた。
緑が多く、先ほどのご婦人が仰っていたように気持ちのいい場所だ。

ということで川尻総社神社の厳かでありながら、気持ちのいい空間を楽しむことができた。
冒頭に記したように何らかの特徴あるお祭り・行事をフォローすることを目的とした当ブログではあるが、今日のような日本のどこにでもあるお祭りもなかなかノスタルジックでいいものだと思う。
今密かに神社巡りがブームになっているというし、お祭り云々を抜きにしても魅力ある場所であることは間違いない。
そして西馬音内盆踊り
西馬音内大好きの管理人ではあるが、実は「この盆踊りを見るなら8月16~18日の本番に限るぜ!」などと思い込んでいて、それ以外の場所での披露にあまり興味を払っていなかったのだが、今日の踊りは本番とは違った静けさと流麗さを湛えていてとても印象に残った。
神社の雰囲気ともよく合っていたし、このかんじは本番では味わえないと思う。
東南北会の皆さんは本番に向けてこれから稽古を重ねると思うが、そのときも素敵な踊りを披露してくれることを期待して次の言葉を残したい。
「西馬音内でお会いしましょう!」


“川尻総社神社例祭(宵宮)” への2件の返信

  1. 西馬音内の盆踊りがメジャーになる事はとても良い事です。山形の花笠踊りも、元は新庄市のお祭りだったとか、、、?。本場の西馬音内では、踊りについての論争が有るとか聞いています。
    観光客の受けが良い『日本舞踊的なしなやかな踊り』vs『昔ながらの伝統の踊り』、何が違うのか分かりませんが、要約すると『踊りの中で止める動作が有るか?それとも流れる様に踊るのか?』の様です、、、私は踊れませんので良く分かりません、、、笑。

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます!
      西馬音内盆踊りは今や全国規模の人気なのでいろいろたいへんそうですね。
      たしかに8/16~18の本番に行くと、やけにしなをつくる、まさしく日本舞踊っぽい踊り手や、やたら動きにメリハリがついていて妙にダイナミックな踊り手(男踊りならそれでいいのでしょうが)など、どうみても正統派の西馬音内ではない踊り手が見受けられます。
      ただ、大多数は西馬音内の伝統を守ろうという意識できちんと踊っていますし、心配には及ばないと個人的には考えています。
      あとは鑑賞する側の審美眼さえあれば大丈夫だと思いますが、観客もこれまた全国から集まっているので、どれが正統で、どれが亜流の踊りなのか分からない人が多いんですよね。
      そう言った意味では、保存会や羽後町観光協会や各種団体が正統的な西馬音内盆踊りはこうです!ということをきちんと発信していくことが必要なのかな、と思います。

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