山内番楽/向達子番楽

2017年5月20日
先の記事、日吉神社例祭 山王様の嫁見祭り鑑賞を途中で切り上げてまでハシゴした行事を今回紹介したい。
タイトルを「山内番楽/向達子番楽」としているが、五城目町にある五城目神明社の祭礼の宵宮に行われる「番楽競演会」がそれだ。
秋田が誇る由緒ある伝統芸能「番楽」に興味を持ち始めた管理人にとっては持ってこいの行事であるとともに、その伝統芸能が由緒正しい神社の境内で鑑賞できるというのだからこれは見なければならない。
かくして能代⇒五城目のちょっと無茶なハシゴ鑑賞を決定したのだった。

実のところ、お祭りのハシゴはあまり好きではない。
祭りのあとの余韻というか、終わったあとの少々寂しくなるかんじまで含めて祭り・行事鑑賞だと思うし、最初の祭りを見ている最中に次の祭りのことを気にするとかやっぱり失礼な話だ。
なので本当は嫁見祭り、番楽競演会のどちらかに絞ればいいのだが、今回はその決断ができなかったし「どちらかを来年に回そう」ということもあまり考えなかった。
となれば致し方ない。嫁見祭りのハイライトである嫁見行列が終わり次第、ソッコーで五城目町へ移動して、7時開始の番楽競演会を観覧することに決めた。
ただし、自動車NAVIで調べたところ能代~五城目まで40分ほどらしいので、番楽競演会の初めの方は見ることができない。

さて当日
嫁見祭りのクライマックス、嫁見行列は6時45分に終了
その後すぐに車を出して国道101号~国道7号線を経由し、能代南ICから秋田道に乗り、五城目八郎潟ICで降りる。
ICを降りると約10分ほどで番楽競演会会場である五城目神明社へ到着
自動車NAVIで調べたとおり、ちょうど40分ほどで到着した。

駐車場に車を止めて、神社に歩いて向かう。
あたりはもう暗くなっているが、神社の方向から拍子木の高らかな音が響いており、期待感を煽る。
五城目神明社の鳥居。暗くて見えません。

鳥居をくぐると山道の両脇に提灯が飾られている。
ちょっと暗くなりすぎているが、もう少し早い時間であれば夕暮れ時の仄かな闇に提灯の明かりが浮かび、さぞかし良い雰囲気だったろう。

境内に到着
神社の外まで拍子木の音が聞こえていたように、演目が行われている真っ最中だった。

どうやら「向達子(むかいたっこ)番楽」が舞を披露している最中のようだ。
急いでムービーを取り出す。
向達子番楽についてはこちらの説明が分かり易い。

動画撮影に集中したため1枚の写真も撮らなかったが、この演目は「新舞(二番)」とのこと
ご覧いただいて分かるように武士舞となる。
なんでも向達子番楽は、この「新舞(二番)」から始まることになっているそうな
山内番楽における「露払」、本海獅子舞番楽における「神舞」と同じ位置づけだ。

進行係の方からプログラムを受け取る。
どうやら五城目の子供たちが舞った「露払」、「鞍馬」、「熊谷敦盛」は終わっていたようだ。
やはり見たかったなあとも思ったが、もとより最初から観覧できないのは織り込み済みだったし、3月にフォンテAKITAで鑑賞したときに子供たちの舞は観覧していたのでまあしょうがないか‥と諦めをつける。

続いては同じく向達子番楽の「夷(えびす)」
七福神の恵比寿様が鯛を釣り上げる舞だ。
ずいぶんとすっとぼけた顔の番楽面だが、結構長く使われているような質感がなんとなく感じられる。

番楽競演会が始まったのは昭和44年、今年で48回目の開催となる。
今回登場した山内番楽以外に中村番楽、恋地番楽など五城目を本拠とする番楽がこれまで舞を披露していたが、恋地番楽が途絶し、そしてつい最近中村番楽も途絶したという(一時的な休止状態の可能性もあります)。
そして今年初参加となる向達子番楽は、お隣三種町(旧山本町)の番楽だ。
町外の番楽との交流という面ではプラスになるのは確かだが、五城目町内の伝統ある番楽が消えていくのは本当に寂しい。

演目を鑑賞しながらあちこち移動して写真撮影


左手に釣竿、右手に扇子を持ち、鯛を釣り上げて舞を舞う。
おめでたい舞とのことで、テンポのよいお囃子と相まって明るさが伝わってくる。

向達子番楽を初めて鑑賞した。
県北方面の地域性に疎い管理人から見ると、五城目町と三種町はそれぞれ県央地域・県北地域と区分されるため、地域交流が図られていることが想像しづらいが、古くから文化的・人的交流があったのだろう。
今日の番楽競演会に三種町の番楽が登場するとは思わなかったので得をした気分だ。
三種町には他にも志戸橋番楽はじめいくつかの番楽があるようだが、活動の状況がなかなか伝わってこない。
プログラムに書かれている紹介によると、向達子番楽は一時期衰退したが、平成6年に保存会が結成され、現在は小・中学生も加えて活動継続中とのこと
そのうち三種町に行ってあらためて鑑賞したい。

境内は実に良い雰囲気だ。
伝統的な村祭りに通ずる、素朴で郷愁を掻き立てる情景だ。
そして番楽の舞われている舞台
五城目神明社本殿は1800年代に建造され、それから増改築をしながら今に至るらしいが、この舞台も歴史を感じさせる重厚さがある。
後日、日中に本殿と舞台(神楽殿)を撮影したのがこちら


また、番楽鑑賞会が開かれるのは神明社祭礼の宵宮だが、翌日の本祭では猿田彦の先導による大名行列、神輿渡御が見られる。

続いては地元五城目町の山内番楽の登場
先に書いたように、管理人は3月に秋田市内で一度鑑賞している。
ホームである、ここ五城目で舞を披露するのはやはり気合が入るだろう。
山内番楽についてはこちらがが詳しい。

まずは、山の神
この舞は五穀豊穣を祈る農民の舞らしい。
フォンテAKITAでは披露されなかった舞だ。
舞から刀舞へ移り、最後はヘギと呼ばれる四角い盆を持って、それを体の周りで回す。
その所作が見せ場となっており、観客の拍手を浴びていた。


種まきの所作が動きに加わっており、農民の舞であることが伝わってくる。
素朴かつ土の香りのする舞だが、番楽面はちょっと怪獣のようで怖い。


山の神というと山岳信仰などが想起されるが、ここで云う山の神は農繁期になると山から降りて収穫までを見届ける田の神ということらしい。
また、木樵や炭焼きのような山を仕事場とする職業からみた山の神とは文字通り、山を守護する神のことを指す。
信仰する者の職業により、姿を変える神ということがいえよう。

続いては本日最後の演目「曽我兄弟」
この演目はよく知られているように、曽我兄弟(祐成【すけなり】・時致【ときむね】)が父親の仇討ちをする物語だが、そのドラマチックなストーリー性が人気を博しており、能や歌舞伎などの伝統芸能においても題材となっている。

まずは曽我十郎の一人舞

初めての番楽鑑賞の際にも思ったのだが、武士舞(曽我兄弟は「剣舞」とも呼ばれる)の動きの素早さは相当な練習量がないと身につけられるものではない。
まあ、武士舞にかぎらず、どの種類の舞もかなりの運動量を強いられる訳で、若い人でないときちんと舞うことはできない。

続いては曽我五郎も加わっての二人舞


やはり武士舞はお囃子のテンポがいい。
そして時折入る掛け声、拍子木の甲高い打音など、笛は入らないもののその演奏だけでも十分に楽しめる。
今日のお囃子方は3月のフォンテAKITAの公演の時も演奏をしたそうだ。

つづいては刀舞を披露

こちらも2人の呼吸が合わないとうまく踊れない。
こともなげに踊っているように見えるが、このスピーディーな動きを続けるのはかなりたいへんだ。

曽我十郎は退出し、最後は曽我五郎の一人舞となる。


雄叫びとともに刀を頭上で回し、これで舞の終了となる。

3月にフォンテAKITAで「露払」と「鞍馬」は鑑賞済みなので、これに「山の神」、「曽我兄弟」を加えて4つの演目を鑑賞したことになる。
まだまだ番楽初心者の域を出ない管理人ではあるが、どうやら自分は武士舞が好みのようだ。
特に「曽我兄弟」のように、激しい動きとリズミカルなお囃子が揃った舞には思わず引き付けられてしまう。
今後の番楽鑑賞のためのポイントが見つけられたようでなんだか嬉しい。

「曽我兄弟」の終了と同時に番楽鑑賞会が終了となる。
観客はめいめい帰路につき、ガランとした雰囲気のなか、運営関係者の方々が舞台から番楽幕を外したり、照明を外したりと後片付けにかかる。

そして管理人も神社をあとにしました。

伝統ある2つの番楽を素敵な雰囲気の神社の境内で鑑賞できた。
能代から車をとばして五城目に駆けつけた甲斐があったというものだ。
秋田県内でも知名度がそれほど高くない行事ではあるが、この厳かな雰囲気の境内で伝統行事を鑑賞しながら土曜の夜を過ごすというのは、番楽に興味のない人でも、ある種の愉悦を感じるシチュエーションではないだろうか。
まさしく「ラグジュアリーな空間」なのだ。
そして何より番楽の素晴らしさ
今回披露された演目以外にも数々のレパートリーがある(と思う)訳で、その奥深さと、伝統に裏打ちされた舞は見るものを魅了する。
かなり前から、地域に脈々と息づいていた番楽の継承が年々難しくなってきていると言われているが、まずはその素晴らしさを知り、その価値を理解することが重要ではないだろうか。
来年、再来年、再々来年‥と、この番楽競演会がより多くの人にその良さを伝える場になって欲しいと思う。


2 Replies to “山内番楽/向達子番楽”

  1. 曽我兄弟と言えば『仇討』ですね。鎌倉時代の話でしょうか?それが地域の文化として残っている事が凄いですね〜❣️
    最初の武士舞の方、新人さんかな?踊りの途中で何回も深呼吸してましたね、、、超好感でした。今回も楽しく拝見しました。ありがとうございます

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます!
      曽我兄弟。「鞍馬」と並んで人気の演目のようです。
      ダイナミックな動きが目を引きますよね。
      向達子番楽はノーチェックでしたが、新舞、夷ともにとても興味深く観覧しました。
      是非1度鑑賞なさってはいかがでしょうか!

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