2018年9月16日
今回取り上げるのは、2年前にもおじゃました本荘八幡神社祭典
あのときは一番の見所とされる大名行列を見に行ったようなものだが、ブログを始めたばかりでお祭りに関する知識が皆無で、神社の祭礼として大名行列が行われるということが理解できず、現地の年配男性に「これはお祭りなんですか?大名行列なんですか?」などとかなり間抜けな質問していたのを思い出す。
ま、今もほとんど変わってないんですけどね。
前回鑑賞したのは宵宮だったが、今回は本祭。12時半に自宅を出発し、由利本荘市へ向かう。1時間ちょっとで現地に到着し、会場となる大通り近くに車を止めて歩いて向かう。
行事の概要を「由利本荘市 民俗芸能と祭りガイドブック」から抜粋すると「本荘八幡神社の祭礼は、江戸時代から350年以上も続く伝統的な祭りで、五穀豊穣や家内安全を祈願し、日役町獅子踊や中横町神楽、工夫を凝らした山車行列など、総勢500人もが行列に参加します」ということで、八幡神社への奉納のため各種練り物が街中を練り歩く賑やかさがこの祭りの特徴といえるだろう。
大通りに着く前から音が鳴り響いていたが、到着するとこんなかんじ
12時に八幡神社を出発した行列は谷地町~駅前通り~本町通り~大門街を経て、今はここ本荘(地名で言うと由利本荘市本荘となるみたいです)で小休止中。お囃子を鳴らす山車もあれば、のんびりと談笑する町内もありリラックスムード
各丁内の山車を一通り鑑賞。こちらは田町丁内
大門掛丁内。テーマは「ジェラシックワールド」だそうです。迫力あります!
本町通り丁内
勇壮な武者人形を乗せた山車もあれば、子供たちが大好きそうなアニメや映画のキャラクターを飾った山車、さらには踊り屋台まであり、バリエーションがかなり豊か
管理人が確認したところでは、東町丁内を先頭に美倉町丁内、田町丁内、猟師町・後町丁内、肴町丁内、大門掛丁内、本町通り丁内と続いていたようだ。
なお、前日の宵宮で山車を披露したのは田町丁内、美倉町丁内、大門街丁内、肴町丁内、本町通り丁内、後町丁内と、後述する中横町丁内とのことだった。おそらく宵宮では各町内を巡行し、本祭では行列に加わる形での合同運行となっているはずだ。
こちらは中横町丁内
山車ではなく、中横町が曳くのは「神楽屋台」
管理人は同じ由利本荘市内で石脇神楽、にかほ市象潟町横岡大森で大森代々神楽などを鑑賞した経験があるが、ここでいう神楽とはそれらと同じ太神楽と呼ばれる種類のものらしい。
そして特筆すべきは通常見られるように舞を見せるのではなく、獅子頭を小型屋台に置いて巡行するスタイルとなっている点で、これに太鼓と笛によるお囃子がついて、中横町神楽となるわけだ。
「本荘市史 文化・民俗編」では、太神楽を悪魔祓いや五穀豊穣を祈願する芸能としたうえで「全県に分布するが、由利地方には特に多い。これは伊勢講に由来するといわれている」と説明している。
中横町神楽のさらに後方には神輿が
「本荘市史」には行列の順番が記されており、それによると先頭の先手から最後尾のお初穂に至るまで実に21もの練り物、役割を担った人たちで構成されるそうだ。
10番目となる中横町神楽のあとには⑪左右大臣(練子)、⑫後傘鉾、⑬錦御旗、⑭白幡、⑮巫女舞、⑯禰宜、⑰宿亭主と続いて、18番目に神輿となっていた(因みに神輿のあとは⑲宮司、⑳御共と続いて最後が御初穂となっていました)。
山車が動き出した。この後山車は桶屋町を通り、路地へと入っていく。
細い路地を山車がぐいぐい進んでいく。
なお、今年は羽後本荘駅前を最初に通過する東廻りと呼ばれるルートをとったが、来年は西廻りとなり、今年のルートを逆に進むことになる。東廻り⇔西廻りは隔年で入れ替わる仕組みだ。
また、この祭典は、かつては本荘八町と呼ばれる古い町内(油小路・上横町、田町、肴町、中町、大町、中横町、後町、猟師町・後町、鍛冶町・桶屋町)のみで行われていたものが、昭和32年から本町通り、大門街、美倉町、東町、駅前通りの5町内が加わり、現在に至っている。
由利本荘市街地の発展と歩みを合わせるように、祭典の規模が拡大したことが分かる。
日役町(ひきじまち)に到着。ちょうどいいタイミングで日役町獅子踊が披露されていた。
雄獅子、雌獅子、中獅子の三頭による、家内安全・悪魔退散の舞
平成元年に秋田県無形民俗文化財に指定された伝統ある舞であるとともに、由利本荘市においてはたいへん珍しい芸能でもあり、興味深く見させてもらった。
獅子踊は猟師町へ移動
日役町獅子踊は悪疫退散の守護神として旧本荘藩主の庇護を受け、この地で大事に継承されてきた芸能だ。
「本荘市史」によれば、八幡神社祭典当日は日役町町内の各家庭の悪魔祓いを行い、正午から行列に加わり、神社に戻った際には神社を3度周り踊るらしい。
今回登場する数ある練り物の中でも大名行列と並ぶほどの存在感を放っていて、事実「秋田の祭り・行事」にも八幡神社祭典の項がない代わりに、日役町獅子踊の項で八幡神社祭典について説明しているぐらいだ。
豪勢な山車に比べると一見地味で目立たない気もするが、その希少さはピカイチなワケです。
また、踊りは①寄せ、②独り立ち、③回れや車、④恋慕、⑤大霧、⑥志ヶ崎、⑦岡崎、⑧花踊の計8演目で構成されており、これらの演目を通して舞うことで人間の一生を表現するらしい。
猟師町から後町を通過して再度大通りへと出る。
そして日役町獅子踊の前を進んでいた大名行列が姿を現します。
2年前に鑑賞した大名行列は正確には「足ならし」であり、本日のほうは本番(と言っていいものかよく分からないが)にあたる。
その由来について、「本荘市史」には「廃藩置県により本荘藩がなくなる時、大名駕籠を殿様から商人町の油小路・上横町に下賜されたのが始まりという。そして、足軽町であった赤沼町へ伴奴等の役割を依頼したものが現在まで続いているといわれる」と記されている。
ということで殿様には油小路、上横町両町内の子供が交互に選ばれ、伴奴たちは赤沼町の人たちで構成されることになっているそうだ。
また、大名行列は①挟箱を担いだ二人、②槍二人、③長柄槍(小鳥毛)二人、④槍(大鳥毛)一人、⑤殿様駕籠担ぎ二人、⑥お徒士(上横町、油小路の子供たち)で編成されていて、さらには各役割の交代要員も随行するため、結構な大所帯での移動となる。
この行列の前を横切ったり、二階から見下ろすことは固く禁じられている。
沿道には多くの観客がいて賑わっているのはその通りなのだが、山車巡行の賑やかさとは対照的に、黙々と奴振りを見せる行列へじっと視線が注がれるかんじになる。
奴たちは「エイ エイサレ、ヨエサ」、「エイヤト、マカサ」といった謎の掛け声を上げて、ゆっくりゆっくり進む。
「本荘市史」を読むと「永 永採 余栄」「永弥余 万果盛」「永弥余 万果盛」「呼手を御せ嬬」といった掛け声であり、読み方はそれぞれ「エイ エイサレ ヨエサ」「エイヤト マカサ」「エイヤト マカサ」「コテをオントせコウシ」となるらしい。ただ、やはり意味は分からない。
大名行列は2012年に一度だけ休止したものの、その後保存会が結成されて祭典の目玉として途切れることなくお披露目されている。
2年前に足ならしを鑑賞した際には、直前にまさかの土砂降りになってしまった。
それでも、夜の雨上がりの路面に周囲の建物の明かりが反射するさまが思いのほか綺麗だったのがなぜか印象に残った。
今日の気持ち良い秋空の下、厳粛ながらどこか長閑な奴の掛け声が響く雰囲気は、まさにお祭り日和に相応しい雰囲気で、こちらも2年前に劣らず素晴らしい。
大名行列が過ぎたあと大通りに残っていると、先ほどの日役町獅子踊が通過していった。
管理人は何も気づかなかったが、地元の年配女性から伺ったところによると、今年は大名行列の出発が早かったらしく、行列がちょっと間延びしているそうだ。「いつもならちょうど良いタイミングで出し物が通るんだけどね~」とのこと
日役町獅子踊に続いて、山車の先頭を務める東町が登場
こちらも大門掛丁内と同様に「ジェラシックワールド」をテーマとした山車なのだが、やたらデカイ!高い!その恐ろしい鎌首をあげて空に向かって吠えているようにも見える。
こんなでっかい山車で運行に問題ないか?などと考えていたら、市街地には電線が張り巡らされていないんでしたね。
以前は由利本荘市街へ来るたび、「何か町並みがすっきりしているなあ」などと思っていたのだが、ようやく何年か前に地中化されていることに気づいたときはちょっと感動したことを思い出した。
この後はおそらく機関車トーマスの美倉町が登場するはずだが、管理人はこの後、別の行事鑑賞予定があったので由利本荘をあとにした。
正味1時間ちょっとの駆け足の鑑賞とはなったが、豪華かつユニークな山車、伝統を伝えてくれる日役町獅子踊、そして厳粛さ漂う大名行列を見ることができて十分満足だ。
また、今日は祭典の練り物を隅から隅まで見ようと移動しながらの鑑賞となったが、一箇所に留まっておしゃべりしたり、飲み物を摂ったりしつつ、行列を待つ観客が大半であり、9月の午後ののんびりした空気にもってこいのお祭りだと思う。
由利本荘市街の瀟洒な街並みを舞台に歴史絵巻が展開されるかのような素敵な祭りであり、これからもずっと続いてほしい。