田代岳の岳参り作占い行事

2017年7月2日
お祭り・行事好きが高じてこのようなブログを書いているわけだが、ブログを始める以前から管理人的に「絶対に一度は行ってみたい祭り・行事」がいくつか存在する。
今回紹介する「田代岳の岳参り作占い行事」はその一つである。
別名「田代山神社例祭」として、旧田代町(現大館市)の方々には馴染みがあると思う。
きっかけは、秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会の運営するサイト「美の国秋田・桃源郷を行く」で、この祭りに関する記事を読んだことだ。

記事には7月2日(半夏生の日)に行われた、大館市にある田代岳(たしろだけ)山頂に鎮座する田代山神社での祭りの様子が書かれている。
標高1,178mの山頂でひっそりと、だが楽しげに行われる祭りのレポートを読み、「行ってみたいなあ‥」と何年も前からおぼろげに考えていた。
初夏の抜けるような青空、田代岳9合目を埋め尽くすかのような無数の池塘(ちとう)、山頂で奏でられる太鼓と銅鑼によるお囃子、そして山頂にすっくとそびえ立つ田代山神社‥
魅力的すぎる、いやマジで
そして今年。祭りの行われる7月2日はちょうど日曜日にあたる。
来年、再来年の7月2日は平日であり、フツーに仕事をしているはずなので、今年を逃すと当面行けるチャンスがあるかどうか分からない。
何としても今年行っておかないと!ということで計画を立てた。
祭りをみるためには2時間にも渡る山登りをしなければならず、本来なら天候も気にかけるところだが、もう雨でも豪雨でも何でもいい。
是が非でも行くのだ(でも、できれば晴れて欲しい)。
田代岳については大館市のサイトに詳しく書いてある。

当日は5時半に起床し、6時には秋田市の自宅を出発した。
五城目町から上小阿仁村、北秋田市を経由し、8時には国道7号線に乗って大館市に入った。
そして国道7号線から県道68号線に移り、ひたすら北上する訳だが、県道68号線を外れてから登山口に至るまでのルートが長い!とにかく長かった!
実際には20kmに満たないぐらいの距離なので長くはないのだが、体感距離は50kmぐらいあるように感じてしまう。

いくつかの集落を抜けるとくねくね道が始まります。

道中にある五色湖、五色湖ロッジ。大館市では人気の観光スポットのようだ。

そして延々続く未舗装道路へ。時速20kmほどの低速運転が続くのはしんどい。

そして気になる天候は「曇り」
雨が降らないだけマシではある。
が、7月の爽やかな青空のもとで祭りを見物したい!という願望は捨て切れない。
前日の天気予報によると、大館市は一日中曇りだったものの、近隣の青森県西目屋村、大鰐町は午前中晴れの予想だった。

例祭のある7月2日は登山客でごった返すらしい。
なので、渋滞とは言わないまでも前後に車列を作りながらの運転を予想していたが、この山道走行中、同じように田代岳を目指す車を見かけることはなかった。
そんな状況でこの山道をのろのろと走っていると、さすがに心細くなってしまう。
今日のパッとしない天候を見て、ほとんどの人が登るのを止めたんじゃないか‥
で、単独登山をした挙句、突然目の前に現れた熊にやられるんじゃないか‥
俺、ストック持ってないから熊が出てきても武器なんかないわ‥
心細さだけが増し、山登りの高揚感など欠片もない。
どんよりとした心持ちのまま、目指していた田代岳荒沢登山口が目前に迫る。
あー登山客が誰もいなかったらどうしよう、帰ろうかな。などと考えながら登山口に着くと‥

キターーーー!たくさんの登山客!助かった、いや良かった!

これだけたくさんの人と一緒に登るんなら、熊なぞ怖くもなんともない。
2~3頭ぐらいかかってこいや!は言い過ぎだが、これで山登りを心の底から楽しめそうだ。
この方々のほとんどが地元大館市の「田代岳を愛する会」に所属の皆さんで、当日はマイクロバスで現地まで来られた。
管理人も、田代岳を愛する会の皆さんの後ろにひっつきながらいざ出発!

さて‥
この田代山神社例祭ではどんなことが行われるのかを簡単に記したいと思う。
①半夏生前日、北秋田市鷹巣にある綴子神社宮司が田代山へ登り、神社の清掃や準備を行う。
②その日の夕方ほどに9合目まで下りて、池塘に生息するミツガシワの状態を観察して作占いと豊作祈願をする。
③翌日の祭り当日、近隣の米農家の人たち(大館市とその近郊、青森県の人たち)が岳参りという形で登山をして、田代山神社に一晩籠っていた宮司から作占いの結果を聞く。
というのが大まかな祭りの流れである。
因みに祭りは毎年7月2日と日にちが決められているが、閏年に限っては7月1日に行われることになる。
詳細については大館市が作成したこちらの資料が分かり易い。
では、今日山登りをする人たちは全員米農家の人?となるが、そうではない。
本来の祭りの主旨は先に書いたとおりだが、現在は「半夏生登山」とも呼ばれており、山登り自体を目的とする登山者が大半を占めるようになった。
要するに、山登り自体は続いているものの、その宗教的側面は薄れてしまっており、レクレーションとしての登山という意味合いが色濃くなったわけである。

時刻は9時半
ここから2時間の山登りスタートとなる。

もともと体力、持久力ともに乏しい管理人は登り始めて5分ほどで「はあ、はあ‥」と息が荒くなってしまう(持病があるとかではないです。単に運動不足なだけです)。
管理人はたまに標高300~500mほどの里山登山をすることがあるが、いつもこんな調子なのでたいして気にすることではない。
「晴れて欲しい」とは思いながら、晴れると当然気温が上がって体力の消耗が激しくなる訳なので曇り空も決して悪くない。
目に緑が鮮やかです。

田代岳を愛する会の皆さんにくっついて登る。
ときには列の中に混ざったりして、厚かましくも会員のひとりみたいな顔をさせてもらった。

たしかガイドさんが「これは、なんとかムラサキで‥」と言っていたような気が‥

2合目のあたりで「林内コース」と「沢コース」に分岐する。
林内コースのほうが初心者向きなので、そちらを行こうと決めていたのだが、誤って沢コースに行ってしまった。
その名前通り、沢歩きを余儀なくされる。

何とか沢を渡り切る。途中薄日が差す場面も

3合目。ここまで1時間弱ほど

やはり天気はパッとしない。

5合目に到着
この先続く急登に向けて、皆飲み物を飲んだりして息を整える。
このあたりから、山頂を踏破し下山中の人とすれ違うことが増えてきた。

6合目までは無難だが、7合目のあたりからゴツゴツとした岩が登山道となる。
また、ここまで少し晴れる場面もあったものの、このあたりから小雨が降っては止む天候となった。

登山道も細くなる。

天候が思わしくなく、もやがかかっている。
「雲上のアラスカ庭園」と呼ばれる9合目にたどり着く頃には晴天となっていることを祈りながら一歩一歩踏みしめる。

そして視界が開けた。9合目に到着するようだ!

やった!9合目到着!
が、天気が。。。うーーん(><)

曇り空なのはある程度しょうがない。
が、とにかく風が強く、視界が悪い。
時折小雨混じりとなり、吹きつけてくるものだから、景色を楽しむには程遠い。

天候が良いと北の方角に岩木山も見えるそうだが、すぐ間近の様子もよく見えない。

願っていたような晴天にならず残念ではあるが、まずは無事9合目まで登れたことに一安心
ここまで登山を開始してちょうど2時間
里山にも時折キツい登りがあり、急登用ロープを使わないと登れない箇所がある。
それに比べると田代岳は標高・登山時間ともに一般的に里山と言われる山に比べて高くて長いものの、途中急登となっているところはなく、比較的登りやすいと言えるだろう。
今日の例祭を抜きにして、9合目に広がる池塘を鑑賞するためだけでも登る価値は十分にある。

こちらが水量見の神の田

作占いは、晩稲の神の田から始まり、次に中稲の神の田、次に水量見の神の田‥という具合に占いにおける手順が厳密に決められている。
本当は宵宮(7月1日)の作占いの様子を見てみたいと思っているのだが、作占いは夕方に行われるため、その後綴子神社宮司さんと山頂で一泊するか、夕闇迫る中下山するかのいずれを強いられることになる。
どっちも無理です‥マジで
因みに作占いの様子は、大館市を拠点に様々な地域活動や情報発信を行っている「ゼロダテ」HPのスタッフブログに詳しく掲載されている。

これがミツガシワ

こちらは三五の池
いくつかの池で占いを行った後、それらの結果を集約して占い結果を導き出すための「賽護打ち(さいごうち)」が行われる池である。

そして山頂の田代山神社を目指して、9合目をあとにする。
結構な急登ではあるが、距離が短く山頂が目の前に見えているのでたいして気にならない。

そして山頂に到着!鳥居をくぐる。

着いたー!着きました!山頂の田代山神社です。2時間20分の山行でした。

時間はちょうど12時ぐらいということもあり、山頂とその周辺にはたくさんの登山客がいた。
皆さん、いい顔をしています。
が、やはり悪天候の影響なのだろう、管理人が想像していたような賑やかさは感じられない。
また、山頂でお会いした何人かの方から教えていただいたのだが、以前笛や太鼓、銅鑼などを持ち込んで演奏したり、踊りを披露していたのは青森県側から来られた人たちだったらしい。
それが何年か前から青森県側からのアクセスルートが通行止め(か、通行禁止または廃道)により使えなくなったことで、青森からの人たちが激減してしまっているらしいのだ。
ということで、管理人が思い描いていたような、山頂での素朴なお祭り風景はついぞ見ることはできなかった。

そして、今一つ無念というか、心が痛むのは田代山神社の佇まいである。

ご覧のとおり、本殿前面がブルーシートで覆われている。
また、向かって左側の壁部分も同様にブルーシートで覆われている。
昨年の4月の強風により本殿が損壊し、屋根の一部や壁、本殿内に飾ってあった額などが吹っ飛んでしまい、その後修復もされず現在に至っているのだ。

本殿内を覗いてみる。
中には宮司さん(毎年見えられていた綴子神社の宮司さんは今年は都合で登れなくなったため、今年に限って写真の宮司さんが代役を務められたらしい)、世話役の方たち(氏子さん方?)がおられた。

中央に祀られているのは「白髭直日大神(しらひげおおなおびのおおかみ)」
かの大館アメッコ市の折には、この白髭直日大神が田代山神社から下りてくるとされている。

入って右側壁に飾られている立派な絵馬

先に書いたように、岳参りにより豊作を祈願するとともに、宮司から作占いの結果を受け取るというのが本来の姿である。
現在はそのような古来の形式に則ったお参りは少なくなっているが、それでも参拝客はそれなりにいるようだ。

御札や御守りが置かれている。
御守り、風除札、虫除札などは300円~いただくことができるが、管理人は賽銭用の100円しか持って行かなかった。
ちょっと悔やまれる。

中の方々と言葉を交わす。
何より気になるのは、このように痛々しい姿となった田代山神社の修復に関する問題である。
もともと寄付で修繕費用を賄う算段ではあったが、このたび県から大館市に対して神社を避難小屋として活用するようにお達しがあったらしい。
おそらく今後は大館市が維持管理することになるのだろうが、そうすると田代山神社という名前ではなくなるかもしれないし、田代山神社例祭というのも名目上は消滅するのではないか、などといろいろなことを考えた。
ただ、宮司さんによると、来年以降も現在の形を保ってお祭りは続けられるらしい。
ほっと一安心ではある。
だが、神社の損傷については壁や屋根を補修すればよいというレベルではなく、建物の土台が腐食しているため、全面的な建て替えになるだろう、との話だった。

管理人は米農家ではないが、今年の占いの結果を宮司さんに伺うと「平年並み」とのことだった。
今年は春先にあまり気温が上がらず、農作物の生育があまりよくないみたいな話を聞いていたので、とりあえず御の字ということになると思う。
今でこそ作況指数という形で、科学的な分析を行ったうえでの指標が示されるようになっているが、いにしえの農民たちは作占いの結果をどれほどの切望感とともに聞いていたのだろうか。
現代に比べて、飢饉、貧困といった深刻な問題が身近だった昔においては、農民たちがコメの生育に関して本当に切実な思いを持っていたことが容易に推測できる。
宮司さん、世話人の方々。この悪天候、悪条件の中おつかれさまでした!

山頂付近で出会った大館市「根下戸町山岳会」の皆さん
記念撮影をお願いされたのに便乗して、管理人が自分のカメラで撮らせてもらった写真です。
どうやら設立から40年の伝統ある山岳会らしい。皆さんお若いです!

ネーム入りのシャツ。老舗(?)感が出てますなあ

山頂で簡単な昼食を取ったのち下山を開始する。
うーん、返す返す9合目の景色がよく見えないのが口惜しい。
別れを惜しむかのように、下手な写真を撮りまくる。

そして9合目を離れる。で、ちょっと降りると‥

今頃かよー。晴れてきちゃったぜー
こんなんだったら、もう少し時間を遅らせるんだった‥などと一瞬考えたが、そういうものでもないだろう。
7~8合目ぐらいにいるからこそ、晴れているのであって、9合目~山頂が晴れている保証は何もない。
山の天気は変わりやすく、読みづらいことを心得ているつもりだったが、晴天を願望するあまり天気予報をあてにしたり、山登りの基本をどこまでも心得ていない管理人だった。

5合目まで降りる。
下りとは言え、それなりに体力を使うので皆ここで一休み

2合目付近の林内コースと沢コースの分岐
左に行けば林内コースだったが、誤って直進したがために沢コース行きを余儀なくされた。

川の流れも綺麗です。

そして3時。無事に下山
楽しい山行だった。

駐車場で、ある男性から笹とツゲを見せてもらった。
作占いの結果を聞くと同時に山頂で宮司より笹とツゲをいただき、それを田んぼの畦に立てて豊作祈願とするのが、この祭りの古来からの習わしである。
ただの葉っぱと言うなかれ、たいへんに神聖な「神器」なのだ。

もうたくさんの登山客が帰路に着いたようで、朝には満杯だった駐車場もかなりガランとしている。
管理人も心地よい疲労感とともに駐車場を発った。
山登りにご一緒させてもらった「田代岳を愛する会」の皆さんを乗せたマイクロバスが前方を走行
山だけでは飽き足らず、帰りルートでも後ろにくっついていく格好になってしまった。

あいにくの天候の中での山登り、損傷著しい田代山神社の状態など心弾む要素が少ない訪問となってしまった。
が、念願だった田代山神社に登れて、充分に満ち足りた気分になれた。
たしかに理想としていた祭りの様子ではなかったが、憧れていた祭りに参加することができた嬉しさには格別のものがある。
そして、毎年7月2日にたくさんの人たちが山登りのために集まってくるということが重要なのだ、とあらためて感じた。
岳参り・作占いが形骸化している訳ではないし、ましてや途絶しようとしている訳でもない。
田代山を愛して、田代山へ登頂するたくさんの人たちがいるかぎり、この素朴な行事もずっと続いていくだろう。
そしていつかは7月の青空の下、この山頂で祭りの華やいだ気分を感じ取れる日を迎えたいと思っている。


2 Replies to “田代岳の岳参り作占い行事”

  1. お疲れ様でした。
    『田代』と言う地名は沢山有りますね。田に代わるもの、、、田に代えるもの、、、若しくは『田を支えもの』、、、?とても神性な響きを感じます。

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます。
      田代。そうですね、ちょっと深い意味があるかもしれませんね。
      気になって調べたところ「代」には「端」の意味があって、実は代掻きというのも「端」から「掻く」ということを表しているらしいです。
      そして端(代)から端(代)を計測することから、田んぼのことを「一代」、「二代」などと数えたりするそうです。
      そう考えると「田」と「代」は、密接に関わり合ってる語だということなのでしょうね。
      ネットで調べただけなので、それ以上のことは分からないんですけど(笑)

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