2019年4月17日
長い冬を終えてようやく待ちに待った春を迎えた。
これから雪道の心配などせずに、思う存分いろんな伝統行事に足を伸ばせる!と喜ぶ反面、この時期それほど行事は多くない。
そんな中、1年前から注目していた大館市のちょっと風変わりなお祭りに出かけた。
老犬神社例大祭 - 老犬神社ってなんだ?年老いた犬が祀られているのか?とお思いの貴方。そのとおりでございます。
ちょうど1年前の4月17日は大仙市の白山神社宮回り行事を鑑賞した。
家に帰り、その日の県内ニュースを見ていると「今日大館市の老犬神社で春の例大祭が行われました」みたいなナレーションとともに大館市葛原にある老犬神社でお祭りが行われ、たくさんの秋田犬が集結した様子が放送されていた。
何だこれ!面白そうじゃん!ということで1年前から、旧秋田藩と旧南部藩が境を接するあたりにある、この神社のお祭りに注目し、晴れてこの日を迎えたわけだ。
この日は平日だったが、用意周到に有休を取得し備える。
当日
例大祭は11時から始まる。
自宅を出発し、国道7号線~国道285号線~国道103号線とひたすら北東の方向へと車を走らせる。
国道103号線を通るたびに、神社の場所を指し示す看板があったのをチェックしていたので全く迷うことはなかった。
103号線を曲がって少し入り組んだ場所ではあったが、順路を示す看板がこまめに設置されていたので、無事神社にたどり着くことができた。
参道はちょっとした登山道みたい
結構な急登で思わず息を切らしそうになったが、ちょっとした運動だと思えばそれもまた一興。この参道と並行して車で乗り入れられる路もしっかり整備されているので、高齢の方・体力に自信のない方はそちらを使ってもいいかもしれない。
本殿に到着。時刻は10時55分、ギリギリお祭りの開始に間に合った。
入口でいただいた神社のパンフレットには「老犬神社由来記」として「この神社は大館市葛原(旧南部領土土深井に接した旧秋田領の最東端)の山腹にあり、社殿は昭和11年7月18日未明の火災で消失後改築したものである」と記されている。
また、マタギの祖とされる万治万三郎の伝説とも関わりがあるようで、清和天皇から下賜された山立家系の巻物と狩猟の免状証文が保存されているとのこと
中へ入る。
おおよそ40人ぐらいは集まっているだろうか。
11時から始まる神事を前にやや緊張感が感じられる。
近隣の方々、神社の氏子以外にも県議会議員、大館市役所職員、秋田犬保存会代表、お隣鹿角市からも十和田市民センター所長や鹿角民話の会会長など、いろんな顔ぶれが集まっていた。
また、秋田魁新報、ABS秋田放送の記者さんも取材に訪れていた。
神事が始まる。厳かな雰囲気でございます。
清めの儀礼「修祓」から祝詞奏上へ
「老犬神社」というぐらいなので犬にまつわる何か特別な儀礼でもあるのか、と思うが別にそんなことはない。
一般の神社と同じように粛々と神事が執り行われる。
犬の古い写真や、犬の姿を描いた奉納額で壁が埋められている。
この神社の御神体は「忠犬シロ」であり、そのご利益に与ろうと秋田県内のみならず全国から愛犬家が集まるそうだ。
そして忠犬シロとはいかなる犬か、についてはこちら(←大館市HP)の記事をお読みいただきたい。
訴え叶わず無念の最期を遂げる主人定六、定六を救うために奔走するシロが織り成す悲劇のストーリーと、その伝説をベースにシロの怨念を鎮めるために創建された老犬神社。
悲しい物語ではあるが、ここにいると定六とシロに対する人々の畏敬の念が実にダイレクトに伝わってくる。
玉串奉納
粛々と神事が行われる。
そんな中でも外にワンちゃんが来ているようで、時折「ワン!」とか「クウ~ン」とか聞こえてくるのが面白い。
宮司さんに教えてもらったところによると、以前は年間の参拝客数は5~60人ぐらいだったが、近年は秋田犬ブームの影響で年間5~600人ぐらいに増えたとのこと。
外国からの参拝客もかなり増えたようで、この盛況ぶりはしばらく続きそうだ。
なお、来年令和2年は老犬神社の創建400年にあたるそうで、これまたたくさんの愛犬家たちがこの神社を訪れることになるのだろう。
地元の小学生たちの作った神社の案内。手作りの良さに溢れている。
大館市の小学生のみならず、鹿角市の小学生たちからも絵馬が寄せられている。
先に書いたようにこの神社は旧秋田藩、旧南部藩の境目ぐらいにあるため、両市の市民からたくさんの寄進がされているが、ベースには犬を大切にするとか敬うとかの土地柄があるような気がする。
なお、このあたりには「木次谷」姓の方がとても多いことにも気づいた。
祝電の披露に続いて一拝を以て、1時間弱に渡って行われた神事が終了。これから直会へ移行
参拝記念スタンプも用意されています。
民家から離れた場所ということもあり、これまで電気が通っていなかったが、ようやく昨年敷設されたそうだ。
これからもたくさんの参拝客を集めるに違いないと思う。
外に出てみると、いました。ワンちゃんでございます。ゴールデン・レトリーバーのララちゃん(2歳4ヶ月・メス)
トイプードルもいました。
昨年見たニュースでは数頭の秋田犬がこのお祭りに駆けつけてたいそう賑やかな様子だったものの、今年確認できたのはこの2頭のみ
昨年は秋田犬人気と併せ戌年ということもあり、秋田犬保存会の協力のもと大集合の様相だったが、今年は大館市観光交流施設「秋田犬の里」のプレオープン初日と重なったこともあり、秋田犬の参加はなかったようだ。来年以降に賑わいに期待したい。
ひとしきり例大祭の様子を鑑賞できたし‥ということで老犬神社をあとにする。その足で向かったのは「秋田犬の里」(←せっかく大館まで来たのだから、ということで)こちらは勿論たくさんの人で賑わっていました。
特に目立った奉納行事がある訳ではないが、忠犬シロの功徳にあやかりたいということで愛犬家の集まるかなりユニークな神社であり、全国・海外から参拝客が集まるのも納得がいくというものだ。
そこにはシロに寄せる思いや、弔う気持ちなどがベースにある訳で、この地域の人たちが犬や動物に慈愛をかける姿が偲ばれる、実に素朴なお祭り・神社だと言えよう(本来はシロの祟りを封じ込めるための観音堂だったらしいが)。
秋田犬が大注目を浴びる一方で、このような小さな祭りがあることをよりたくさんの人に知って欲しいと思う。