岩玉神社の山車

2017年1月28日
昨年11月30日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が日本の18府県33件の「山・鉾・屋台行事」を無形文化遺産に登録すること決めたのは記憶に新しい。
秋田からは「角館祭りのやま行事」、「土崎神明社祭の曳山行事」、「花輪祭の屋台行事」の3件が登録、1月15日には鹿角市民俗芸能フェスティバルにその3つの行事が集結し、無形文化遺産登録を祝うとともに賑やかな祭囃子を披露した。
ということで今、山・鉾・屋台といった山車行事が来てるのだ。

そのような理由でもないが、この日秋田万歳鑑賞に続いて、冬には珍しい山車行事を見に行くことにした。
「岩玉神社の山車」
秋田市内の行事ではあるものの、地元の方以外はほとんど知らないだろう。
かくいう管理人も「秋田の祭り・行事」に載っていなかったら絶対にスルーしていた。
開催地は旧河辺郡岩見の鍛冶屋敷地区
行ったことはないが、すぐ近くを県道28号線が走っているのでおそらく近くまで行ったことがあるはずだ。
秋田市内からは40分ほどで着く。

山車行事といえば「車」の字が入るぐらいなので、山車を引っ張るなどして車輪で進むのが普通だろう。
が、この岩玉神社の山車には車輪がなく、代わりに足元が橇になっているらしい。
橇つきの山車とは聞いたことがないが、他にあるのだろうか。
北海道あたりにはありそうなイメージだが‥

さて当日
3時40分に秋田万歳が終演、途中休憩を入れながら目的地である鍛冶屋敷地区を目指す。
秋田道を跨いで県道28号線を南下、4時40分には現地に到着した。
近所の岩見温泉駐車場に車を停めて歩いて鍛冶屋敷地区に移動する。

鍛冶屋敷地区に向かう途中の外川原地区の商店街
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沈みかける夕日
12月に比べてかなり日が伸びてきているのがわかる。
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地区のすぐそばを流れる岩見川
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ここが岩玉神社
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鍛冶屋敷地区に入る。
どのルートを進むのか知らないが、おそらく地区のメインストリートであるここを通るのだろう。
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山車は5時に出発予定だが、どこにいるか分からない。
とりあえず山車を見つけるため通りを歩く。
屋外で行事の準備をしているヤングマダム風女性3人組がいたので尋ねてみる。
この先の地区の南側で待機中らしい。
いずれ待っていればこのへんに来るということだ。

と、ここで巡回係の方が来て「もうすぐ山車が通りかかるからミニかまくらの火を点けてくれ」との依頼が。
急ピッチで付ける必要があるため、管理人も少し手伝う。
山車の到来前に何とか点けることができた。
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すると遠くからお囃子の音が聞こえる。
山車の登場だ。
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「秋田の祭り・行事」には太鼓・笛・三味線のお囃子や三吉節などを歌いながら行進、と書いてあったが、太鼓と鉦の音色だけが聞こえる。
聞くところによると以前はたしかに笛を吹いたりしていたが、今はやっていないそうだ。
で、足元を見るとたしかに橇を履いている。

2~30人ほどで引いているが、思っていた以上に幅広い年代の人たちが集まっている。
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橇のアップ。本来は馬橇として使われていたらしい。
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山車の前方には今年の干支である酉の額が飾られている。
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ここで小休止
山車の上のお囃子方に差し入れ

山車を引っ張っている人たちや、周囲の人たちにも差し入れが配られる。
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嬉しいことに管理人にも飲み物を差し入れていただいた。
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冬のこの時期になぜ山車行事なのか?を何人かの方に伺ったが、なぜかな?と皆不思議がっていた。
管理人が注目するのは来訪神行事との類似性である。
昨年不幸があったお宅の前を山車が通過する際にお囃子が演奏を止めるのだ。
この点は、喪中のお宅への訪問を行わない来訪神行事と何やら共通している。
が、周辺地域の中でこの地区でしか行われない行事であり、文献などにその由来を見つけることはできない。

休憩中のお囃子方
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あたりが暗くなり、ミニかまくらの灯が綺麗に映える。
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小休止が終わって再出発、囃子方の演奏が熱を帯びる。
法螺貝の音も気分を高めてくれる。
雪上を運行するだけに、少々ドリフト走行気味に前進する所もある。

昨年もそうだったが、今年も雪が少ない。
山車は橇で運行するため、路上が雪に覆われていない場合には雪を撒いて何とか運行するのだそうだ。
また、一昨年は地区会長さんのお宅に不幸があったため、開催しなかったらしい。
地区単独で行われる行事だけに、いろんな要因で開催の可否が左右されてしまう。
山車行事と聞くと、たくさんの地区が独自の山車を運行して他の地区の山車とぶつけ合いをする、といった派手な展開をついイメージしてしまうが、そのような思い込みとは無縁の山車行事もあるということを知った。

そして岩玉神社に入る。
空がまだ若干明るいのがお分かりになるだろうか。

境内に作られたミニかまくら
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奉納の様子
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さて、このあとはどのルートを運行するのか、と地区の方に尋ねると「これで終わりだよ」とのこと
時間にすると40分弱の運行が終わり、したがって行事も終わり
つい「短いなあ‥」と思ってしまったが、2日間かけて運行される土崎港まつりや花輪ばやしのイメージに管理人が引っ張られ過ぎなだけであって、昔からこの地区はこのスタイルなのだ。

神社の境内で早速解体される山車
紅白の垂れ幕の中には杉の葉があしらわれている。
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行事に参加した人たちは地区の公民館に集って宴会の支度にかかる。
管理人は沿道に作られたミニかまくらを眺めながら、車を停めた岩見温泉駐車場を目指す。
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そして駐車場に到着
1日に2つの行事を鑑賞、たっぷりの充実感と少しだけの疲労感を感じながら帰路に着いたのだった。

岩玉神社での奉納の際に地元の83歳になる男性の方としばらく話をした。
小さい頃から慣れ親しんだ行事だからこれからも続いて欲しいけど、地域には若い人が少ないんでね‥と少し先行きが心配そうなご様子だった。
また、帰りに岩見温泉駐車場に向かう途中で、外川原地区の年配の男性の方とも話をした。
その方は「このへんは秋田市内から近いんで、若い人たちはみんな車で秋田市内に仕事に出てしまう。なんで、日中は過疎の村みたいなもんだよ」と仰っていた。
秋田市内の地区と言えども人口減、高齢化の影響がすでに現出しつつあるのだ。
そんな中でこの小さい行事を存続させるのはたいへんなはずである。
周辺地区に同様の行事が全く見られず、この地区だけに継承されるちょっと不思議なこの山車行事を、秋田市民、秋田県民にもっと知ってほしいと願うのだった。


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