一日市盆踊り2018

2018年8月18日
前日に鑑賞した西馬音内盆踊りに続いて、今回は秋田県三大盆踊りのひとつ「一日市盆踊り」に出かけた。
昨年初めて鑑賞したが、参加型の盆踊りということもあり、県三大の他の2つに比べると格段に自由ではっちゃけた盆踊りで、あの明るい盛り上がりぶりを再び味わおうと今年は初日となる8月18日に八郎潟町行きを決定。
概要はこちらのHP(←あきたファン・ドッと・コムへリンクします)でご覧下さい。

当日
この日は夏の甲子園準々決勝 金足農業vs滋賀県の近江高校の試合があり、サヨナラツーランスクイズという離れ技が飛び出して金農が逆転勝ちを収めた日でもある。
こんな勝ち方、誰が予想してた!?管理人も金農の逆転勝利が決まった瞬間をTVでライブ鑑賞していたが、「おーーーーっ!!!」と叫んでしまった。
ということで夕方からのスポーツニュースで金農の試合をチェックし、勝利の余韻に浸ったまま19時すぎに自宅を出発して八郎潟町へと向かったのだった。

現地には1時間ほどで到着。えきまえ交流館はちパル駐車場へ車を止めて、会場となる一日市商店街へと進む。
今は子供の部が終了し、大人の部が始まるまでの間の休憩時間のはずだ。


通り沿いにならぶ提灯灯籠が美しい。
そのひとつひとつに公募により集められた俳句が書かれていて、こちらのほうも観客の目を楽しませてくれる。

賑やかになってきましたよ。

今年に入って2度八郎潟町の行事を訪れた。1月の一日市裸参り、5月の願人踊りである。
そのいずれもがここ一日市商店街を中心に行われた行事であり、管理人的には最早お馴染みの場所になりつつある。

先に進むにつれ、観客の数が増えてくる。
そして見えてまいりました!これが一日市盆踊りです!!


20時20分~の大人の部が始まっていたようだ。いま踊られているのは「キタサカ」
一日市盆踊りには3種類の踊り「デンデンヅク」「キタサカ」「サンカツ」があり、この3つの順番で繰り返し踊られる。
道路いっぱいに輪を作り、輪の中心に陣取るお囃子方の演奏に合わせて踊られるここの盆踊りは仮装盆踊りとしても知られていて、趣向を凝らした仮装姿で数多くの町内、職場単位の団体が参加するのも特色のひとつだ。

踊りの列に近づいてみる。


通りの端から端まで踊りの列が続いており、かなり壮観だ。
単に参加人数が多いだけであれば、場が荒れてグダグダなかんじになることもあるのだろうが、一糸乱れぬ振りで皆が踊っているのがスゴい。
これだけの踊り手を何人もの奏者が叩く太鼓の素晴らしい響きが扇動する。
優雅な西馬音内、幽玄の毛馬内とは全く違う、パワーと迫力で観客と踊り手の血を沸き立たせるハイパーな盆踊りだ。
2003年と時期は古いものの、北海道在住の鬼峠さんのブログにこの盆踊りを初めて目の当たりにした時の新鮮な驚きぶりが綴られている。

着物で踊る人たち(団体)も多い。


八郎潟町教育委員会が刊行した「一日市盆踊り調査報告書」に、大正15年の秋田魁新報の新聞記事で毎夜数千人の参加者がいた、と紹介されているとの記述がある。
数千人!!それも大正時代に!参加人数が多すぎて眉唾モンな気がしないでもないが、当時から大規模な踊りだったことに相違はないようだ。
同書には他にも「戦前までは、一日市の人が盆踊りに参加しないということが恥のように言われていた」とか「大正時代までは、盆踊りに参加しない家の前には墓を立てるなどの嫌がらせをした」とか、なんじゃそりゃ的な内容が盛りだくさんだ。
すごいというのを通り越してちょっとやり過ぎの感はあるが、県立図書館で読んだ「秋田・芸能伝承者昔語り」に書かれていた、踊りに長く携わった石井藤次郎さんの「どっちかと言えば、一日市は荒っぽいとこだす」の言葉通りのリアクションとも思える。

サンカツ


「一日市盆踊り調査報告書」によると、サンカツは以前は踊りの最後に1回だけ踊られていたらしい。
なのでサンカツを踊るときはすなわち盆踊りが終わる時であり、踊り手たちは寂しさを感じつつ踊ったそうだ。
また、そこそこ有名なエピソードだが、サンカツは大正時代に当地に滞在していた県外の宿泊客から伝えられ、いつの間にか盆踊りのレパートリーに追加されていたものだ。
ただ、何故最後に1回だけ踊られたのか、サンカツを伝えた旅人がどこの人だったのかなどは実はよくわかっていないそうだ。

ここで休憩に入る。

踊りが変わる際に数分間の休憩を入れるのが普通の盆踊りだが、一日市ではお囃子がノンストップで鳴らされるので踊りも同じように途切れることなく続けられる。
太鼓叩きは順次交替するし、踊り手は踊りながら飲み物を受取りながら、という形で完全ノンストップではないものの、このスタミナはとにかくスゴイ。
まさしくほんの一分一秒も惜しんで踊りに没頭したいという願望の表れなのか。

地元出身で、フリーモデルとして活躍されている小林真琴さん(右。左は妹さん)毎年この盆踊りに参加されているらしい。

ブログ掲載のお願いをしたところ「可愛く撮れてたら大丈夫ですよ!」と言ってくださった。大丈夫です!素材が良いのでヘタクソの管理人でもそれなりに撮れます。

休憩が終わり、踊りが再開


一日市を中心とした湖東地域には同じ系統の盆踊りが数多く見られる。
昨年の記事で紹介したようにそれらは「南利踊系」と称されていて、その分布は北は能代、南は秋田市にまで広がっており、非常に広範だ。
「秋田の盆踊り」と聞くと、まずは西馬音内、次に毛馬内、といったイメージが浮かんできてしまうが、紛れもなく一日市こそが秋田の王道の盆踊りだと思う。

デンデンヅク




惚れ惚れするぐらいの轟音を奏でる太鼓と、流麗でありながら明るさと逞しさを感じさせる笛がとにかく素晴らしい。
「秋田・芸能伝承者昔語り」には「西馬音内・毛馬内の優美繊細にくらべて、粗野といっていいくらい素朴闊達な踊り」としたうえで、石井藤次郎さんの話として「西馬音内とかあっちの方さ行けば踊りの選手などいて、ああいうふうにきれいに踊るども、一日市の盆踊りは昔から、見に行った人が仕事着のそのままで、誰でも加わって踊ると、そこが特徴だす」と紹介されている。
秋田県内に限らず全国いや全世界のどの地域にもお祭り・行事があり、お囃子の音色を聞くと興奮するというのはあるはずだが、デンデンヅクはアドレナリン大放出のスリリングなお囃子で、初めて耳にした人でも魂を揺さぶられるほどだと思う。

3つの踊りが繰り返される。


この盆踊りは踊り、仮装、雰囲気などの審査が行われ、入賞者には賞金が与えられることでも知られている。
表彰は個人・団体の別、年齢別などに細かくカテゴライズされていて、踊りの途中から審査員が輪の中で採点表を片手にかなり険しい表情で審査をしている。
かつては近隣の地域からも賞金(賞品?)狙いで多数の参加者が訪れたらしい。
また、3つの踊りが繰り返し踊られるのは、踊り手たちが3種類それぞれを踊る姿を審査員がまんべんなく観察できるようにとの配慮もあるそうだ。


仮装姿、着物姿以外にも普段着で参加する踊り手も見かけられる。
また、仮装にしてもハロウィーンで見られるような一分の隙もなくビシッと装ったような姿はなく、どこかレトロでゆるい。
一見なんでもアリのように見える仮装にも伝統行事ならではの作法が息づいているようで面白い。
戦前には旅芸人、股旅もの、ヤクザなどが、戦中になると爆弾三銃士、従軍看護婦などの仮装が流行ったそうで、その時代を反映した仮装が見られる点も特徴だ。
この踊りの何日かあとに、秋田魁新報に戦時中にこの盆踊りに参加したご婦人の投稿が掲載されていた。
兵隊姿で踊りに参加したそのご婦人は「まさか日本が戦争に負けるとは夢にも思わなかった」と当時を振り返っておられた。
戦争の影響を受け、日々の窮屈な暮らしを振り払うかのように一心不乱に踊るお姿が思い浮かぶようだ。

サンカツ


♪ドドンノサンカツそれ踊れ 豊年万作作踊り 明日から田圃の稲刈りだ と唄われるサンカツはキタサカ、デンデンヅクに比べてスローな動きで、しかも片足を上げる動作が長く入ることから疲れやすいとされている(昨年の記事にコメントをくださった、東京在住の盆踊りマスターふじけんさんもそのように仰っていた)。
優雅とも云われるサンカツではあるが、振りの中には刈り取った稲を肩で担ぐ所作なども含まれているらしく、もしかすると過酷な農作業を楽しくやり過ごそうとするための踊りなのかもしれない。
「一日市盆踊り調査報告書」には「ちょうど盆の期間は、稲刈り前のつかの間の休みの時でもあり、盆踊りは日常生活から脱却し、鬱憤を発散することのできる行事であった」と記されていて、サンカツは作踊り(盆期間が終わって以降も続けられる盆踊りをこのように呼んだ。内容は盆踊りと同じ)的なカラーの強い踊りであることが伺える。

踊りは続きます。

一日市以外にも周辺地域では浦大町盆踊り(八郎潟町)、湯ノ又町内会盆踊り(五城目町)、下岩川盆踊り(三種町)、大曲盆踊り(三種町/昨年から休止)など小規模ながらたくさんの盆踊りが行われているが、それらの中でも中心となっているのはここ一日市であり、その風格は際立っている。
その敷居の低さ(サンカツはそうでもないが、デンデンヅクとキタサカは振りが簡単らしく、「一日市盆踊り調査報告書」には少し練習すれば子供でも踊れるぐらいと書かれていた。)から西馬音内のような観光的な側面を持ち合わせておらず、八郎潟町以外で披露される機会はほとんどない盆踊りではあるものの、まさしく秋田の盆踊りの裏ボス的な存在感を漂わせている。

デンデンヅク


後半に披露されるデンデンヅクは「ヒー!」「ヒョー!」などの掛け声が踊り手からも上がって、一層賑やかになってくる。
また、今では見られなくなったが、かつては掛け歌(問いかけ歌と返し歌で構成される一種の歌遊び)が踊りの最中に盛んに飛び交っていたらしく、踊りに輪をかけて盛り上がったそうだ。
今では全国にほとんど残っていないものの、秋田県内では横手市金沢、美郷町の2箇所で現在も行われている掛歌行事(近年まで旧田沢湖町神代などでも行われていた)の要素が入っているようでとても興味深い。
ところで「ヒー!」などの掛け声について、西馬音内盆踊りの「音頭」における「フー!」の掛け声と共通のルーツがある、と個人的には思っているのだが、そのあたりどうなのだろうか?

やっぱりいらっしゃいました。キャサリンさん!

「秋田仮装プロジェクト」の代表を務め、県内のいろんな行事に参加している方であり、昨年もここ一日市でお会いした。
もともと仮装が本職(?)のキャサリンさんにとって、この盆踊りはまさに「ホーム」。楽しそうに踊られていた。
Twitterでフォローしていることもあって、管理人のことを覚えてくださっていたが、「ああ。あの旅行のブログやっている方?」と尋ねられた。いえ、お祭り・行事のブログです。まあどっちでもOKです。。。

仮装の皆さん

踊りが終わりに近づくと盆踊り審査結果が順番に発表され、踊りながらも入賞の喜びにわくグループの姿が見られる。
同時に列から離れる踊り手の姿も目立ち、この盆踊りが終わりを告げようとしていることがわかる。
今日は初日だし、明日明後日も踊りが行われる訳なのであまり淋しい感じは受けない。


22時を過ぎて、踊りが終わりを迎える。
最後の大きな盛り上がりもなく、いつの間にかお囃子方が演奏を止めて、いつの間にか踊り手が散り散りになるかんじだ。
昨年鑑賞した男鹿市脇本浦田のダダダコもそんな終わり方だった。
あれほどに派手に盛り上がった踊りの終わりにしてはあっさりしている気がするが、これはこれで南利踊系の特色のひとつなのだろう。

父兄の皆さんに許可をいただいて撮らせてもらいました。

みんなおつかれさま!カラフルな衣装でとっても目立ってたよー

あっという間に撤収が始まる。

管理人も会場をあとにする。
帰りしな、前日西馬音内でお会いしたふじけんさんのご友人の年配男性1人、女性2人組のグループ(横浜から来られたそうです)を見かけたのでお聞きしたところ、「町外の部」部門1~3位をお三方で独占されたそうだ。驚異の1・2・3フィニッシュ!さすがです。

昨年同様にその賑やかさと迫力を十分に楽しんだ。
西馬音内、毛馬内のような静的な盆踊りではなく、ひたすら楽しく盛り上がるちょっと異質な盆踊りであるとも言えよう。
だが、先に書いたように秋田の盆踊りのなかでは、その分布地域や同系統の盆踊りが数多くあることなどからメインストリームでもある訳で、決して異端ということではない。
などとゴチャゴチャと考える前に「まずは八郎潟へ来て踊ってみろ!」とでも語りかけているかのような、熱気とパワーに満ちあふれた盆踊りを是非たくさんの人に経験して欲しいと思う。


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