男鹿の盆踊り

2017年8月15日
個人的にとにかく気になっている盆踊りの登場である。
男鹿の盆踊り – 「ダダダコ」なる名称のほうが知られているだろうか。
いやいや。男鹿出身・男鹿在住の方以外にはほとんど知られていないだろう。
管理人もついこの間まで名前も知らなかったし、もっと言えば男鹿に盆踊りがあることすら知らなかった。
それが何ゆえ気になる存在にまでなったのか、この記事でその理由の一端を感じ取って欲しいと思う。

その出会いは男鹿で行われている「百万遍」をネットで調べていたときのことだ。
百万遍では盆踊りならぬ彼岸踊りが披露される集落もあり、その詳細を調べようと検索ワード「男鹿 盆踊り」でググったところ、このサイトの記事がトップに表示された。
だだだこ?加茂青砂の盆踊り?そりゃなんですか?
県内沿岸地域は内陸地域に比べて盆踊りの数が圧倒的に少ない。
それがどういう理由かよくは分からないのだが、もろ沿岸地域である男鹿に盆踊りなんぞあるはずがない、と思い込んでいた。
その認識が誤りだったことに気付かされたと同時に、独自の文化、気質を持つ男鹿の盆踊りとはどんなものなのか興味が湧いたのだった。

それから日が経ち、男鹿にふらりと遊びに行ったときのこと
2体の巨大ナマハゲで知られる国道185号線沿いの男鹿総合観光案内所へ立ち寄った際、窓口の女性にダダダコについて何か情報はないか尋ねたところ、予想以上にいろんなことを教えてくださった。
先に紹介したサイトの舞台となっていた加茂青砂だけでなく男鹿全域で行われていること、8月13・14・15日あたりに開催されるものの、集落によって日はまちまちであることetc‥
そして「ダダダコのことを知りたいなら、雄山閣の会長さんに話を聞いたらどうですか?」とアドバイスをいただく。
男鹿温泉郷の宿、雄山閣の会長がダダダコの普及に務めているらしいのだ。
これは是非お話を伺いたい!ということで男鹿観光案内所から一路雄山閣へ向かう。
雄山閣へ入ると、偶然にもエントランスに会長が!‥ということでロビーに上げていただき、話を聞く。
会長の山本次夫さんは、男鹿の文化の普及や観光振興に力を入れておられるようで、頂戴した名刺の裏には男鹿に関連する団体名がズラーッと書かれており、そのいずれの団体においても要職を務められているのだった。
もう一つ、山本会長は秋田魁新報にコラムを寄稿されている、文章家の顔も持っている。
会長からは、ダダダコが男鹿市民の心の拠り所であり、首都圏で開かれる男鹿出身の県人会のお開きに際して必ず踊られること、ダダダコを男鹿の一大イベントとして大盆踊り大会を開く計画があることなどを教えていただいた。
そして会長は「いつの日か秋田三大盆踊り+ダダダコで、秋田四大盆踊りと呼ばれるぐらいに大きくしたいねえ!」と仰っていた。
それはまた壮大な野望ですねー
帰り際「あなたもね、ダダダコのために頑張ってくださいよ!」と激励をいただく。
「はい、分かりました!」と答えたものの、何をどう頑張ればよいのやら。。。

そして8月
8月7日の「脇本の山車どんど」の取材の際に、ダダダコが見られる地区を探し回ったところ、近くの脇本浦田(わきもとうらだ)で行われているとの情報をゲット
脇本浦田へ向かい、外で農作業をされていた年配女性に話を伺う。
盆踊りは8月15日に脇本浦田公民館前の広場で行われるらしい。
実際には盆踊りは8月13日から始まっているとされており、13日は還ってきたご先祖の御霊が踊るために太鼓の伴奏のみが行われること、8月14日は男鹿日本海花火大会の開催とぶつかるため踊りも太鼓も披露されないこと、この盆踊りは八郎潟町の一日市盆踊りの影響下にあるとされていることなどを教えていただいた。

当日8月15日
仕事が終わり一路、男鹿へ向かう。
途中潟上市から眺める男鹿半島。雲は多いが、雨の心配はない。

7時20分頃に脇本浦田公民館に到着
あたりはすっかり薄暗くなっている。
本当は踊りの前に公民館の背後に建立されている「三輪神社」境内を散策したかったのだが、ちょっと時間が遅かったようだ。
会場に人はそれほど集まっていない。

公民館前広場の中央ほどに櫓が組まれており、その櫓の上ではお囃子方が練習中
お囃子方といっても笛や鉦はなく、2名か3名の太鼓叩きがいるだけであり、その2~3人ほどの太鼓担当が延々と太鼓を叩き続けている。
とそこに、踊り手がカットインして踊り始めた。
そうか!先ほどからの太鼓は練習ではなく、すでに盆踊りのお囃子は始まっており、そこに踊り手が自分のタイミングで合流するシステムだったのだ。


こちらは北海盆唄
北海盆唄はその名のとおり、北海道発祥の盆踊り歌として知られている。
踊りのあとに太鼓担当の男性に教えていただいたところ、現在脇本浦田は「ダダダコ」「北海盆唄」の2つがメインとなっているとのこと
もうひとつ「サンカツ」もあるのだが、こちらの状況ははあとでお伝えしよう。

徐々に踊り手が増えていく。
中にはお揃いの帽子、ドレスで仮装しているご婦人方も


管理人の知っている盆踊りはいわゆる「盆踊り大会」の類であり、このように集落単位で行われる盆踊りを見るのは初めてだ。
集落の行事といえば、少人数でこじんまりと行われるのが通例だ。
いや、少人数でこじんまりなのはそうなのだが、小さな行事特有のほのぼのとした風情、うっすらと漂うセンチメンタルさとは無縁の、たくましさというか興奮させられる何かがある。
その原因が太鼓の野太い響きであることは明らかだ。
この踊りが男鹿全域でほぼ同時に行われているのはスゴイ。

北海盆唄と言えば典型的な盆踊り唄だが、男鹿ヴァージョンは全然違う。
もちろん鉦と笛、三味線といった太鼓以外の楽器、そして唄がないのが原因なのだが、それだけではない気がする。
オリジナルが持つ味わいを一切削ぎ落としたソリッドな盆踊りといえばよいのか、何だか全体的にシャープなのだ。
↓がおそらく正調の北海盆唄

それに対して脇本浦田の北海盆唄

北海盆唄が終わり、次にダダダコが始まる。

北海盆唄に比べて俄然テンポが速くなった!!
当然、踊り手の動きもスピードアップ!
何だこれ?メチャクチャ気持ちいいではないか。
ある種まったりとした盆踊り特有のリズムはなく、ドライブ感満載である。
しかも、2張の太鼓のタイミングが微妙にずれることでディレイ効果を生み出しており、実際のテンポより高速に聞こえる。
これはいい!!

太鼓の演奏にこの種の快感を感じることはこれまでなかった。
これまでたくさんの素晴らしい演奏を見てきた。
そのどれもが日本古来の太鼓演奏の流れを汲む音色だったり、リズムだったりするのだが、このダダダコの太鼓は明らかに異質だ。
アフリカの部族が踊る、戦いの舞のBGMのようだ。

「おお‥なんて野性的な盆踊りなんだ」と一人興奮する管理人を尻目に、10分ほどでダダダコは終わり、再び北海盆唄に切り替わる。


秋田県立図書館で、秋田文化出版社が1985年に刊行した「男鹿脇本の民俗」を借りた。
男鹿の脇本浦田・脇本百川・脇本樽沢三集落の習俗や暮らしが詳細に渡って記述されている、たいへんな労作だ。
その中に脇本浦田の盆踊りの様子も記されており、かつては脇本浦田が上(かみ)と下(しも)に分かれて、各々7張ずつの太鼓を打ち競っていた、とある。
また、盆踊りの時間も夜11時ぐらいまでだったらしく、相当な熱の入り様だったことがうかがえる。

次に披露されるのは「サンカツ」

力強い太鼓と、軽快な縁打ちが組み合わさった面白い曲だと思ったらすぐに演奏が終わってしまった。
踊れる人があまりおらず、盛り上がらないことを危惧した太鼓方の配慮である。
この「サンカツ」はその名称から想像できるとおり、八郎潟町一日市盆踊りの「三勝踊り」がルーツになっていると思われる。
その由緒正しきサンカツが、踊れる人が少ないとの理由でほとんど踊られずに終わってしまった。
んー、これは寂しい。
部外者である管理人が言う事ではないが、サンカツがこのままフェイドアウトなどすることなく、きちんと受け継がれてほしい、と心から願う。

そして再びダダダコ!


秋田の盆踊りに詳しい方ならすぐに気づいたと思うが、ダダダコの振りは一日市盆踊りのキタサカ、土崎盆踊り(ドンドコドッケ)と同じだ。
が、振りが同じでも雰囲気や様相はかなり異なる。
キタサカの賑やかさ、派手さとは違うし、ドンドコドッケの軽快さ、小気味よさとも違う。
やはりその疾走感がダダダコの特徴ということになるだろう。
因みに「男鹿脇本の民俗」を読むと、脇本浦田にはダダダコの他に「ダゴヂグ」「ダゴジゴ」という踊り(お囃子?)があったらしい。
ダダダコ含めて、全て太鼓の節がそのまま踊りの名称となっている。

時刻は8時となり、しばし休憩となる。
区長さん(たしか)が櫓の上で簡単なご挨拶

そして、後半スタート
ダダダコ~北海盆唄のローテで繰り返される。


先のダダダコに比べて、若干テンポが遅くなっているようだ。
実は前のダダダコの動画のあとに、踊り手から「もっとゆっくり演奏してくれ!」と注文がついた。
その意を汲んで、お囃子方がちょいゆっくり目の演奏にシフトしたようだ。
踊り手の中心は高年齢層なので、どちらかと言えばミディアムテンポの北海盆唄のほうが踊りやすく、人気があるように見えた。


今回の記事のタイトルを「男鹿の盆踊り」としたが、男鹿の人たちのあいだでは「ダダダコ」と呼ばれるのが一般的だ。
お囃子の名称がそのまま踊りの名称となっている訳だ。
しかも、この盆踊りが男鹿全域で行われる訳なので、本当はタイトルを「脇本浦田のダダダコ」とするのが正しい。
それにしても、男鹿のどれぐらいの集落でダダダコが踊られているのだろうか。
八郎潟町教育委員会が編纂した「一日市盆踊り調査報告書」によると、八郎潟町周辺の盆踊りの状況として「男鹿市の種類:ダダダコ、キタサカ、サンカツ」「(旧)若美町の種類:ダダズコ、北海盆踊り、デンデンヅク踊り、サンカツ踊り、サエゴ踊り」との記述がある。
おそらく、集落ごとにレパートリーが微妙に異なるものの、大きくまとめると記述の通りということなのだろう。
今後、ダダダコを大盆踊り大会に発展させるにあたっては、このへんの集落ごとの状況調査も必要になるかと思う。

お囃子方も疲れてきたのか、北海盆唄の太鼓が途中で終わってしまった。
踊り手たちがすかさず冷やかしにかかるものの、お囃子方は「これでも喰らえ!」とばかりにダダダコを奏で始める。
集落の小さな盆踊りならではのやり取りだ。
で、踊り手も疲労が蓄積しているのだろう、何だか足取りが重くなってしまっている。
もう少しで終わりッスよ!頑張りましょうって!!


本当に荒々しくも美しい盆踊りだ。
先に紹介した「秋田県のがんばる農山漁村集落応援サイト」の記事によると、普段荒っぽい言葉遣いの男鹿(加茂青砂)の女性が優しく「きょうはみなお墓参りに行かれました」などと言うものだから、かの菅江真澄が驚いてしまった、との記述があるものの、決して盆踊り自体は優雅でも華麗でもない。
それでも、プリミティブな太鼓とシンプルな振りの組み合わせは、人間の踊りに対する根源的欲求を表現しているようで、とても美しい。


踊りも最終盤
参加者に配られた景品(ボックスティッシュと男鹿市指定ゴミ袋)を手に踊り続ける人、景品を受け取るとともに踊りの輪から離れる人、景品を持ちながら踊りの輪には加わっているものの歩いているだけの人など様々だ。
どうやらお囃子だけが続けられて、踊り手は参加するもよし、そのまま帰るのもよしというスタイルのようだ。
踊りの始まった時の様子といい、終わりの様子といい、曲の開始とともに踊りが始まり、曲が終わると同時に踊りも終わるという至極当たり前の光景しか見てこなかった管理人にとってはちょっと衝撃的だ。
因みに管理人も景品をいただいた。
男鹿市指定ゴミ袋‥せっかくいただいたものにこういう言い方はアレですが、秋田市では使えないのが残念です。

8時半となり、これにて盆踊りの終了
踊り手の皆さん、囃子方の皆さん、本当におつかれさまでした!
ステキな仮装と踊りを披露したご婦人方
毎年、衣装を変えて参加されているらしい。
来年も趣向を凝らした衣装をご披露してくださいね~

参加者は会場となった脇本浦田公民館を足早にあとにし、櫓もすぐさま解体される。
管理人もダダダコ初体験に一人興奮しながら、男鹿をあとにしたのだった。

まさしく興奮の一夜だった。
男鹿の盆踊りということで、演歌混じり(演歌イコール日本海ということで)のお囃子に、ナマハゲの風味が混じったような盆踊り(どんな盆踊りだ!)を勝手に想像していたのだが、実態は全く違った。
唄も笛も鉦も入らないシンプルかつ強烈なリズムを奏でる太鼓に乗せて、マティスの絵画「ダンス」を思わせる(ちょっと大げさですけど‥)プリミティブな舞踊が繰り広げられる、血湧き肉踊る盆踊りだった。
これほどまでに、気持ちを昂ぶらせる盆踊りを今の今まで知らなかったとは‥
やはり秋田の行事は奥が深い。
それにしても、この規模の盆踊りでこれほどに興奮させられるということは、男鹿中の集落が集まって大盆踊り大会が開催された日には興奮度が100倍、いや1000倍ぐらいには達するであろう。
雄山閣 山本会長の「秋田四大盆踊り」構想を伺ったときには、ちょっと荒唐無稽な気がしたが、ダダダコの素晴らしさを知った今となっては、それも可能ではないかと思えるようになってきた。
今は閑散とした男鹿駅前通りにダダダコの疾風のごときビートが大音量で炸裂し、大勢の踊り手たちが野放図に踊りまくる日を心待ちにしたい。


4 Replies to “男鹿の盆踊り”

  1. ダダダコ、初めて拝見しましたがいいですねー!!
    始まりや終わり方、太鼓の打ち方が一日市に似ていますね。
    機会があれば行ってみたいです♪

    1. ふじけんさん
      コメントありがとうございます!
      ダダダコ。エネルギッシュで素晴らしかったです。
      一日市の太鼓を倍速にして、賑やかさを激しさに変えたようなアゲアゲな盆踊りでした。
      来年はふじけんさんの盆踊りラインアップへの追加をご検討くださいませ!

  2. ダダダコ❗️最高❣️、、、シンプルで有り、スピードが有り、尚且つ楽しそうだ。
    これは、ご先祖様も喜びますね〜‼️

    1. 隣人1号さん
      いつもありがとうございます!
      ダダダコはとてもエキサイティングな盆踊りでした。
      あれほど個性的で素晴らしい盆踊りが県内でほとんど知られていないとは‥勿体無いかぎりです!
      ただ、この先ダダダコを観光資源の一つとして、男鹿市が力を入れていくとの未確認情報もあります。
      あの強烈な盆踊りがたくさんの人数によって踊られる様を想像しただけでも、鳥肌モノです。
      西馬音内もうかうかしていられない!?

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