一日市裸参り2020

2020年1月1日
2019年最後の行事、能代のナゴメハギ鑑賞後にその足で向かったのが、今回紹介する八郎潟町の一日市裸参り
毎年1月1日0時に始まる行事で、新年最速の行事ともいえる。
管理人は2017年から4年連続の鑑賞 - 大晦日のナマハゲ行事との抱き合わせと言ってしまえば、まあその通りではあるが、勇猛な男たちが凍てつく冬の夜に、一日市の町なかを駆け抜ける見事さは一見の価値がある。
ということで、今年も迷わず八郎潟へ足を運びました。

ナゴメハギ行事が終わったのが12月31日の22時すぎ
そこから八郎潟町までの車移動であれば30分もあれば着くはずだが、とにかくこの日は吹雪がすごかった!
途中、前方が全く見えなくなるぐらいのホワイトアウト状態にたびたび襲われたうえ、通りがかりのコンビニで弁当を食べたりしているうちに、裸参りの拠点となる、一日市防災センターへの到着が押しに押してしまった。
これはいかん!裸参りの出発は0時だが、その30分前にパンツ一丁の若者たちがやんやの声援を浴びながら、頭から桶の冷水をかぶって水垢離を行うのもこの行事のハイライトの一つだ。なんとか23時半に間に合ってほしい!

23時40分に到着。水垢離終わってました😢


楽しく盛り上がる水垢離の場面を見れなかったのは残念だが、これからが本番なので0時の巡行スタートに向けて気を取り直す。
そして今年は例年とは違う点がある。昨年、青森県新郷村のキリスト祭りでお会いした、宮城県気仙沼市在住のSさんを伴っての鑑賞なのだ。
秋田の伝統行事をこよなく愛するSさん、実は男鹿市真山地区のナマハゲにここ数年欠かさず足を運ばれていて、今日も男鹿訪問のご予定とのこと。
それを聞いて、一緒に裸参り見ませんか?と事前に声をかけたところ快諾をいただき、本日に至ったワケだ。
ちなみにSさんだが、当日の真山地区のナマハゲ行事ではカマス担ぎ(各家からのご祝儀を受け取り、持ち歩く係)を部分的に任されたらしい。このままいけば、4~5年後にはナマハゲに昇格できるんじゃないだろうか?(←冗談です)

少し経ったのち、サラシ、白短パンに着替え、頭にハチマキ、足元には草履の若者たちが外に出てまいりました。恒例の記念撮影です。

今年は30人ほどが参加した。
この行事を初めて見たのは2017年の元旦だった。
そのときは10数人ほどの人数しか集まらず、当初その年を最後に行事を取りやめる予定だったのを、地元八郎潟の若い人たちが「俺たちの大事な祭りを絶やしてはいかん!」と新実行委員会を立ち上げ、大逆転で行事存続を実現させた経緯がある。
当日は地元一日市の皆さんのみならず、秋田魁新報の記者さんが取材に訪れるのも恒例だが、今年はNHKの記者さんの姿が。
てっきりNHK秋田局だとばかり思っていたら、NHK山形局の方で、なんでも「一度廃れた祭りが若い人たちの手によって復活した過程を取材したい」ということで、八郎潟での現地取材に至ったそうだ。
おお‥。秋田を越えた隣県にまで、一日市の若い人たちの快挙が知れ渡っていたのか、っていうのはちょっと大げさにしても、行事を途絶えさせることなく継承にこぎつけた情熱、行動力、郷土愛に心から拍手を送りたい👏👏👏

さて時刻は0時になろうとしている。いよいよ出発、がんばれ~

0時に向けてカウントダウン、そして年が変わると同時に一行がスタートを切る。
毎年お馴染みのシーンで、このときばかりは管理人も「良い1年にしよう!」と心に誓う。(3日経つとそんなこと忘れてますけど)
リーダーが先頭に立ち(榊の?)枝、制札を持つ人たちが続いて、樽神輿を担ぐ人たちがそのあとに続く裸参り一行 - 県内に数々裸参り行事はあるが、当然みな同じという事ではなく、ここ一日市では神輿を担ぐ点と、若者らしい元気さが前面に出ている点が特色だろう。
何年か前に鑑賞した横手市雄物川町の湯殿山神社裸参りは(行事規模もあるのだろうけど)男性的な勇ましさはなく、静謐な雰囲気の裸参りだったし、上小阿仁村の友倉神社裸参りは女性も参加する楽しげな裸参りだったし、この時期限定の行事とはいえ各地で見比べるのも面白い。

一行出発直後にSさんとともに、すぐ近くの一日市神社へ移動。モタモタしているとあっという間に裸参り一行が神社へ着いてしまうため、やや早足で向かう。

宮司さんがお待ちかね。境内は新年の参拝客でいっぱいなのもおなじみの光景だ。
一日市神社は以前は「八郎潟諏訪神社」だったが、大正の初め頃に近隣の神社と合祀され、その際に一日市神社となったそうだ。

本当に、あっという間に一行が神社へ到着
鳥居前までは「ジョヤサ!」の掛け声とともに威勢のよかった一行が、鳥居をくぐると同時に言葉を発することを止める。一気に神妙な空気に早変わり

「身心健康」「家内安全」「無病息災」を祈願して奉納を行う。
「裸参り」というお参りなワケなので、行事の目的は神社へお参りを行う点にあるが、デジタル大辞泉によると裸参りとは「寒中、裸体になって社寺に参詣すること」とあり、寒い中に行われるのが裸参りの条件のようだ。
考えてみれば裸一貫で行われる寒中〇〇と呼ばれる行事はいろいろとあるが、そのどれもが清浄ななかに身を置いて心身を清める意味があるような気がするし、裸参りについてもいわば最高に清められた状態で神前に立つことが重要なのだろう。

参詣が終わると一行はすぐさま踵を返し、湖東消防署八郎潟分署~中島稲荷神社~押切愛宕神社と移動するが、一日市の商店街を駆け抜ける姿を見ておきたいので、あらかじめ商店街の一角で待機。去年は管理人がルートを勘違いしていて、管理人の待つ遥か手前で一行が右折してしまったのを思い出す。
湖東消防署への巡行を終えた一行がやってきた。


白一色になった街の風景に若勢たちの雄姿がよく映える!
ところで、裸参りの歴史やいわれをちょっと調べたのがだ、実のところよく分からない。
八郎潟町史にも、裸参りについて「起源は不明。山伏僧の名残とみる説もある」としか記されておらず、一日市でなぜこのように裸参りが続けられてきたかについては謎である。
由利本荘市の新山神社裸参りなどは、かつて同山が修験者の修行の場だったこともあり、修験者の荒行が引き継がれたと伝承されているが、八郎潟町内で言えば浦大町の高岳山にかつての修験の痕跡が残っており(山道の途中の「叢雲の滝」の岩壁に梵字が刻まれていて、修験者が彫ったものとされている。また、山の裾野の小池集落にも「小池板碑群」なる梵字の碑があるそうだ)、修験由来の可能性はあると思う。
なお、八郎潟町史では先の文章に続いて、裸参りのことを「真冬の夜に冷水を浴びて身体を清め、ジョヤサの掛け声で4キロの行程を練り歩くヤングの姿はまさに勇壮そのもの」と記している。ヤング!!今は聞かない表現です。

通りにはご覧のような燈籠が飾られる。

8月の一日市盆踊りの折に、商店街通りを「俳句ロード」と名付けて各商店・家々の玄関先に燈籠を飾っていたのが、元旦の裸参りの時にも飾られるようになったものだ。
季節は全く違うものの、雪の中の燈籠もミニかまくらのような温かさがあって良い。
8月18日~20日まで1000人もの踊り手を集めて華々しく開かれる一日市盆踊りだが、今年は新型コロナの影響で開催が危ぶまれている(記事を書いている5月時点では、中止決定には至っていません➡️訂正 5月14日に正式に中止が発表されていました)。

商店街を少し外れて、馬場目川にかかる竜馬橋へ到着。

例年と同様に風が強い。
数年前に現地の方から、竜馬橋には馬場目川から来る風が吹きつけてるんだよ、とお聞きした通りで、橋のうえで凍える思いで一行を待つのも管理人的にお約束になっている。
Sさんも「寒いっすね~、コレ(´;Д;`)」と連発しているが、今年はお喋りなどしながら一行を待っていたので、例年のようなわびしいかんじはなかった。とは言え、寒いことには変わりない。裸参りよ!早く来てくれ~

押切愛宕神社への参詣を終えた一行が来ました。待ってました!


一日市盆踊り調査報告書には「夏季の風速は3~4mで、うたせ舟の帆を張るには最適であった。また、冬季は八郎潟からの暴風が激しく、地吹雪となり湖岸の家を襲い、人々の生活を脅かす年もあった。冬晴れの日は、氷下漁業に出ることもあった。しかし、氷下漁業は危険を伴い、急変した悪天候で猛烈な地吹雪に遭遇し、命を落とした漁民の話も多くあった」と記されている。
秋田でも沿岸部はそれなりに風が強いが、かつての八郎潟周辺も馬場目川周辺に限らず、風の強い地域だったようだ。
竜馬橋に吹く風もいにしえから八郎潟に住む人たちにとっては当たり前の自然現象であったろうし、2020年を迎えた今でもそれは変わらない。

このあと一行は竜馬橋を超えて五城目町へと入り、大川菅原神社を参詣したのち再び一日市へと戻ってくる。管理人は大川菅原神社へは行かず、最後に訪れる太平山三吉神社で待つことにした。


三吉神社の社殿内では、2名の世話役の方がすでにスタンバイ済み。
ここはもちろん秋田市の太平山三吉神社から分祀された神社だ。
大川菅原神社だけ、他の神社と比べて遠い場所にあるため、一行も戻ってくるまで時間がかかっているが、それでも遠くから「ジョヤサ!」が徐々に近づいてきているのが分かる。
大川菅原神社は今の場所から東南の方角にあり、掛け声もそちらの方向から聞こえてくるはずだが、何だか声が頭の上でグルグル渦巻いている感じがするのは、八郎潟特有の強風の影響なのだろうか?

ようやく見えてまいりました!


一行が神妙な表情で参詣する。
裸参りについて、全国的にどのような状況になっているのか、いまいちよく分からないのだが、どうやら北日本に行事が集中しているようだ。
「裸参り」ならぬ「裸祭り」は全国のいろんな地域で行われているようだが、裸参りとなると事情が違うという事か。
また、岩手県・宮城県のあたりで行われている裸参りについては、「褌一丁の若者が雪の中を走り抜ける」という秋田ではおなじみのスタイルではなく、ゆっくりとした足取りで行進するスタイルの裸参りもあった。
マラソン大会よろしく走ってお参りするのも大変だが、厳しい寒さの中フツーに歩くというのもこれまた寒さで凍ってしまいそうだ。
いずれにしても冬の寒空の下、裸でいるのだから走ろうが歩こうが大変なことには相違ない。

ゴールはもうすぐ。ラストスパート!!!!ガンバ──(o゚ェ゚o)ノ──!!!!


最後のカーブを曲がり、あとはゴールとなる防災センターへ向けてのヴィクトリーラン。こころなしか、元気さがさらに増したようだ。頑張れ頑張れ!

一行が防災センターへ入り、これにて行事終了。これから新年会を兼ねた打ち上げで盛り上がるはず。おつかれさまでした!


行事の終わりを見届けると同時に観客たちも解散となる。
管理人もナゴメハギ開始から通算すると7時間外にいる状態となっていたので、ちょっと疲れてきた。
そしてSさん。これから八郎潟~気仙沼市までのロングドライブ、運転気を付けてくださいね~。
というか、ナゴメハギでお会いした小松和彦さん、宮原葉月さんたち秋田人形道祖神プロジェクト御一行、佐々木ゑびすさんもエネルギッシュだが、Sさんもなかなかなモンだ。くれぐれもご無理なさらないように😅😅😅

4年連続、そして2020年初行事でもある裸参り鑑賞を終えた。
これまで見たものと大きく変わる点はなかったが、今回の行列は特に元気がよかったような気がした。一時の存続危機を乗り越えて、一日市の若者行事として定着しつつあるのだろうか。
今後もこの勢いを持続して、八郎潟町の新年の名物として続いていってほしい。
また、10年以上前の記録ビデオを鑑賞したところ、小学生ぐらいの子たちも多数参加していたが、運営主体が青年会に切り替わったことで、どうやら青年層中心の行事へとシフトしつつあるようだ。
出来得るならば小・中学生もどんどん参加して、一日市、八郎潟の未来に担い手たちのたくましい姿を見せてほしいと思う。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA